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2011.07.01
油外放浪記第33回「「ワンマンカーケアセルフ」のモデルプランと可能性」
ワンマンカーケアセルフに求められる条件
前回、社員1人のセルフSSで月250万円の油外収益を獲得する、ローコストかつ高収益のSS事例を紹介しました。
今回は引き続き、この「ワンマンカーケアセルフ」という考えを前に進めてみたいと思います。
ただし、ここで言う「ワンマン」とは、SSの営業を「ワンマン=単独」で行うという主張ではありません。
「消防法」の規定上、防犯対策等々の見地から、SSが常時1名だけで営業するのは現実的な話ではありません。私自身が複数のSSを抱えて日々苦労していますから、そんなことは百も承知の上で、このテーマについて述べていきます。
本稿で述べる「ワンマンカーケアセルフ」とは、「カーケア商品を販売し、専門技術を生かして受注した業務を処理する正社員を店長1名に限定した」SSオペレーションのスタイルのことを意味します。
ワンマンカーケアセルフの標準プランを「図1」に示しました。その前提を列記すると、
①給油はセルフサービス
②洗車もセルフサービス(セルフ洗車機を設置)
③燃料油の販売量は300kl/月(つまり、固定客数は約5000人)以上
④毎月150人の車検見込み客に対し、アルバイトが情報提供する(車番認識システムを設置)
⑤受注した車検整備を社員(店長)が実施する
⑥したがって、整備技術を身に付けた店長を配備する
⑦リフトなどの整備設備を設置する
⑧中古車レンタカーを取り扱い、アルバイトが対応する
ー以上が、「ワンマンカーケアセルフ」を成立させるための条件です。
すべてのSSがこの条件に当てはまるわけではありません。
しかし、燃料、洗車、レンタカーは「ほっとけ」油外(※定義は、月刊ガソリンスタンド2010年7月号参照)。
すなわち、「プル型」販売を実践します。また、オイル、タイヤなども積極的な販売活動をせず、お客様から申し出ていただいたものだけに対応します。
唯一、SS店頭で販売活動を伴う商品が車検です。販売対象となるのはSS来店客です。そのため、母数を確保するためには、ガソリン販売量が月平均300kl程はほしいところです。
販売量が月平均300klなら、毎月150台の顧客が車検を実施していることになります。その購入チャネルとして当SSを選んでもらうようにアルバイトスタッフが「声かけ」をします。
毎月150台の車検見込み客を特定するために人を配備すると、それだけで100万円の人件費が掛かりますので、「車番認識システム」を活用します。
今や、国の車検証情報が活用できる時代です。来店客の車番が分かれば、直ちに車検満了日がつかめます。車両重量なども分かりますので、車検見込み客には自動的に見積書などを作成し、出力できます。
訓練を受けたSS社員がしゃかりきになって車検の商談をしたら、そのうち4~5割は受注できます。しかし、昨日今日配置されたアルバイトスタッフによる情報提供レベルでも1~2割の車検を受注できます。
このようにして、店長1人と1~2名のアルバイトスタッフで運営する、燃料油300kl/月、油外粗利340万円/月のローコスト高収益SS=「ワンマンカーケアセルフ」が成立します。
油外設備だけ借りる「ワンマン」業態の可能性
その経費を「表1」 に示しました。 レンタカーの維持費や駐車場代は少し多めに見積もりましに示しまた。それでも、総経費は月間170万円しか掛かりません。つまり、経費の2倍の油外収益が得られることになります。
「表2」は、労働投入時間の試算です。車検と「ほっとけ」油外の作業に216時間を投入し、整備技術を身に付けた社員(店長)が担当します。
アルバイトスタッフは、レンタカー作業に115時間、車検販売に10時間、店舗クレンリネスや設備管理などに30時問、合計160時間を投入します。
むろんSS小売店ですから、この「実働投入時間」以外にも営業します。仮に、24時間営業の店なら、最低でも800~1000時間を投入しなければなりません。いわゆる「待機時間」がどうしても必要になります。
ここで強調したいのは、これまで油外収益の位置付けは、いかに「人件費を賄う」ことができるかという消極的な考えが主流を占めたことです。
しかし、「ワンマンカーケアセルフ」は、「油外で利益を得る」という積極的な発想を与えてくれる画期的なビジネスモデルを描くものです。単なる机上の空論ではありません。前号の本欄でも紹介したようにそれを実現するSSがすでにこの世に存在します。
さて、話はここからです。
ことにセルフSSでは、リフト設備を備えているにもかかわらず、ピット室のシャッターが下ろしたままの状態であるケースが多々あります。当初は、カーケア セルフの店づくりを目指したのでしょうが、運営実態として経費倒れであるために、整備スキルを持たないシルバー人材を配置し、やむを得ず、燃料油販売に特 化しているケースが少なくありません。
もし本当にそうであるなら、第三者に対し「油外だけやらせてください」という提案も可能なのではないでしょうか。
以前、当社が他社の運営するSSでレンタカーを営業していることを本連載でも紹介しました。いうなれば、SSの軒先を借りるテナント型レンタカー店です。
同様に、SSの整備設備を第三者に貸すのです。
元売会社が社有SSを業者に委託するのと同様に丸ごと委託する方法もあれば、収益を折半する方法もあるでしょう。SSにとっては、顧客サービスメニューが強化され、遊休設備を賃料収入に変えられるメリットがあります。
他方、借りる側はどっでしょう。
「ワンマンカーケアセルフ」のモデルに見るとおり、「油外で利益を得る」ことは可能です。そういう中にあって、リストラの憂き目に逢う優秀なSSマンがたくさんいます。
SSという巨額の設備投資やその維持費、また、待機時間の人件費を負担することな く、ガソリンで集客した顧客に対して、最低限の人件費負担で油外商品を販売し、しっかり利益を得るという、まるでショッピングセンターのテナント店のよう な戦略構築が可能となります。
整備業界とのコラボ
最近は、整備業界と接触する機会が多くあります。彼らは口をそろえて言います。
「SSはいいですね。毎日お客さんが来てくれて」-。当方も「じゃあ、SSをやったらどうですか」と言葉を返します。
しかし、こう言うと設備投資額や石油流通の実情を踏まえてか皆、及び腰になります。
そこで提案します。ならば、近くのSSに「間借りしたい」「そういう手もありますよ」と話を持ちかけるのです。
整備事業者が「ワンマンカーケアセルフ」の担い手になるわけです。彼らは、車検整備だけでなく、鈑金、中古車販売など豊富なサービスメニューを持っていますから、もっと大きな展開が期待できるでしょう。
私自身が15年前にSS業界へ新規参入した者です。それ以降、車検工場、鈑金工場、磨きボディーケア業、中古車販売、買取店、レンタカー、カーリースなどなど、あらゆる車関連ビジネスを手掛けてきました。
そこで分かったことがあります。
最も難しいのは燃料油販売への取り組みです。すなわちSS経営です。
油外商品は一生懸命に取り組めば、最初から利益を出せます。でも、燃料油販売は本当に厳しいの一言。初期投資が少なくとも5000万円以上かかり、仕入れ に億単位の資金調達が必要です。そして、L1円の攻防でキャッシュフローが振り回されたり、様々な法令や規制への対応が求められたりと、とにかく費用と手 聞がかかります。
つくづくSS業界は偉大だと思います。しかし、その苦労の割りに報われているとは言えません。
「何とかならないものか」と真剣に悩み考えてきました。SS経営を実践し、検証を繰り返してきました。そして今回発見したのが、「ワンマンカーケアセルフ」という新しいスタイルです。
ここでいう「ワンマン」とは、自社の人間でも外部に委託しても構わない。つまり、SSと整備事業者が歩み寄り、互いの得意分野に注力して力量を発揮する形態も「あり」だと考えたのです。
すべてを自社で賄うより経営リスクも分散できます。
例えば、初台のレンタカーを揃えようとします。SS経営の立場で考えると、これは 大変なことです。大会社なら稟議書を何枚も書かなければなりません。ところが整備事業者にとって、中古車を集めるのは当たり前の仕事です。ビジネスですか ら、下取りした車でもオークシ ョンから仕入れてもいいのです。
車検や鈑金用に20台以上の代車を持つ工場は珍しくありません。「車番認識システム」を設置するのも然りです。昨今の燃料油の収益性を考えれば、SS経営者が投資に慎重になるのは無理からぬこと。
しかし、整備事業者にとって、新規の車検客を見つけるために膨大な量のチラシを配布することは常識ですから、数万円のリース料負担は大して気にならないでしょう。
逆に、整備事業者は、給油に来店した顧客に「声かけ」をして車検や整備を獲得する方法を知りません。SSにとっては、うんざりするくらいやり尽くしてきた方法論です。
ある人にとつて大問題でも、立場が異なれば問題にもなりません。SSと整備業者は競合相手として切磋琢磨する、それ自体はもちろんよいことだと思います。
しかし、互いに協力し合い、相乗効果を発揮するという道があってもいい。そう考えます。
伸びるSSレンタカー
さて前述のとおり、当社は現在、他社の直営SSのセールスルームの一部を間借りしたレンタカービジネスのテナント運営の効率実験を展開中です。
人もクルマも駐車場ほかすべてのものに関してわれわれが手配。調達し、SSには毎月テナント料として20万円を支払っています。
今回の震災の影響でテナント先のSSが休業するなど思わぬアクシデントもありましたが、5月の売り上げは180万円を超え、黒字化できました。
今後は月間100~200万円の営業利益が上がる見込みです「グラフ1」。
また、もし大家(持ち主)のSSがピット室まで貸してくれるなら、迷わずワンマンカーケアセルフの「受託型」を目指したいところです。
紙幅も尽きましたので、このあたりの話は改めて述べたいと思います。