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増田信夫の油外放浪記  コールセンターは販売拠点

さよならガソリンスタンド

先日発売された「週刊ダイヤモンド」誌を開いて仰天しました。
「さよならガソリンスタンド」という、ショッキングなタイトルが目に飛び込んできたからです。この特集記事のサブタイトルには「2030年半減の衝撃」とあり、計8ページで構成されていました。

びっくりして一読しましたが、率直な感想は「なーんだ」というものでした。われわれ業界人なら誰でも知っていることを、ことさら興味本位で煽る記事に過ぎません。
少子高齢化の進展、低燃費車の普及、これによるガソリン需要の減少、フルとセルフの違い、地下タンク問題、エネ庁、石油組合、元売会社の思惑ーなどなど。
「何を今さら」と思います。素人受けはするでしょう。経済誌の商売としては、これでよいのかもしれません。

でも、われわれ当事者にとっては「だから何?」と言い返したくなるような内容です。
こうした状況をとっくに理解したうえで、私たちは、何年も前から危機感を抱き、生き残りをかけ、日々どうすればいいかと悩み、情報を集め、行動と検証(試行錯誤)を繰り返しているのです。

残念ながら、この特集記事には目新しいヒントや提言は一つもありませんでした。
このような扇情的な記事は、業界イメージを悪くさせ、求職者を減らし、新規投資に対して銀行が後ろ向きになるだけです。傷口に塩を擦り込むような所業に憤りすら感じます。
八つ当たりしても始まりません。気を取り直して、今日もわがSSを「PDCA」します。

3月もまた、ガソリンに助けられた

表1は、当社SSの3月実績です(5店合計)。

     
例年3月は車検の書き入れ時で、油外収益が跳ね上がります。
今年の油外収益は9,000万円、営業利益は3,300万円となりました。
営業利益は前年同月比107%の増加です。ただし、今回も「ガソリン市況バブル」で稼いだにすぎません。
車検台数は前年比96%、油外粗利は同98%と頭打ちです。
燃料油販売量は微減しているものの、燃料口銭が4円/L以上、改善しました。ありがたいことですが、当社の努力とは関係ありません。


ドラレコが車検を救うか

さて、今年も1~3月の3カ月間、当社は全店を挙げて、車検キャンペーンを展開しました。
油外収益を頭打ち状態にしている張本人が車検ですから、今年はカンフル剤として「ドラレコ」(ドライブレコーダー)をキャンペーンプレゼントの目玉商品としました。

ドラレコの普及率は15%ほどだそうですが、昨年の東名高速道路でのあおり運転による死亡事故を契機に、一時期、流通在庫が品薄になるほど、ドラレコへの社会的な関心が高まりました。
その最中、今年1月のことですが、ある商社から「格安で仕切りますよ」と提案を受けました。これならば、「景表法」にも抵触しない。大急ぎで実機をテストし、品質・機能ともに問題ないと判断したうえで、2月から、車検のベタ付け景品(オイル交換やグルメなどから好きなものを選べる)の一つとして、追加した次第です。

チラシや店頭POPは、「目玉景品ドラレコ、ドーン!」といった感じのデザインに差し替えました。 この目玉景品を用意したことにより、さぞや当店にお客様が殺到するかと思いきや、結果は表2のとおり。


かろうじて目標をクリアしたものの、前年実績を128台下回ってしまいました。
実はマーケットデータ上では、今年上半期に車検需要が低迷すると分かっていました。ですから、目標値も前年実績より下げたわけですが、いざ数字がまとまってみるとがっかりです。需要そのものが落ち込んでいる時期に頑張っても、やっぱりだめだったか、という感じです。

6種類の景品の中からドラレコを選んだお客様は(聞き方にもよりますが)、約半数に上りました。ドラレコ人気はまだ廃れていないと感じます。しかし、他社の顧客をどんどん奪い取るほどのパワーはなかったということでしょう。

ただしドラレコには、もう一つの狙いがありました。
ドラレコをプレゼントすると、ほぼ全員が「取り付けてほしい」と言ってくれたのです。
取付工賃は有料ですから、車検の客単価が上がりました(グラフ1)

電源をシガーソケットに取り付ける場合は5,000円、裏から配線する場合は8,000円ほどいただきます。多くが後者を選んでくれました。さらに3割の方からは「リアカメラも付けてほしい」という、ご要望をいただきました。
これによって車検1台当たり平均2,000円の収益が生まれ、ドラレコの仕入れ値(景品コスト)を大きく上回ったのです。

電話が対面販売を上回る

ドラレコ絡みで、もう一つ新たな発見がありました。
その前にまず、当社の車検の流れを整理します。

❶まず車検を受注します(店頭もしくはコールセンターで)。
❷その後、一度ご来店いただき、車を点検をしてから、整備を受注します(事前点検)。
❸その後、再度ご来店いただき、整備、法定点検、継続検査を実施します。
この❶~❸の方法が最もたくさん整備を受注でき、客単価が上がるのです。

さて、前記❷のステップで事前点検した整備士は、整備を提案しながら「プレゼントはどれにしますか?」とお客様に尋ねます。
ドラレコを選んでいただくほど客単価が上がるわけですが、意識が高い整備士が聞くと6割のお客様がドラレコを選んでくれます。しかし、5%以下の整備士もいて、平均25%となりました。

そこで試しに、❶と❷の間の期間中に「コールセンター」(CC)からお客様に電話し、意向確認してみました。すると何と、47%が「ドラレコ」を選んでくれたのです(表3)

決して車に詳しいとは言えないパートタイマーのオペレーターが、電話で、ドラレコの現物も見せずに、1台当たり2,000円の客単価向上に寄与したという事実は驚きです。
改めて、CCの威力を思い知りました。

常識的に考えて、対面販売の方がはるかにパフォーマンスは高いでしょう。しかし、現場スタッフの意欲や販売スキルにバラツキが生じることは、昔から大きな悩みの種でした。
その一方で、CCの場合は、四六時中、管理者とオペレーターが同じ室内にいて、会話を録音したり管理指導ができるので、販売スキルの均質性を図りやすいというメリットがあります。

電話しても6割くらいしかつながらないデメリットはありますが、対面販売に比べると手数ははるかに多く、平均3~4人が毎日200~250人と会話をしています。
もしかすると、このCCが、油外収益の頭打ち状態から抜け出すための、切り札の一つとなるかもしれません。

コールセンターは電話番ではない

ところで現在、CC部門を構えるSS事業者は少ないでしょう。しかし今後、車検、鈑金、自動車販売へと業態革新を図るうえで、CCの設置は不可欠になると私は考えます。レンタカーはCCがなければ、まず間違いなく稼働しません。

これを内製化するかアウトソーシングするかはケースバイケースですが、私は、つい最近まで、CCは「電話番」だと思っていました。読者の多くもおそらく同じではないでしょうか。

当社がCCめいたものを最初に設けたのは1995年のこと。SSを初めて立ち上げ、車検のチラシを商圏に撒きました。その受注窓口が要るだろうと専用電話回線を引き、事務担当者に兼任させたのが始まりです。

その後、電話を受ける仕事(インバウンド)だけでは飽き足らず、車検後も定期的にアフターフォローの電話をしたい、2年経ったらリピート受注したいと思うようになりました。

果たして、「電話をかける仕事」(アウトバウンド)へと業務を広げてゆき、専任担当を配備したあたりから、様子がおかしくなってきました。
以前にも記しましたが、CCスタッフの一斉離反が起こったのです。これにより、ほぼ2年間の空白期間を生じます。

管理者を採用すれば、またCCは回るだろうと探し求めていたところ、ガツンと頭を殴られました。
「CCは『会社の顔』そのものであり、実店舗を凌ぎ得る販売拠点である。米国を中心にノウハウやシステムが確立されていて、素人が片手間で考えてできるものではありません」と幾人かから指摘されました。

知らないことは恐ろしいですね。
20年間も「当社はCCをやっています」と胸を張っていた自分が恥ずかしい。普通の管理職経験者では、たとえ「パートタイマーを100人束ねていました」と言われても、務まりません。幸い当社は、実績ある優秀なCC管理者を引き抜くことに成功しました。昨年3月のことです。

そして彼女の希望どおり、予算を割き、室内レイアウトを見直し(改装工事)、システムや環境を整えたところ、すごいですね、1年も経たず生産性は4倍、受注率は3倍になりました。
パートタイマーたちの士気の高さは、おそらく当社ナンバーワンの部門です。一昨年に始めた新車リースが目下好調ですが、その一翼をCCが担っていることは、当社内ではもう疑う者はいません。

店で売れないものはコールセンターで売ってみる

今私は、車検の客単価アップに、CCをもっと有効に使えないかと考えています。
年間8,000台が入庫するので、1,000円アップすれば800万円、2,000円アップすれば1,600万円の収益増になります。

ですが、お店が事前点検の折に提案できる商品は限られます。経験上、車1台当たり車検粗利は3.5~4万円が限界です。
ところが点検しなくても、たとえば保険、鈑金、車の買い替えや買取などは、電話で情報提供したり提案できます。すでに車検をご予約いただいているお客様ですから、電話が拒否されることも少ないでしょう。

電話で伝わりにくい情報は、郵便、ネット、Eメールなどを併用すれば、対面販売のパフォーマンスに肉薄できるかもしれません。少なくとも「お店できちんと説明を聞きたい」と思わせるきっかけづくりにはなるでしょう。

冒頭の話に戻ります。ガソリン需要が減れば来店数は減少します。ということは「お店」だけを販売拠点と考え、来店客だけを顧客と考えるなら、SSに未来はありません。

アマゾンや楽天と違って、SSの取扱商品は通信販売できないものが多いので、サービス拠点としての「お店」は今後も必要でしょう。
しかし販売に関しては、電話やネットヘと多岐にシフトしていく。すなわち販売拠点とサービス拠点を分けて考えるのが、今後の環境変化対応の一つと言えるかもしれません。




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