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2015.08.01
油外放浪記第82回「SSで取り扱える新車リースを模索しています」
車検倍増でもまだ足りない
表1は、当社の直営SSの月間平均実績です。
ガソリンはなんとか利益が出ていますが、所沢SSにいたっては「月額1万2千円」しか稼いでいません。
テレビショッピングの分割払いじゃないんだから、周辺の元売直営のSSさんには、もうちょっとましな市況になるよう是正してもらいたいものです。
油外収益は1SS当たり平均940万円と健闘しています。
車検を3年間かけて強化し、平均133台へ改善したのが大きいでしょう。
しかし、経費も増えたのでまだ赤字です。「車検」「車販」「レンタカー」といった付加価値の高い商品に注力しているにもかかわらず、人件費効率がまだ200%に達していないのは口惜しい限りです。
10年来変わっていない「車販」にメスを入れる
改善の余地が大きいのは「車販」ではないかと考えました。
車の販売収益だけでなく、販売後も芋づる式にいろいろ売れる商材です。にもかかわらず、「車販」のスタイルはこの10年間、あまり変わっていません。
当社も10年ほど前からオークションで中古車の落札を代行するビジネス、いわゆる「オークションダイレクト」方式を行ってきました。これはSSにとって在庫リスクがなく、非常によく出来たビジネスモデルです。全国の多くのSSでも採用されていると思います。
ただ、SS業務と両立させるのが大変むずかしく、月に2~3台売れれば上出来です。毎月10台以上の車をコンスタントに売ろうと思うと、やはり専任者が必要です。
なぜなら、
①希望車両を探し、選び、落札、加修、納車するまでのリードタイムが長い。
②曜日や時間に関係なくお客様と頻繁に連絡を取り合う。
③交渉力や商談力、判断力、経験に裏付けられた相場勘、フレキシブルな行動力が必要で、
研修を受ければ誰でもできるといった類の仕事ではない。
つまり、SSの通常業務に馴染みにくい要素を多く含んでいます。
その一方で、レンタカーを店頭に何台か置いておくと、時々売れます。これは誰でも売れます。やはり目の前に現車を陳列し値札をつけて売る方が、はるかに容易なのは明らかです。
でも、本気で車販収益を考えるなら、最低でも50台は陳列する必要があると聞きます。そんな展示スペースはSSにはありません。もしあったとしても、在庫を仕入れるだけで数千万円のキャッシュが必要です。
やはり、車販ビジネスは「高嶺の花」なのかなぁと思っていました。
ところが昨年、当社の平塚SSの隣の農地を借りられることになりました。
思い切って中古車を陳列してみようと土地を借り、整地し、外部コンサルタントから手とり足とり教えてもらい、今年2月、軽自動車専門の中古車ショップをオープンしました。
約70台の車を仕入れ、専任者を置き、チラシをまくと、毎月十数台が売れています。200~300万円の粗利を稼ぐので、賃料、人件費その他の経費を賄う程度のビジネスにはなりました。
とは言え、担当者の業務は在庫車両の維持管理(洗車など)と入れ替え(落札や出品)に、ほとんど忙殺されます。やはり、SS業務とは一線を画します。
SSで車を毎月20台売りたい
どのSSでも毎月コンスタントに20台の車が売れるようにしたい。
でも、販売力に長けたスタッフは配置できないし、在庫スペースもありません。
「普通のSSスタッフが、在庫を持たず、月20台売る方法はないものか」と虫のいいテーマを掲げ、今年1月、本社内にプロジェクトチームを結成しました。車を売った経験はおろか、SS経験もない、オヤジたちの開発チームです。
SS業界に限らず「よく売れてる」という噂を聞きつけては、調べ、話を聞き、検証を繰り返しました。その結果、面白い取り組みに出会いました。
まず最初に、年間250台の新車・中古車を販売する整備工場です。
6年前から「新車の定額リース」を始め、実績が挙がっているというので、話を聞きに行きました。
通常は既納客を対象とした車の整備や買い替えで商売している店ですが、チラシを撒くと新規客がやって来て、年間40台売れているといいます。
チラシの打ち出し文句は「新車5年リース、月々定額1万2千円から」-。リース料には車両価格だけでなく、車検、税金、保険、5年分のメンテナンス料が含まれています。月額を低く見せるため、残存価格と年2回のボーナス加算額を設定しています。
一見安いように見えます。
しかし、5年間の総支出で考えれば結構な金額になります。
それでも、突然の出費が発生せず毎月定額で車が利用できることに対し、女性や年金生活者が反応するそうです。
車を手に入れる方法として「個人向けリース」は一般に馴染みが薄いため、これをお客様に理解してもらうことが最初の「壁」になると言います。
社長自身がセールスを担当されていますが、軌道に乗るまで3カ月間かかったそうです
次に、軽自動車専門の中古車販売店です。
この店も月々定額払いで「月9980円で高年式の軽自動車が手に入る」と謳っています。
残価設定型5年ローンですが、ボーナス時の加算はありません。また「月々2000円のメンテナンスパック」をオプション販売し、客単価を高めています。
取り扱う車は中古車ですから、店頭に50数台展示しています。
そのためか、新人スタッフでも販売しています。ターゲットは、やはり女性やお年寄りが中心と
のこと。
「どうやったら車の出費を抑えられるかを考え抜いた結果、この販売方法を編み出した」と社長さんはおっしゃいます。ただ、やはり売れるようになるまで8カ月間かかったそうです。
両社に共通するのは、「残価を設定して支払い総額を抑え、5年分の税金やメンテナンスなども加え、月々定額の出費で車が手に入る」という点です。
車にあまりこだわらない客層が反応しているのも同じです。
会議は空回り
さて、こうした情報を私たちSSはどう生かすのか?
当社のプロジェクトチームは迷走しました。
商品開発の方向性を定めるものの、すぐに壁へぶつかり、翌週にはどんでん返しの繰り返し。
定額支払い方式にするにしても「リース」がいいのか「ローン」がいいのか、「残価」はどうやって設定するのか、よく考えると分からないことばかりです。
「車を展示できないのだから新車を売ろう」と誰かが言えば、「いや、中古車の方が安価で売りやすい。店頭に2~3台展示して、あとはバックヤードに駐車場を借りてはどうか」といった議論になり、どっちの方が売りやすいか、シミュレーションに次ぐシミュレーション。
これに行き詰まると「新車でボーナス併用払いにすればいいのでは?」「ボーナス払いだと年金生活者や主婦には売りにくいよ」「じゃあ頭金をもらえば?」ーーなどと堂々巡り。
はたまた「ウチはニコニコレンタカーをやっている。これを何かメリットにできない?」なんて発想が出て、何も決まらないまま月日が経ちます。
ローンやリース会社にもいろいろ当たりました。
土・日対応、審査スピードなど条件がまちまちで、こちらが何をどういう条件で売りたいのかがはっきりしない以上、なかなか決まりません。
素人同士の議論なので、「そもそも新車って、どこから仕入れるの?」「それにはフロアマットとかラジオはついてるの?」 など、初歩的なところで議論がすぐスタックします。
販売の手順、契約の手順など、何もお手本がなく、やればやるほど、プロジェクトスタッフがあまりにもド素人なことが分かってきました。
車の写真を見ても、車種を識別できない連中です。全部同じに見える。そもそも車種名を知らない。これでは100年かかっても商品開発はできません。
そこで、これまでの議論はいったん棚上げにし、ちゃんと研修を受けさせようと判断しました。
各SSから車に詳しい者を抜擢し、定額方式の外部研修を受けさせよう。そして学んだとおりの商品を、学んだとおりやってみよう。そう思い、車の定額販売方式を展開するチェーン本部に「教えてください」と打診したのが4月です。
SSにしかできない車販を求めて
ところがです。「マーケティング会社にノウハウを教えることはできません」と門前払いされました。仕方ありません。こうなったら独自開発。我らがSSならではの特性を生かした、新しい「車販」スタイルを創ってやるぞと意気込みます。
幸い私たちにはSSというフィールドがあります。
まずはマーケットにぶつけてみて、うまくいかなければ修正していこう。トライ・アンド・エラーを繰り返せばいい商品ができるのではないか。車検もレンタカーもそうしてきたじゃないか。失敗してもいい。当社の寒川SSで、6月にリリースしてみようと腹をくくりました。
とは言え、中途半端な商品をSSにリリースして「売れ」と言っても混乱するだけです。
最初はプロジェクトスタッフがSS店頭に立ち、自分たちで売ってみて、足りないところをたくさん洗い出しなさい、と指示したわけです。
まずはリース会社に「オートリース」の研修をお願いしました。今さらながら驚きました。
コンビニでもスーパーでも、アマゾンでも楽天でも、あらゆる商品には値札がついています。
中古車だって値札を付けて販売します。ところが新車は値段をつけず、まずお客様の希望を聞くというのです。これをディーラーに連絡し見積もり書をもらいます。ここで初めて仕切り価格が分かります。
これにいくらの販売手数料を乗せるか、お客様との駆け引きが始まります。
「何年払いにすると月々いくらです」「ボーナス払いや頭金を設定するといくらです」「下取車があるならいくら勉強できますよ」「じゃあETCをサービスしましょう」といった具合です。
「メーカー希望小売価格」なんて、あってなきがごとし。お客様と押したり引いたりして値段が決まるというのです。
こんな複雑なビジネスは、SSの一般スタッフにはできっこありません。そこで私たちの考えた方針は以下です。
❶在庫負担のない「新車」を取り扱う。
❷値引き販売はしない。
❸5年リースで残価を設定。
❹ボーナス加算額は6万円。
❺車検、税金、定期点検、基本メンテナンスをパックにする。
シミュレーションをしてみると、軽自動車のうち数車種は月々1万円ポッキリで提供できることが分かりました。
すべての車種に月々定額料金を設定します。よし、これでやってみよう。商品名は「定額ニコノリパック」です。
未経験スタッフが9日間で4台売った
6月6日、寒川SSの周辺5万世帯にチラシを折り込みました(画像1)。
店頭は「定額ニコノリパック」一色とし、ディーラーから数台を借りて展示しました。
普段デスクワークをしている「おっさん」3名が翌週14日までSSに張り付き、来店客に声をかけ、商談してみました。
その結果、9日間で101件商談をし、4台成約しました(表2)。
ハスラー、ノート、フリード、ハリアー、つまり軽自動車1台、普通車3台です。粗利総額は約90万円、なかなかの手応えを得たと思います。
何よりの福音は、折り込みチラシに反応したお客様が約20件あったことです。成約した4台は、すべて折り込みチラシの反応客でした。商談技術が未熟なために成約し損ねたのも10件ほどあります。
これまで様々な商材を折り込みチラシで告知し検証してきましたが、ガソリン以外では、唯一車検だけが費用対効果の合う商材でした。そう考えると、この「定額オートリース」商品は、大きな可能性を秘めているかもしれません。
手応えを得たのでSSスタッフの一部にも訓練したところ、その後も、興味を示したお客様がチラホラやって来ていて、7月初旬までにさらに4台を成約しました。まだまだ商品の精度は穴だらけですが、1年くらいかければ完成度は高まるだろうと期待しています。