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2023.03.24
油外放浪記第171回 車検、車販、レンタカーの潮目を読む
前年割れにヤキモキ
2023年が始まりました。
本年もよろしくお願い申し上げます。昨年は、ウクライナ戦争とコロナで終始し、あっという間の1年でした。
当社のSSの昨年11月の実績が締まりましたので、まずはここから振り返ります(表1)。
前年同月と比べ、営業利益は290万円減少してしまいました。
燃料油が販売量・口銭ともに落ち込みました。マイナス560万円。経費が2,430万円増えましたが、油外は2,700万円しか増えませんでした。
コストアップの目的は油外を増やすため。ならば、増やした経費の2倍以上を油外で稼がなければ、割りに合いません。
そう一人憤る昭和世代のイケイケオヤジは、今や骨董品でしょうか。赤字を出したわけではありませんが、スッキリしない11月でした。
昨年は車検で上へ下への大騒ぎ
2019年9月、当社はSSの基軸商品を「車検」と定めました。
脱炭素時代になっても必要とされる商品であり、国が2年サイクルで需要を創ってくれ、オイル交換や洗車などと比べると、顧客との信頼関係を作りやすい商品です。
もちろん車も売れるうちは目一杯売るし、レンタカーをないがしろにするものでもありませんが、「車検ファースト」の考えに至った経緯と、その後の顛末を述べます。
その昔、車検は自動車整備業の独占事業でした。解禁されたのが1995年(改正車両法の施行)。以来、当社は一貫して車検を主力商品としてきました。
地域ナンバーワンを目指し、店頭販売のみならず商圏内告知、すなわち販売促進を強化してきました。
あるとき、リピート率を調べてみたら、何と30%でした。2年前に当店で車検をやっていただいたお客様のうち、3割しかリピート購入していただけてないということです。
何とか当店で反復購入していただきたい。そう願い、電話アプローチを徹底しようとコールセンターを設置しました。また、ダイレクトメールなど、販促によってもリピート率を改善しようと、エネルギーとコストを追加投入した結果、リピート率は60%にまで改善しました。
リピート率が改善すれば、車検台数は増加するので、車検入庫1台当たり販促費(CPO)は下がるはず。そう思って、販促の手を緩めませんでしたが、CPOが次第に1万円を超えてきました。しかしリピート率は60%より上がりません。
「いやいや増田さん、リピート率は販促ではなく、接客と商品力ですよ」と業界の先輩から指摘され、社内でもこれを支持する声が強まりました。そこで21年9月の方針転換に至った次第です。
まずは、車検商品を根本から見直しました。
そして翌22年1月、多くの販促施策を中止。代わって、SS来店客に対する人的アプローチを強化しようと活動が始まりました。
その結果は、劇的に現れました。
直前まで110~130%で順調に伸びていた車検が、1月にいきなり前年割れ。2月は前年並みに戻しましたが3月は91%と崩れ始め、4月は何と前年比67%に落ち込んでしまいました(グラフ1)。
これは2020年、コロナ第一波の緊急事態宣言によって、レンタカー需要が急落したときと同じレベルの衝撃です。
車検はやっぱり販売促進
何が基軸商品か!何が販売再構築か!販促ではなく人間関係で売るという態様は、耳障りはいいですが、利益が減ると困るのは、会社でありSSスタッフです。
このままでは、車検半減ヘ一直線。強い危機感を覚えました。
そこで社長一喝のちゃぶ台返し、そして、自ら陣頭指揮を執り、直ちに販促再開の大号令。
前年を超える販促費は、本社が負担すると約束し、店長の不安をまず解消しました。
強化した廂品力はそのままに、ホームページや販促物に盛り込み、大量に発信した結果、夏には前年並みに戻り、秋からは 120%成長に復活しました。
やれやれと、胸を撫でおろした20年の年末でした。
販促費の費用対効果を、昨年と比較してみました(表2)。
販促費は、前年より427万円増加しました。しかし、車検台数は239台増えたので、CPOの増加は1,500円程度です。
車検粗利から販促費を差し引いた収益を見ても、昨年より650万円増加。結果オーライでしょう。
おまけに、急速復旧を狙って激しく販促展開してきたため、あらためて車検販促のポイントが明らかになったという効用がありました。今年(23年)は、もう少し要領よく販促できるはず(表3)。
そうすれば、CPOも1万円以下に戻るでしょう。
さらに2年後(24年)以降は、現在進めているリピート率改善策が効き始めることを期待します。そうすれば、車検の固定票が大きく上乗せされ、CPOはさらに改善するでしょう。
レンタカー需要の天井を測る
コロナ禍で落ち込んだ国内レンタカー市場が、急速に回復しているようです。
経産省データによると、レンタカー台数が9カ月間連続で前年を超えています。幸い、生活圏需要をターゲットとするSSレンタカーは、コロナの影響をほとんど受けませんでした。
しかし、それでも旅行・観光需要、ビジネス需要が回復しつつあるのは朗報です。
当社も11月としては、過去最高のレンタカー売り上げを記録しました。
この1年間で、当社のSSはレンタカーを77台増やし、500台としました(表4-A)。
1台当たり経費が4千円アップしました。それ以上に売り上げが上がってほしいところですが、11月は、レンタカー需要が落ち込む時期です。年間平均売上は1台当たり91千円ですので、不需要期で79千円を上げてくれたのは許容範囲です。
シーズンによる需要変動の振り幅を、地元リピーターが大きく緩和してくれます。これもSSレンタカーの良いところです。
そして何と言っても、売り上げの40~50%が利益です。この高い収益性は、大きな魅力です。(表4)に、保有台数の多い店を列記しました。
堀之内店は26台増車し、売り上げを210万円伸ばしました。しかし、台当たり売り上げが伸びていないことから、そろそろ飽和に差しかかっているかもしれません。
店長は200台にまで増やして月間売上2,000万円、利益800~1,000万円にしたいと息巻いていますが、しばらくは130台くらいで様子を見たいと思います。
仲町台店は、すでに飽和点に達しています。ここ数年90~100台で平均850~900万円の売り上げを安定的に上げています。もともと、足元需要が400万円/月くらいしかないところ、駅前立地と商品力(人気の新車をラインナップ)を生かし、かなり遠方からも集客しています。
新百合ヶ丘店は伸び盛り。いまだレンタカー収益の天井が見えていません。駐車場さえ確保できれば、すぐにでも100台以上に増車したいところです。
車販担当者の採用育成がままならない
車販の成長に翳りが見えてきました。
表1で示したとおり、11月に前年を下回った唯一の油外商品が車販でした。
原因は2つ。
まず、当社の中古車在庫に対する問い合わせ件数が減少しています(グラフ2)。
これまでは、コロナ禍による半導体不足のため、新車の納期が長期化し、中古車需要が活性化していました。しかし、そろそろ新車納期問題が解消しつつあり、ユーザーが新車へ回帰し始めているようです。
もう一つは、当社の内的要因です。
販売力(スタッフ数×スキル)のキャパの限界です(グラフ3)。
21年6月時点で、当社には26人の車販担当者がおり、123台を販売しました(平均4.7台)。
15名を増員したいと考え、採用のプロを招聘しました。しかし、車販に適応できそうな者は、まだ2名。半人前の実績しか出せていません。
一方、既存スタッフのうち都合5名が離職、離脱、移動しました。その中には、販売実績の高いものが3名いたのは痛いところです。
結局、現在も頭数は26名、昨年10月の販売実績は179台(平均6.9台)です。多少は、熟練してきたでしょうか。
とにかく車販のキャパが足りません。採用できない、採用しても適任者が少ない、適任者が一人前に育つのに時間がかかる、という状況です。
そこで店長には、車販スタッフの採用、あるいは社内からの発掘、そして育成を重点課題として課しました。
SS教育部門には、スタッフの研修スケジュール、スキルマップの作成を指示しています。
さらには車販の商品力や販促を強化して、問い合わせ件数や成約率を高める仕組みづくりが必要です。
本年も、早々からやることが満載です。