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2023.03.24

代表コラム

油外放浪記第170回 脱炭素時代の生き残りに向けて

車検が捲土重来

いつものように、当社SSの直近実績を振り返ります(表1)。

10月の営業利益は1,700万円(8店合計)です。前年より100万円増で、ほぼ今期の事業計画どおりに推移しています。

燃料油はいつも気まぐれ。販売量、口銭ともにやや下がりました。

油外は嘘をつきません。順調に推移し、粗利益は1億6,800万円。前年より3,000万円近く伸びました。
車販は205台。200台超えを安定的に維持しています。
新車の納期がいまだ不透明、中古車市況も高止まりの中、担当者は奮闘しています。

レンタカーも順調です。20カ月連続して月次ギネス記録を更新中。しかし、車両原価が上昇しているからでしょうか、営業利益を圧迫しつつあるのが気になります(グラフ1)。

車検が完全復活しました。今年4月に前年比68%まで落ち込み慌てましたが、7月より改善効果が現れ、10月は1235台、前年比124%と伸びました。
車検の再生活動は、まずネットや商圏内告知など販売促進の見直しから着手。そして、8月からはSS来店客に対する販売担当者を育成強化しました。

特に、社内資格として「車検名人」認定制度を再構築し(表2) 、各店に車検名人を3名以上配備することができました。アルバイトスタッフも多く認定されています。

堀之内店はダッチロール

当社の堀之内店が低迷から抜け出せません。
2018年11月に新設オープンした東京都八王子市のSSです。600坪の敷地に同時給油6台、開放感のあるセールスルームを構え、指定整備工場も併設します。
首都圏郊外の多摩ニュータウンの一角に立地し、市内には15以上の大学が密集する学生の街でもあります。

当社の直営8店中、設備、立地ともに最高の条件に恵まれたSSです。5年以内に年間営業利益1億円以上を生み出す旗艦店になると期待し、当社では初めて自己資金で設立しました。経費は毎月2~3,000万円かかります。

オープン当初は期待を裏切らない素晴らしいスパートを見せてくれました。10カ月目(2019年8月)から黒字基調となり、次いで、毎月300万円の利益を出すようになり、29カ月目(21年3月)に累積赤字を解消(グラフ2)。

もう大丈夫、このまま成長路線を維持するだろう、と思って21年12月に店長を交代。以後迷走が続き、4年目を迎えてしまいました。

この店の弱点は、あまりにもレンタカーに依存しすぎたことです。
足元商圏の月間レンタカー需要は推定500万円弱ですが、学生需要が高いため、現在の平均売上は1,400万円。8月のピーク時は2,000万円近くを売り上げました。
130台のレンタカーを運用し、これだけの売り上げを担うのは、主に学生アルバイトです。
つまり、素人を配備すれば現場が自動的に回るのが、SSレンタカービジネスの真骨頂、と言いたいところですが、2つの問題が浮き彫りとなりました。

➊SSレンタカービジネスは通常、地元のリピーターが売り上げを支えてくれます。したがって、シーズンによる変動幅が小さくなるものなのです。

しかし、学生需要はシーズンに大きく左右されます。つまり、夏休み(8月)や春休み(3月)と、それ以外の月では、大きくぶれ、シーズンオフは車両コストが利益を大きく圧迫します。
しかも学生は2~4年の周期で入れ替わってしまい、固定化してくれません。

➋学生アルバイトは、採用には困りませんが、入れ替わりが激しいのが特徴です。レンタカーのようなシンプルな接客や作業には適していますが、油外販売などのスキルは蓄積されません。

特に昨年より当社の油外収益の筆頭に躍り出たのが車販です。他の店と比較すると、堀之内店は車販能力が極端に低いことがわかります(グラフ3)。

車販はシーズン変動が少ない商材です。その販売担当者の育成をおろそかにしてきたことが、この店の致命傷でしょう。拙速でうまく立ち上がった堀之内店ですが、今は少し時間をかけ、どっしりと油外販売力を構築する局面に来ていると感じます。

脱炭素時代に向けた当社の取り組み方針

脱炭素時代が徐々に近づいています。このままでは、私たち石油販売事業者が社会から見放されてしまいます。
ガソリン車からEV(電気自動車)にシフトすることが「脱炭素」にどれだけの効果があるのか、という議論は、今は傍に置いておきましょう。

「ガソリンスタンド」業態が世の中から求められる猶予期間はあと5年か、10年か。15年と考えるのは危険です。20年先までは持ちません。

いずれにせよ、社員やその家族の生活と人生を支えるには、今、SSの生き残り策を懸命に考え、準備しないといけないと思います。
私もいろいろ情報を集めていますが、何しろ先例がありません。最後は自分の想像力を働かせるしかないのだと思います。

当社のような中小企業は資産もノウハウもありません。その中で、従業員500人が食べていける事業を立ち上げるのは困難極まりません。
先の堀之内店を1店建設するのでさえ、清水の舞台から飛び降りる気持ちでした。

しかし、よくよく考えると、「脱炭素時代」といっても人々が突然、家の中にこもってしまうわけではありません。通勤、買い物、レジャーのために、人々は自由に移動する。「モビリティ」ニーズは、健全に維持されます。
…ということは、現在取り組んでいるSSビジネスの中で、このニーズを支える分野に的を絞り、集中的に拡大強化することが、今でき得る最良の生き残り策だと考えました。

こう整理すると、3つの普遍的なモビリティサービスが浮上します。「レンタカー」「車検」「自動車保険」です。

まず外せないのはレンタカー

「車の所有から利用へ」という流れは、今後ますます進むと言われます。
地域の生活圏利用に照準を合わせたSSレンタカー業が急成長していることや、個人向け自動車リースすなわち、「車のサブスク」が急速に普及し、自動車メーカーまでもが相次いで参入しているのは、その証しでしょう。
車のエネルギー源がどう変わろうと、自由に移動したいのは人間の本能です。

レンタカーは間違いなく次世代のインフラとなります。そして、SSとの兼業だからこそ、損益分岐点は低く抑えられ、低価格サービスによる抜群の集客力を発揮できます。

当社は現在、SS兼業で8店、専業で7店、車両1,500台を運用しています。これをさらに拡大し、各店商圏でナンバーワンシェアを目指します。

車検はなくならない

昨年、ある国会議員を通じて国交省・経産省の担当役人にお会いする機会を得ました。
「今後、車検制度を緩和したり廃止する可能性はありますか」と真正面から質問したところ、「車検はなくしません」と明快に断言していただきました。

世の中に車が存在する限り、その安全性は担保しなければならないこと、事故の被害者を最低限救済しなければならないこと、そして、徴税の機会をなくすわけにいかないことから、国は当然のこととして、車検の意義を認めているのでしょう。

車検はなくなりません。
そこで当社は、車検を軸に地域客を囲い込み、関係性の強化を図ります。また今後は、EV車検の実施体制の構築も必要になります。

自動車保険はリモートで売る

車が存在する限り、自動車保険もなくなりません。
当社は自動車保険に対し、長らく苦手意識を持っていましたが、そうも言ってられません。現在、保有契約者数1万件を目指し奮闘中。

今のところうまくいっているやり方が、車販客への保険販売です。当初、SSの車販担当者に保険も勧めてもらおうと研修したりしましたが、効果が出ませんでした。やむなくSSで車を契約していただいたお客様に、後日、本社事務スタッフが電話でお勧めをしてみました。

すると、予想以上の成果を得られたのです。そこで、本社内に保険販売部門を編成しました。
その獲得状況を(表3)に示します。

平均すると、SSが車を248台販売し、保険部門が111人に電話ですすめ、75件の新規契約を獲得しています。
成約率は67%と悪くありません。だったら、もっと商談すればいい、ということですが、思わぬ落とし穴がありました。

SSの車販担当者は、車を売ったお客様に「後日、別の担当者から自動車保険について電話があります。ぜひ聞いてくださいね」と伝えるルールになっています。しかし、これが徹底できません。したがって、保険担当者が電話しても出てくれない、出ても話を聞いてくれないと言う状況です。

車販担当者にとっては車が売れたことで頭一杯、保険のことまで気が回らないのでしょうか。
いずれにせよ契約件数がこのペースだと、1万件に達するのに11年かかってしまいます(解約もあるので、実際はもっとかかります)。
1万件に達する前に、脱炭素時代に飲み込まれてしまいかねません。車販客に対する商談数を改善するのはもちろんですが、商談対象客を拡げる必要があります。

そこで、車検が終わったお客様にも電話で商談できないかと考えました。車検客は車販客の5倍あります。しかも、車販は将来どうなるか分かりませんが、車検はなくなりません。

8月にプロジェクトチームを立ち上げ、やってみました。
惨敗です。成約率は1割以下、担当者の心が折れます。
どうも車販客と車検客は人種が違うようで、同じアプローチでは歯が立ちません。
–かような事実が判明しました。さぁ、腰を据えて取り掛かろう。あの手この手の仮説を立てては検証する、というプロセスに取り組みます。

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