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2021.06.03
油外放浪記第152回 億単位の新商材が見つかった!
燃料油も油外もコロナ以前に戻った
昨年4月の第一次緊急事態宣言によって、SS業界が大きく影響を受けたのは、燃料油とレンタカーでした。
「ステイホーム」が声高に叫ばれ、当社の直営店は燃料油が減販、レンタカーも予約キャンセルが相次ぎました。しかし、燃料油マージンが暴騰してくれたおかげで、営業利益は月間ギネスを更新することができました。
今年4月は、横浜市は「まん延防止措置」を講じましたが、当社直営店の営業利益は、前年並みの1,550万円でした(表1/既存6店合計)。
しかし、その中身は大きく変化しています。
燃料油販売量は前年比340kl増販したものの、マージンが半分以下に減少。したがって、燃料油粗利は900万円マイナスとなりました。
油外は2,400万円増収しました。そのために増加した経費は1,500万円。投入コストの1.6倍を稼いでくれたことになります。
レンタカーもコロナ以前を上回った
油外商品の伸びの筆頭は、レンタカーです。燃料油のマイナスをそっくり穴埋めし、 昨年の「借り」を返してくれた格好です。
コロナ禍以前の一昨年4月のレンタカー粗利は2,400万円でした。今年4月は2,500万円です。「完全復活」と言っていいでしょう。
これは当社のSSだけでなく、全国的な傾向です。
グラフ1は、レンタカー利用件数の前年同月比の推移です。
レンタカー業界は緊急事態宣言の影響を激しく受けました。前年比最大▲70%台にまで落ち込み、緊急事態宣言のたび、今も激しく変動しています。
一方で、ニコニコレンタカーは、昨年4月に▲30%台に落ち込んだものの、6月に復調、その後は極めて緩やかな影響しか受けていません。
これがSSレンタカーの強みです。
地域密着型ビジネスですので、旅行観光や法人需要ではなく、足元商圏がメインターゲットとなります。そして、レンタカーの生活圏需要は、コロナの影響をほとんど受けませんでした。
というよりむしろ、利用件数の変動は、供給台数の変動分と言っていいかもしれません。緊急事態宣言にビビってしまい、慌ててレンタカー保有台数を減らしてしまったのは当社だけではありません。ニコニコレンタカー全体(約1,500店)で、昨年はレンタカー台数が約10%減少しました。これが少なからず機会損失を招いたと考えています。
行政やマスコミの報道を見るにつけ、まだまだコロナ禍を楽観視することはできません。しかし何よりも、ユーザーニーズの動きを見定めることが重要だと改めて思い知りました。
新規2店は両極端
当社は今春、新しく2店を運営継承しました。
同時期にオープンした兄弟SSですが、性格も体格も正反対(表2)。
当然、親の期待も違ってきます。
「新百合ヶ丘店」は年間2億円の営業利益を稼ぐ当社のトップランナーSSとなることを期待しています。
対して「小田原東IC店」は、赤字さえ出さなければいい、多くの利益を期待しないけれども、 SSスタッフに活躍の場を与え、キャリアパスの一つになってくれることが期待値です。
3月は車検需要に支えられ、 両店ともに黒字を計上しました。
4月は両店仲良く赤字です。赤字幅も想定内に収まり、ホッとしています。
予想外に苦戦しているのが、新百合ヶ丘店の燃料油販売量です。
前面道路は、津久井道という幹線道路(東京の世田谷通につながる同一路線)で、通行量は申し分ありません。同一車線側の手前10kmに競合が1店もない、レアな立地条件です。
間口は75m、全面開放、ゲート式レイアウトの同時8台給油、容易に入退できる店です。
価格を市況に合わせれば、たちまち販売量は月間500klを超えるだろうと思っていました。あにはからんや、いまだ120kl。
かつてはSS業界のマーケティング実務の一翼を担ってきたと自負する私ですが、アタマをひねるばかりの事態です。
逆に、小田原東IC店の燃料油販売量は大きく期待を上回っています。初年度は月間100kl売れればいいと思っていましたが、3月実績は180kl、4月は150kl。
こちらは理由がはっきりしています。直近の大型量販SSが改装工事で閉鎖していました。その改装工事も4月末に完了したので、5月以降は3割減に落ち着くでしょう。
既存店の車検実績を新規店が上回る
3月が過ぎても、新規店の車検が好調です。
表3は、3~4月の車検実績です。両店とも計画値を大きく上回りました。
SS車検ビジネスの実力を測る指標として「kl当たり車検台数」というものがあります。世の中の平均的なSSの実力値は0.08台/klくらいだと聞きます。
車検を10年もやると、リピーター(2年前に当店で車検を注文していただいたお客様)が積み上がり、0.1~0.2台/klくらいになります。
当社は商品力を強化したり、店頭アプローチの標準手順を徹底してきました。さらに、インターネット広告やエリアマーケティング、コールセンターの設置、また整備士や工場の拡充などを投資してきましたので、0.7台/klを獲得できるようになりました。
しかるに、新規店の実績をご覧ください。リピーターがゼロにもかかわらず、小田原東IC店は0.44台/klと、早くも車検量販店並みです。
もっと凄いのは、新百合ヶ丘店。既存店をあっさり凌駕する0.99台/klです。
辻褄が合いません。
「給油のお客様より多い」と店長は冗談まじりに言いますが、オープン直後からセールスルームが車検客で埋まる状況が頻繁に生じているのは確かです。
車検受注の7割がミラーリング
その謎が解けました。
昨年末、本社内に「ミラーリングセンター」を設けたことを、前回述べました。
直営店のミラーリング販促活動を強化する、3名の専任チームです。
彼らは既存6店のミラーリング対象エリアや、委託スタッフの拡充に尽力していますが、同時に新規店のミラーリング活動を立ち上げました。
3月のミラーリング成果がまとまったので、「表4」に示します。
ミラーリングによる車検入庫は、小田原東IC店で54台、新百合ヶ丘店で78台ありました。つまりミラーリングが、小田原東IC店では7割、新百合ヶ丘店では6割の入庫に貢献してくれたわけです。
給油来店客が少ないので店頭販売数はまだ少ないですが、商圏販売数がこれを大きく優ったということです。
新規客と言えども、高品質で安価な車検を、対象客にピンポイントで告知すれば、店頭客・商圏客にかかわらず、即効果が出ることが浮き彫りになりました。
中古車の通信販売は成立するか?
当社SSは、コロナ禍で先走ってレンタカーを大量処分しましたが、これがきっかけとなり、 中古車販売が主力商品の一つに育ちました。
現在はAA(中古車オークション)から月間100~200台を仕入れ、架装し、Webにアップしてお客様からのアクセスを誘い、SSに来店していただいて現車を見せ、商談し、契約しています。
ところがミラーリングと異なり、Webは全国からアクセスがあります。せっかく当店の中古車にご興味をいただきながら、「店が遠い」と敬遠されてしまうケースが実に多いのが実情です。
ある時、担当者から提言を受けました。
「もったいないです。中古車もオンラインで取り扱わせてください」と。
実は、彼は本社勤務で、新車リースのオンライン契約担当のリーダーです。
新車リース専用のホームページがあります。そこからの問い合わせはコールセンターが受けます。コールセンターは、直営店エリア内のお客様はSSに送客しますが、エリア外のお客様は、彼のチームに送客します。
送客されたお客様に対して、電話やLINEで商談します。契約書類などは宅配便でやりとりをし、納車はカーディーラーに委託します。
こうしてSSと別に、本社で月間30~50台の新車リース契約を獲得しています。その延長線上で、彼は「中古車リースも通信販売してみたい」と言うのです。
私はこう答えました。
「前例がないことはやってみる。やってみてから判断する。それが当社の方針だから承認する。 やってみなさい」 「でもな、このプロジェクトは絶対に失敗すると思う。新車ならいざ知らず、中古車を見ずに買うお客様がどこにいる?たとえば、自分の嫁さんを君は、写真と釣書だけで選ぶか」
過去20年間、自動車販売を試行錯誤してきた私の、正直な見解です。
ところが、彼は馬耳東風。本社開発部門に働きかけ、SSの中古車在庫をリース車として紹介するホームページを立ち上げ、保証制度やロードサービスを付加し、納車を委託する業者と契約を結び、とうとう2月から取り扱いを始めてしまいました。その結果が「表5」です。
車をネットで買うことがスタンダードになってきている
フタを開けてびっくり。
立ち上げてから3カ月目の4月、リース契約数は20件を超えました。実に8割近い成約率。いまだわが目を疑いますが、これが現実。
ユーザーの価値観が大きく変わってきているのでしょう。理解しようとしますが、なかなか共感できません。
社長のメンツは丸潰れ。いや、そんなことはどうでもいい。新たな商材が見つかりました。
この調子でスタッフを熟練・増強し、インターネット販促を強化していけば、月間契約数50台以上は固い。年間契約600台を見込めます。
中古車リースは、メンテナンスなどもコミコミにできるので、平均粗利は25万円。年間粗利は 1.5億円を超えます。
…と思っていたら、担当者は「5年後は10億円」という事業計画を出してきました。
夢は大きい方が楽しいし、何よりこのような提案をしてくれるほど、部下が成長していることを嬉しく思いました。
「ゼロ・エミッション時代」が、すぐそこまで来ています。それまでにしっかりと利益を確保し、収益源をつくっておくことが、当社における私の役割。
そして「ダメモトでもよいから、 やってみる」ことの大切さを痛感しました。