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増田信夫の油外放浪記  SSは個人向けオートリースのトップチャネルへ(後編)

「SSはこうあるべき」と共感できるSSを見学

最近あるSS経営者の店を見学させていただく機会を得、非常に感銘を受けたのでご紹介します。

A社長は地方都市でプライベートブランドのセルフSSを経営されています。
広く明るい店で、燃料油販売量は400kl。SSの隣には整備工場があります。リフト5基、オイル交換専用のドライブスルーピット3基を有し、6名のメカニックと2名のフロントスタッフが配置されている大型指定工場です。

そのビジネスモデルは次のとおりです。

①給油客をメンテナンス会員ヘ
入会金500円のメンテナンス会員制度をつくり、給油客に声かけをして販売しています。入会するとオイル交換が1回無料、ガソリンは3円引き/Lといった特典があります。
販売するのは派遣スタッフです(女性1人)。何年も継続してきたので、すでに会員3000人以上を囲い込んでいます。

②会員を整備工場に誘導
会員は無料のオイル交換券を持って、整備工場に来店します。にこやかに接客され、ドリンクサービスを受け、ガラス越しに作業を眺めることができます。整備士はオイル交換しながら点検し、その結果を報告します。こうしてお客様と信頼関係をつくります。

③継続来店と付加価値販売
次回からオイル交換は有料となりますが、月間500台が入庫しています。
その結果、整備や鈑金を受注することになります。点検結果と整備履歴をお客様に示すだけで、「押し売り」感は一切ありません。

④そして車検入庫へ
まるで「ホームドクターによる定期検診」です。その延長線上で「人間ドック」すなわち車検が年間1,500台入庫しています。
整備工場では、月間1,000万円の付加価値を獲得しているそうですが、その源泉は、毎日の地道な「入会のおすすめ」に他なりません。あたかも水が高きから低きに流れるように、ごく自然に生涯顧客化が具現化しています。
新規集客にかかるコスト負担(販促費や人件費)をかけなくても、お客様が自然に循環します。したがって損益分岐点は低く、高い収益性が得られます。



個人向けオートリースは金鉱脈

さて、このA社長ですが、初めてお会いしたのは昨年です。
当社が「個人向けオートリース」を取り扱い始め、少し手応えを感じ始めた頃のことで、知人を介して「教えてほしい」と訪ねて来られました。

当社としてもまだ開発途上の状態でしたが、当時知る限りの情報を披露させていただきました。あれから1年が経ち、A社長はしみじみとこうおっしゃいます。

「増田さん、とうとう金鉱脈を掘り当てました」と。

1年前に私の話を聞いたA社長はさっそく独力で実践し、今では月間3~5台の個人リース車両を成約しているそうです。「本当に、ちゃんとお客様が反応してくれますね」「本当に1台当たり30万円以上儲かりますね」「中古車を売るより全然簡単ですね」「本当に在庫負担もクレームもないですね」と心底驚いておられました。

さらに「これ、クルマ屋さんではできませんね。SSも真面目に取り組むところは一部だけだと思います。いくら増田さんが提唱しても、誰も本気で信じて発掘しようとしないでしょう。ですから、当分の間、この町の金鉱脈は、ウチが独り占めですよ」。

さすが長年にわたり現場の第一線で陣頭指揮を執ってこられたA社長です。このビジネスの「カンどころ」をズバリ言い当てました。


車屋さんが個人リースに無関心な理由

「個人向けオートリース」ビジネスはいたってシンプルです。
商品は新車ですから、ブランド力のあるメーカーが品質保証してくれます。お店の知名度や信用度は、ほとんど関係ありません。

ではなぜ、カーディーラーは個人オートリースを取り扱わないのでしょう。

グラフ1は、国内で販売される新車の支払い方法の現状です。

リースはわずか3%。「お客様が望んでもいないリースをあえてすすめる必然性がない」というのが、自動車販売業界の一致した「常識」です。

要は、現金とローンで「間に合っている」のです。「常識」が覆るのは大変なことですから、まだしばらくの間、彼らはリースに見向きもしないでしょう。

では、中古車販売業はどうでしょう。車を「展示して売る」のが彼らの常識です。「いかに在庫を回転させるか」。つまり「販売台数」こそが彼らの価値基準です。在庫を買いに来たお客様には在庫を売るのが自然で簡単です。

グラフ2は、当社の平塚店と所沢店の車販台数の内訳です。
両店ともに燃料油販売量が200kl弱の郊外型SSです。同時期にオートリースの取り扱いを始めました。

異なるのは、平塚店はなまじ5,000万円を投じて60台もの中古車展示場を持ってしまったことです。車販担当者は、所沢店は1人(店長兼任)、平塚店は3人の専任者を配置しています。

平塚店は、日々在庫を販売することに心血を注いでいることが分かります。販売台数は所沢店の3倍。チラシを撒き、主に土・日に集客して売り捌いています。彼らにとって「新車をリースで乗りたい」と言ってくるお客様は「しち面倒臭いお客様」なのです。

対して、所沢店は「現車」という逃げ場がありません。新車リースを来店客に丁寧に説明し、「金鉱脈」を掘り出す努力をしています。

粗利はどうでしょう。
中古車は車1台当たり10万円くらい、新車リースは30万円です。したがって、両店の収益はほとんど変わらないのです。ということは、1人当たり生産性は所沢店の方が3倍高いことになります。

SSは「個人向けオートリース」の覇者となれるか?

というわけで、既存の自動車販売業界は「個人向けオートリース」という金鉱脈(ブルーオーシャン)に無頓着です。

では、私たちSS業界はどうでしょう。
前回述べたとおり、市場には28%もの潜在需要があり、これを本気で掘り起こせば、月間600万円の収益が得られる唯一の業態がSSです。

数年前から一部の元売会社が支援を始めています。それにもかかわらず、まだ本気で「金鉱脈だ」と実感し行動している事業者は、ほとんどいないように感じます。

なぜなのか、私なりに考えてみました。

①途中であきらめる体質
たとえばキャンペーンをやれば、ガソリンもタイヤも車検も、瞬間的に売れます。
中古車販売も、前述の平塚SSなどは、折り込み広告を撒けば、必ず一定数のお客様が来店し、契約してくれます。

しかし個人向けオートリースは即効性がありません。この事に気づくまで、私も1年以上かかりました。チラシを折り込んでもすぐには結果が出ず、ポスティングを追加したり、タウン誌や地下鉄に広告を出したり、果ては映画館や区役所に動画CMを流すなど、やれることは全部やりました。

前回述べたように「個人オートリース」を知っているお客様は、ほとんどいません。
店頭で一人ひとりにきちんと説明しても、車を買い替えるタイミングは平均8年に1回です。販促費はかさむ一方です。社内からも疑問の声があがります。そんな「産みの苦しみ」が1年近く続きました。通常はあきらめてしまうところです。

しかし、勝負はここから。繰り返し販売促進し続けるうち、徐々に反応が現れます。チラシを見た、看板を見た、ホームページを見た、あるいは車検やオイル交換の時、レンタカーを貸し出す時、お客様が問い合わせてくれるのです。

そうなるとしめたもの。俄然として、店は活気づきます。
やれ「今日は何台売れた」「明日は来店アポイントが何件入ってる?」「今月あと何台くらい売れそう?」といった会話が飛び交い始めます。あたかも湿った薪に火をつけるようなもの。着火するまで苦労しますが、一旦火を起こしてしまえば、薪をくべる限り、いつまでも燃え続けます。

なぜあきらめてしまうのでしょう。
もしかすると、その根底に「やっぱりSSではだめだ」という経営者の自虐性を感じます。カーディーラーに対する「位負け」「SSが新車を扱うなんておこがましい」といった自らを卑下する意識です。
これはSS業界にとっても、そこで働くスタッフたちにとっても絶対によくありません。

②売り方が確立していない
当社は、個人向けオートリースについて試行錯誤を繰り返す過程で、あらゆるリース会社に相談し、いくつかのリース会社の代理店となりました。

そのうちの一つ、B社は個人向けオートリースを長年リードし、その傘下に800店以上の代理店を有する最大手ブランドの一角です。

当社はまだ2年に満たない新参者ですが、何と全国第4位の成績だということで、先般、B社から表彰されました。
最優秀賞のC社は、3カ所の店で年間720台を契約しているといいます。1店当たり月間平均20台。当社が今目指している目標ラインです。

B社ブランド全体では年間10,233台。前年比156%と大きく伸ばしています。が、1店当たりを計算すると年間12台。何のことはありません。月間平均1台ですから、店の収益に資するレベルに達している代理店はほんの一握りだということです。

B社は「来年の目標は1,000店舗だ」と鼻息荒く言います。「売り方も教えて欲しい」と尋ねると「それは『あえて』教えないんです。代理店の方と一緒に考えるのが我が社の方針ですから」とのこと。ズッコケました。

つまりB社は「個人向けオートリース」という金融商品は提供してくれますが、マーケティングや販売ノウハウの開発は、つまるところお店任せなのです。私はこれまで、リース会社のみならず、いろいろ専門家と称する人たちに教えを請い、「売れている」という車屋さんの噂を耳にしては直接話を聞きに行きました。

その結果、「どこも売り方を確立していない」という結論に達しました。
ブームに煽られ、今後も個人向けオートリースの取扱店は増加するでしょう。しかしその果実を手にできるのは、しばらくは、カンの良い一部の事業者だけだと思います。

SSがオートリースの覇者に

SS業界でも、いくつかの元売会社がリース会社と組んで商品化しつつあります。
最初は販売手順がありませんから、半ば、この新たな商材を押しつけられた格好の系列店の幹部の方はいい迷惑でしょう。「皆目見当がつきません。どうしたらいいでしょう」と当社に相談がくるほどです。

しかしトップを走るコスモ石油マーケティングさんは、熱心に販売手順をリファインし続けていると聞きます。
自動車販売業界と比べ、私たちSSには高頻度の顧客接点という圧倒的な「強み」があります。しかも「オートリースはダメだ」という先入観がありませんし、長年染み付いた意識を変革する必要もありません。

そして販売ノウハウは、いたるところに転がっています。
これらを集大成すれば、 SSが主導権を握れる日は間違いなく来ると思います。


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