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2021.12.14
油外放浪記第158回 車検はお客様に寄り添おう。脱炭素時代はレンタカーで勝ち抜こう。
SS商売も平常化へ
緊急事態宣言、まん延防止措置が9月末で全面解除されました。世の中が平常に戻りつつあるのを感じます。
当社SSの10月実績を(表1)に示します。
既存6店の油外粗利は合計1億1,200万円。10月の当社ギネス記録を更新しました。しかし、経費の伸びが油外の伸びを上回ったため、営業利益は前年比440万円減少しました。この傾向は半年間ほど続いています。
また、今年オープンした小田原東IC店がようやく黒字化したのも束の間、再び赤字に転落。予断を許しません。
燃料油販売は伸びが再び始まりました。緊急事態宣言等の解除の影響が出始めたのかもしれません。
当社は2019年にLINE会員の募集を始め、燃料油販売量が毎月伸びていました。しかし、20年4月の緊急事態宣言以後は、増減の繰り返し。このような状況の中で、今年10月は、前年・前々年を凌ぐ販売量を示しました(グラフ1)。
10月から車検需要が落ち込む。対策は?
グラフ2は、大手損保A社による車検需要の予測です。
今年度の車検需要は10月以降、前年を大きく下回るようです。
当社SSの車検入庫台数にこれを当てはめてみました(グラフ3)。
10月時点で既に計素画を440台下回っているのですが、困ったことに、このまま推移すれば、来年3月までに計画を2,000台下回る見通しです。
これまでの当社なら、「すわ一大事!喫緊に販売強化策を立てよ」と店長や販促担当者の尻を叩く事態です。
私が20代の若造だった頃、当時勤めていた会社の「セールス戦陣訓」を思い出します。
「販売畑に身を置くものは、販売で身を立てねばならぬ。今なすべきことは、売上倍増!」と喉も裂けよとばかり唱えさせられました。典型的な昭和世代の根性論です。
確かに形ある商品なら、お客様に声をかけたり得意先回りをすれば、販売成績は伸びました。
SSの取扱商品も同じです。ガソリン増販しかり、洗車、タイヤ、バッテリーしかり、果ては水抜き剤でさえ、声かけをすれば売れました。
「なすべきことは売上倍増」というフレーズは、今も私のDNAに色濃く刻み込まれています。
水を汲む前にまずバケツの穴を塞ぐ
しかし今、一時的な販売強化キャンペーンを実施することに疑問を持っています。
車検は、そのような商品と一線を画します。店の技術力を信頼し、ニーズや不安に寄り添う担当者に共感し、買っていただける商品です。にもかかわらず、これまで当社は、力づくで説得したり、オマケをつけたりして、無理やり結果を出してきました。
以前も述べましたが、当社のSSは今、車検に軸足を置いた販売体制に転換しているところです。
これは、計画値に対して強引に辻褄を合わせることを意味しません。「売り込み(PUSH)」から「顧客の求めに応じる(PULL)」への転換を意味します。
2015年頃、当社SSの車検入庫台数はまだ年間7,000台、当時の車検リピート率は40%でした。
その後、社内にコールセンターを設け、車検完了客に調子うかがいをしたり、ガソリン価格を優遇したり、リピーターヘの電話セールスを強化してきました。その結果、リピート率は58%に改善しました。しかし、この3年間変化していません。
車検のような高頻度反復商材のリピート率が58%で頭打ちになっていることに、目を向けます。バケツに穴が空いている状態で、水を汲み上げるより先に、まず穴を塞ぐことに全力を尽くすべきでしょう。
車を乗り換えたわけでもなく、転居したわけでもない。・・・にもかかわらず、リピートしていただけないお客様が約4割存在します。その理由を一っひとつ尋ね、当社のSSに潜む不満要因を丁寧に炙り出し、潰していきたい。
その思いを店長たちに伝えたところ、業績が下がることへの不安を口々にもらします。
しかし過去最高収益が得られている今だからこそ、一時的な売上低下リスクを負ってでも顧客満足度を上げなければなりません。
「入庫台数が計画に満たないのは需要が減少するからで、むしろ計画そのものが杜撰(ずさん)だった」と開き直ります。
当社SSの年間車検入庫台数は現在、リピーター6,000台、新規客8,000台、合計1万4,000台です。
もしもリピート率が65%に改善すれば、2年後のリピーター入庫は9,000台となります。新規客8,000台を維持したとして合計1万7,000台。120%成長が期待できます。
SSも中古車は在庫販売がいい
当社SSの車販が好調です。
10月は159台販売しました(8店合計)。
その内訳を「表2」に示します。前年と比べると、中古車販売が激増しました。
過去SS業界が取り組んできた中古車の無在庫販売(オークションダイレクト)は奮いません。SSビジネスにおいても、中古車は仕入れて在庫を販売する方が遥かに容易です。
当社は常時300台を、8店に分散在庫しています。その車両データベースをイントラネットで共有し、各店でやりとりして販売しています。
そして、2カ月経っても売れない在庫は損切り承知でオートオークション(AA)に差し戻したり、レンタカーに転用します。
加えて、今年から「中古車リース」の取り扱いを始めました。お客様の選択肢が広がり、相乗効果が出ていると感じます。
一方で、車販のブレーキとなっているのが新車です。
半導体不足などで、自動車メーカーが減産を余儀なくされており、国内販売台数は3割以上減少すると言われます。
たとえば、今人気の高い「ヤリスクロス」は納車8カ月待ち。待てないお客様は諦めるか、中古車を希望されます。
この春、元売大手が新車リース(サブスク)を商品化しました。しかし、このタイミングは最悪だったかもしれません。苦戦されるSSが多いのではないかと、ご同情申し上げます。
車販とレンタカーの最強コラボ
そんな中、一つ朗報をお届けできるかもしれません。
「表3」は、当社が最近発注した新車です。
納期は車種により3~10カ月先です。このうち、すでにお客様から注文いただいているものは一部です。
一部は今後の注文に充てます。今や新車は「即納できる」ことが価値を持ちます。とは言え、新車を仕入れてから販売するのは大きなリスクが伴います。普通の自動車販売店は、あまりやりません。
ところがSSにはレンタカービジネスがあります。実はここに上がっているのは、市場人気も高いのですが、レンタカーとしても大きな運用益を得られる車種なのです。
新車をレンタカーとして半年~1年間運用し、車両価値が失われないうちに、中古車として小売りしようという目論見です。
前号でも述べましたが、ここ数年、国内の中古車流通市場は極端に供給不足、需要過多に陥っています。AAだけに仕入れを頼っていては商売になりません。
そこで、中古車を生み出す種を自社レンタカービジネスに仕込もうというわけです。まだ実験段階なので、儲かっているかどうか正直分かりません。しかし、新車をダブルで収益化でき、あまりリスクもないと考えています。
レンタカーで1店当たり年間2,300万円の営業利益
そのレンタカービジネスですが、当社は年間売上4.3億円。うち1.8億円の利益を生み出すまでに成長しました(グラフ4)。1店当たり平均2,300万円の年間利益です。
現在に至る経緯を簡単に述べます。
2015年までは「貧すれば鈍する」状態。すなわちコストを抑えるため、安い低年式レンタカー を運用していました。どんなに整備しても故障や苦情は多く、「薄利でやってられない 、レンタカーをやめたい」 という店長もいました。
2016年、仲町台店で車両別売上の検証実験が始まりました。その結果、新しくて人気のある車種をラインナップすると、投入コストを遥かに凌ぐ利益を稼いでくれることが分かりました。
その方式を「Nメソッド」と名づけ、2018年から他店でも展開したところ、全店で同様の結果が出ました。これを受け、19年からはニコニコレンタカーの有志FC店にも投入しています。その結果、年間1,000万円を超える利益改善を果たす店が各地で続出しています。
さて、2020年、新型コロナのパンデミック(感染爆発)が宣言されました。当社は一時的に車両台数を減らしましたが、「Nメソッド」のスピリッツは継続され、ノウハウの完成度を高めています。
翌21年の今年、当社は新たに2店が加わり、レンタカー売り上げは130%増、利益はまもなく2億円に手が届くところまできました。
販売活動を一切行わず、社内のハンドリングだけで売り上げ、利益、顧客満足度が向上するレンタカーは、当社最強の収益化エンジンです。
脱炭素時代を勝ち残るSSレンタカー
来るべき「脱炭素時代」ー。石油販売業は大打撃を受けるでしょう。しかし、SSレンタカーにとっては追い風となる可能性が高いと考えます。
理由1
国内の経済格差はますます拡大し、自家用車の保有を諦める人が増えます。一方で、公共交通機関の「Maas」(サービスとしての移動)インフラの整備には、相当の時間がかかります。となれば、レンタカーやカーシェアニーズが高まるのは必然です。
理由2
自動車燃料はガソリンであろうが、電気や水素に置き換わろうが、お客様の「移動ニーズ」は同じ。店はその時々の人気車両にシフトすればいいだけです。
では、どんなSSもレンタカービジネスで勝ち残れるかというと、実はそうでもありません。
先ほど、当社SSの「平均営業利益2,300万円」と言いましたが、SSによって大きく異なります。
「表4の(A)」は、当社の昨期のSS別レンタカー事業の収支です。
最大利益を上げた堀之内店は5,400万円、最低の所沢店は900万円二雲泥の差がつきました。
そう、レンタカービジネスはSSの立地条件により大きな格差が生じます。
「表4の(B)」に示すとおり、レンタカー立地適合度をA~Dランクで分けてみました。
当社は、決してレンタカーに適した立地を狙って出店したわけではありません。仲町台店と堀之内店、この2店舗以外は、SS運営さえままならない他社から継承した物件です。
それでも8店中2店がAランク、2店がBランク。半数のSSが高い適合度を示しました。
読者諸兄の皆様が運営されるSSにも、A・Bランク立地の店は数多く存在するでしょう。
そしてAランクの店なら「年間利益5,000万円以上」、Bランクなら「年間利益3,000万円以上」が約束されています。
このポテンシャル(可能性)にぜひ気づいていただきたいと思います。