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2010.08.03

代表コラム

油外放浪記第22回「ムリをせず淡々と「儲かるSSづくり」を考える」

大前研一さんが見た「中古車レンタカー」

経済評論で著名な大前研一さんの番組で、ニコニコレンタカーが採り上げられていましたよ」と、人づてに聞きました。

さっそくその映像を拝見させてもらいました。2時間の番組中、約15分間のコーナーで、「もしも私がニコニコレンタカーの社長だったら」と大前さんの見解を述べる構成です(写真1)。

PR番組ではないので辛辣な論評もありますが、「5年以内にナンバーワンのレンタカーチェーンになる可能性がある。ぜひトップなってもらいたい」と言っていただき、大いに勇気づけられました。

大前さんの論旨はこうです。
現在のマーケット動向を分析すると、自動車は「所有」ではなく「利用」に意味を持つようになり、レンタカーがますます注目される。レンタカー事業の本質 は、「所有」する場合の固定費に対して、どれだけ限界利益の最大化に貢献できるかである。しかし、メーカー系レンタカー店は、新車販売を妨げるレンタカー ビジネスを積極的に行うことはない。独立系レンタカー店は駐車場や車両を大量に確保することで固定費を下げようとしている。

一方で、SS系の中古車レンタカー店は、車両、家賃、人件費など固定費そのものが 低いという、非常に有利な特徴を持っている。そこで、自動車を保有しながらほとんど使っていない人の、車両の有効活用を試みてはどうか。余っている車をタ ダ同然で借り上げ、保険や駐車場代を肩代わりし、レンタル収益をオーナーに還元するというビジネスモデルはどうだろう。

また、カーシェアリングとの提携によリシステムの強化(無人化)を図るのも面白い。
こうして年商10億円を超えて上場し、資金調達をし、システムなどをブラッシュアップすれば、一気に市場を席巻する。このような事業は、勝つのは一人。

だから先手必勝。先にコンセプトをつくって拡げた方が勝つ。
車を数千円でレンタルできることが分かれば、車を持つ人は少なくなる。だから、毎日の通勤は軽自動車で、たまに家族で出かけるときはレンタカー。この合理性に目覚めさせることができれば、チャンスはある。

――様々なご提案もいただきましたが、SSの新ビジネスが社会的に注目され、大きく期待していただいていることは嬉しい限りです。

「ほっとけ油外」3つの成功要因

さて、レンタカービジネスは、SSが取り扱う数多くの商品の中で、看板とインターネットだけで売れる希有な商材です。 
普通、SSで商品を売り収益を上げるためには、対象客を「見つける」、商品を提案して「口説く」、受注した作業を「こなす」という3つのステップを踏みます。

ところが「見つける」「口説く」という業務は、お客様からは何ら対価を頂けないにも関わらず、実に多くの人件費を投入しなければなりません。そのための教育、マネジメント、インセンティブなども含めると、かなりのコストとなります。

一方、レンタカーは「見つける」「口説く」ための時聞がゼロなのです。お客様の方 から「買いたい」と申し出てくれ、店頭スタッフは「こなす」。すなわち、貸渡・帰着の手続きや、洗車・点検作業に専念すればいいわけです。つまりお客様が 対価を払う作業の品質向上に、スタッフはもっと傾注できるわけです。

このような商品を私は「ほっとけ油外」と呼んでいます。
単品でL当たり10円以上稼げるような「ほっとけ油外」の開発は、私の悲願でもありました。

スーパー、コンビニ、飲食店など、小売りサービスのほとんどは「ほっとけ」だけで成り立っています。なぜSSだけが「見つける」「口説く」という高等な販売テクニックが要求されるのでしょうか?

こうした思いは古くからあり、1995年末に直営SSを立ち上げた当初は、「一切の声かけをしないSSづくりをしよう」と意気込みました。そこで、洗車も、オイルも、車検も、TBAも、他店に負けない商品力を具備し、店頭看板やチラシで目一杯告知しました。

その結果、初年度は月間平均L当たり10円以上の「ほっとけ」収益が上がるようになりました。しかし、翌年からは燃料口銭の急落とともに「ほっとけ」だけでは足りず、「声かけ販売」を余儀なくされてしまいました。

それでもなお懲りず、「ほっとけ」で売れる商品は必ずあるはずだと、結構思いつき で、いろいろなことをやってきました。「表1」は、当社SSが過去に「打ってきた「ほっとけ油外」の一覧です。Oは、うまくいったもの、×は失敗したもの です。シューズリペアとか宅急便の預かりとか旅行の端末機とか・・・。
過去15年間、ひたすら失敗を重ねてきたことになります。


商品

販売成果
商品特性
もの珍しさ話題性顕在ニーズ需要の大きさ近くに競合なし
車検9,800円
連洗/タッチレス洗車
世界のオイル大集合
オイル交換980円均一
TBA格安販売
シューズリペア
クロークサービス
トラべロー
フーセンショップ
タイヤ窒素充填
買取価格見積機「ウォンチュー」
タイヤ圧無線警報機
タイヤローテーション500円
LEDランプ
高速1000円時のETC特売
インフルエンザパニック時のマスク
潤滑添加剤「パワーミルク」
手のひら見積板金
廃車無料引取り
廃車高値買取
SSレンタカー
中古車リース

「ほっとけ」で売れるために重要なことは何か。長年「物珍しき」が重要だと考えていました。しかし今、改めてこれらの商品特性を見ると、「物珍しき」は関係なく、むしろ、①ニーズが顕在化していて、②需要が大きく、しかも、③近くに競合がないという、3つの共通項が重要のようです。 
この当たり前のことに、15年かけて″油外放浪″し、ようやく気づいた次第です。

最近うまくいっている「ほっとけ油外」に「廃車高価買取」「SSレンタカー」「中古車リース」があります。これは中古車を安価に調達し、スクラップになる まで運用益を得るという一連のビジネスです。ニーズがあり、需要は膨大にあり、SSにしかできないという強みがあります。

車の燃料は、他のものに代わったとしても、車がなくなることはありません。ですから、これらの新ビジネスは、次世代型SSづくりの大きなヒントになると思います。

潜在ニーズも「ほっとけ」で売れないか?

SSは生き残りをかけ、これまでいろいろと工夫し、ムリを重ねてきました。しかし、人員不足、資金不足の昨今、ムリが長続きしないのも実情です。

SSスタッフの努力とは別次元で収益源を確保したいという思いから、「ほつとけ油外」にこだわってきたわけですが、オイルやTBAといった商品は、いくら商品力を高め、販促費をかけても、「ほっとけ」で売れるのはたかが知れています。

その大きな理由は、ニーズが潜在しているからで、一般的にオープンボンネットなど点検しなければ顕在化しないからです。ただし、これを徹底し続けるのは、どうもムリがあるようです。

そこで私は、車検販売だけをマネジメントすることにしました。車検は2年に1回の義務であり、ニーズは顕在化しています。強くおすすめしても「押し売り」になりません。そして、車検実施時には必ず点検し、不具合箇所を明らかにすることができます。

多くのお客様も「車検のときに、悪いところは全部直したい」と思っています。ですから、車検を獲れば、オイル、TBAといった潜在需要を、ごく自然に、大量に獲得することができます。

「グラフ1」は当社茅ヶ崎SS(セルフ)の今年1~3月の平均油外収益の構成です。

洗車機のないSSですが、約1,000万円の油外収益のうち、ほぼ半分を車検が占めます。しかし、そのうち、車検手数料は180万円、残り320万円はオイルTBAの収益です。

「ほっとけ」で売れたオイルTBAと合わせると、その収益は430万円となります。
さらにおまけがつきます。車検販売活動を徹底すると、自動的に車販ニーズが顕在化します。そして車を販売すれば、保険やローン手数料だけでなく、下取り車が手に入ります。これをレンタカーにしたり、リースカーにすれば、さらに「ほっとけ」収益が膨らみます。

このように車検を突破口にし、車検獲得台数と整備受注金額さえマネジメントすれば、そこから波及してかなりの油外収益が得られます。来店客に対するオープンボンネットの声かけを徹底し、そこから提案説得するより、はるかにムリがないでしょう。

買ってくれるお客様だけに「御用聞き」

今、もう1つ「ムリのない販売方法」を試しているところです。
SSのお客様は、2通りあります。油外商品を買ってくれるお客様と、買わないお客様です。

「買わないお客様」は、不具合箇所を指摘してニーズを顕在化しても、他店で買います。しかし、「買ってくれるお客様=VIP」なら、不具合を指摘した当日買ってくれなかったとしても、後日、お金と時間を用意して買いに来てくれます(グラフ2)。

当社SSの実績を集計してみると、3割のVIPが、何と9割の油外収益に貢献してくれていました。そこでVIPだけ、定期的に「御用聞き」をしてみようという訳です。
実は、フルサービス時代にはVIPに点検カルテを発行し、給油時にこれを見ながら「御用聞き」をしていました。その結果、月間400~500万円ものオイ ルTBA収益を得ていました。VIPに定期的な「御用聞き」をすれば、しっかり結果が出ることは分かっているのです。

最もこの方法は、やはり「ムリがある」ために長続きしません。さらに決定的なことは、セルフSSではできないオペレーションなのです。
ところが、このほど、車番認識技術を応用した販売支援システムを大幅に改良することによって、これが簡単に解決できるようになりました。

油外を買ってくれたお客様(VIP) には、その油外商品に応じた「調子伺い兼クーポン券」を自動発行したり、3ヵ月ごとにウインドウォッシャー液などの補充やタイヤ空気圧点検などのサービス 券が自動発行されます。店頭スタッフは、これを渡します。そしてお客様が希望するサービスを実施して差し上げます。

SSのスタッフはお客様の顔色に敏感です。ですから、声かけして断られるよりも、喜んでもらえるご奉仕を一生懸命やります。
すると、お客様との「心の距離」が縮まります。「このSSで買ってよかった」という良好な心理関係ができます。

そこでスタッフが、「何か気になるところはありませんか?」と尋ねると、いろいろ言ってくれます。まだ実験段階ですが、そこから商品購入に至るケースがよくあるようです。
もちろんサイクル商品の交換時期には、車両に応じた商品の見積書が自動発行されます。店頭スタッフがこれを渡すだけで、VIPは後日買いに来てくれるでしょう。 
こうして潜在ニーズが「ほっとけ油外」として顕在化し、ムリのない販売につながるわけです。

今回は、SSスタッフにもお客様にもストレスの少ない、ムリのない販売方法について、今実践していることを述べました。油外収益で競争力を高めようとされるSS経営者の皆様に参考になれば幸いです。

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