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2021.05.07
油外放浪記第151回 当社の3月車検需要期を振り返る
新規店がいきなり黒字
当社は1月に直営第7号店「小田原東IC店」を、続く2月に第8号店「新百合ヶ丘店」をオープンしました。
ともに「半年以内に黒字化せよ」と厳命しての船出です。
損益分岐点を低く抑えるため、小田原東IC店はオープンイベントを不実施とし、新百合ヶ丘店は控え目に実施しました。
小田原東IC店は小規模店です。休業せずに運営を引き継ぎました。運営コストは低く抑えられ、月額740万円。3月の車検需要をうまく捉えれば、黒字に手が届くと期待していたところ、果たして、29万円の営業利益を出してくれました(表1)。
新百合ヶ丘店の運営コストは1,540万円。閉鎖中のSSを引き継いだので、オープンしてもお客様がなかなか戻って来てくれません。同時給油8台の設備にもかかわらず、3月の燃料油販売量はやっと100klに手が届いたばかり。
それでも、いきなり黒字化しました。
油外粗利は車検500万円、車販300万円、レンタカー400万円。他に、鈑金塗装などが加わり、合計1,450万円となりました。
オープン翌月でこれほど油外が売れたのは、ほとんどWEBのおかげです。
これまで当社は、ガソリンで集客し、車番認識システムでお客様ニーズのサイクルをつかみ、標準化された手順で声かけをし提案し、受注するという流れを金科玉条としてきました。
そのためには「仕込み」に一定期間を要します。すなわち来店客数を増やし会員化する、ニーズ(少なくとも車検時期)を掴む、その過程でスタッフを訓練するーそれが完全に無視された形です。
車検需要期とはいえ、超短期間での黒字化。もしも「仕込み」が完了すれば・・・と考えると、末恐ろしい「末っ子」です。
燃料油収益が半減するも営業利益ギネスを更新
3月の営業利益は6店合計で4,850万円。前年比350万円増益しました。例年3月は、車検のおかげで通期ギネスを記録してきましたが、今年も見事更新できました。
前年と比較すると、燃料油が販売量・口銭ともに減少し約1,000万円を喪失。しかし、車検入庫が377台増、車販が69台増、レンタカーはほぼ前年並みに回復。油外粗利の2,400万円増加が、燃料油マージンの激減を補ってくれました。
一方で、人件費が480万円増えました。労働投入時間は前年比2,000時間増えました(表2)。
油外作業は、ガソリンのように「自動販売機」では提供できません。人手がかかります。しかもプロ品質のサービスにお客様は対価を支払ってくれますから、油外増収のためには、熟練スタッフの労働時間を増やすことが不可欠です。
かといって、残業を強いるのは望ましくありません。新人を雇用し、熟練スタッフに育成するため訓練することになります。
昨年末から年初にかけ、社員を15名採用しました。初期訓練を経て、6名を新規2店に、9名を既存6店に配属しました。
増員以上の結果が出たことを嬉しく思います。人件費の3.3倍の油外粗利(人件費効率)を稼ぎ、油外商品の生産性(人時油外粗利)は6,900円/Hにまで改善しました。
一人当たり労働時間は208時間から183時間へ大きく減少。昨年は、残業80時間以上の社員が続出しましたが、今年はついに残業ゼロとなりました。
今も昔も、車検が油外を牽引
平均的なSSに比べて人時生産性が7,600万円台と高いのは、車検、車販、レンタカーといった生産性の高い商品に重点化しているためです。
特に車検需要の高い3月は、その獲得に向けて年初からキャンペーンを実施してきました。おかげで既存6店で入庫1,608台、粗利5,970万円を得ることができました(表3)。
これが油外粗利全体を大きく押し上げ1.4億円。当社始まって以来のギネス記録です。
平塚店、所沢店は認証工場であるにもかかわらず、200台以上の入庫がありました。陸運支局検査場との間を200回以上往復したわけで、苦労したと思います。
また台数が増えても、今期は台当たり粗利が下がりませんでした。担当スタッフの投入時間に余裕が生まれたことで、お客様一人ひとりと真摯に向き合い、必要な整備をきちんと提案できた結果です。
1995年に道路運送車両法が改正され、SS業界で車検が解禁されました。
それ以来、車検は当社SSの収益貢献度ナンバーワンであり続けてきました。昨年度の当社SSの年間収益は13.7億円、うち車検収益は4億円。実に3割を占めます(グラフ1)。
車検実績はこの10年間で3倍増。今年度は1万6,000台に達する見通しです(グラフ2)。
店舗数が増えたのは、その一因にすぎません。1店当たり入庫台数も10年間で倍増しています。やはり、ユーザーの価値観が変化したことが大きいでしょう。
一昔前、マイカーはステータスシンボルであり資産でした。しかし10年を経て、車の購入先も 支払い方法も多様化してきました。顧客と車、あるいは顧客と販売店や整備工場との関係性が非常に柔軟になってきたと感じます。
私もにわかに信じられませんでしたが、中古車を現車も見ずに、ネットで購入する(ポチる)お客様が、無視できないほど増えています。
そして、新しい価値観を持ったお客様は、SSが発信する広告物に反応しやすくなりました。
グラフ3は、1月に当社SSで車検をしていただいた1,161件のお客様が、何に反応して注文してくれたか示したものです。
SS業界が昔から行ってきたのは、店頭看板、給油来店客に対する声かけ、ダイレクトメール、 そして折込広告です。これらの方法論は現在も有効です。しかし、有効性が同等レベルヘと台頭してきているのが、インターネットやミラーリングです。
つまり、インターネットやミラーリング販促を行っていなければ、車検台数は現在の3分の1しか得られなかったかもしれません。
ミラーリングで
月間300件以上の車検入庫
SSの商圏内に、たくさんの車があります。その車検ステッカーを見て、ピンポイントで告知する販促手段がミラーリングです。
20年前は、多くの車検業者が市中の車のワイパーやドアミラーに告知物を挟み込んでいましたが、今は、ほとんど見られません。このミラーリングは、違法行為ではありません。
これにより、車検を注文してくださるお客様は毎月たくさんいて、費用対効果も高いので、当社は継続して実施しています。
しかも新型コロナの影響があるからでしょうか、ミラーリング業務を受託してくださるスタッフの人数が増えており、告知件数も増加してきました。
これまで当社は、ミラーリングスタッフの採用、教育、管理は各店に任せていました。しかし昨年11月、本社内にミラーリングセンターを創設し、直営店のミラーリング活動を徹底支援する専従スタッフ3名を配置しました。
以来、各店のミラーリング拡充に努めていますが、1月のミラーリングによる車検入庫374台は、前年同月比151%の伸びです。
新規店の立ち上げもあるので、20名だったミラーリング委託スタッフ数を、3月までに51名に増やしました。告知数を倍増させれば、受注数も倍増するでしょう。実に単純明快です。
整備士の数と質の向上が不可欠
毎年3月は、車検の入庫台数が平常月の1.6倍以上となりますので、作業キャパシティが気になる時期です。
作業キャパシティは、リフト数、駐車場台数、整備士の数と質によって制限されます。かつては、整備士たちに時間外勤務を強い、不眠不休で頑張ってもらい、それでも足りなくて注文をお断りしたこともありました。
今は、積極的に整備士を採用しています。
とは言え、整備士の確保はなかなか困難です。業界的に不足しているのでしょう。そこで当社は、募集広告の量や頻度を増やすことで対処しています。つまり、募集費用を惜しまず年中採用活動を実施しています。
外国人の雇用も始めました。車と向き合う仕事なので、日常会話ができれば、問題ありません。さて、採用した整備士はすべて中途入社です。同じ2級整備士でも、前職は様々で、個々のスキルに大きくばらつきがあります。スキルがばらついたまま放置すると、チームワークが乱れます。
そのため、スキルの標準化、見える化に取り組んでいます。
表4は、当社の「車検センター」の整備士のスキル一覧表です。まず「車検センター」について説明します。
当社の仲町台店とセンター南店は、受注した車検を一手にこなすハブ工場「車検センター」を共有します。仲町台店の向かいにあります。
当社の車検作業の手順は、やや一般的ではありません。まずSSスタッフは店頭で、コールセンターは電話やメールで車検を受注します。次に、SSにご来店していただき、車を点検して必要な整備を提案し、受注します。そして、日を改めて車を預かり、これを車検センターに運びます。
車検センターは、SSが受注した整備を実施し、法定点検、検査を実施してSSに戻すわけです。車検と整備を別々に受注するのが特徴です。
きわめて車検を受注しやすく、整備もしっかり受注できます。そして車検センターは、お客様の顔色をうかがうことなく、ひたすら作業に専念します。
そこには7名の整備士が配備されており、1人当たり平均処理台数は、2月は63台、3月は99台。この作業の「正確さ」と「処理速度」を工場長が客観評価しました。
表4で、G君は昨年末に入社した新人です。3カ月が経ち、いくつかの業務を標準時間内で正しくこなせるようになりました。このように「見える化」したことによって、G君は、「早くA君レベルに追いつきたい」とモチベーションが高まったそうです。
そのA君は、車検センターのエースです。実は、彼だけが中途入社ではありません。26年前に仲町台店が第1号店としてオープンした時に、学生アルバイトとして採用し、その後、社員となり働きながら整備士資格をとり、今に至ります。
D君はベトナム人。間違いなく当社の戦力の1人です。4月にはもう一人、ベトナム人整備士が増える予定で、心強い先輩となってくれることを期待します。