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2018.07.01

代表コラム

油外放浪記第117回「SS油外「第四の扉」を開ける時が来た」

伸びたゴムをさらに伸ばすか 新しいゴムを増やすか

例によって、当社SSの5月の実績を表1に示します。 車検台数が久しぶりに前年を超えました。需要自体が5月から回復することは分かっていたものの、現場スタッフが諦めず、マーケットの変化にしっかり食らいついてくれていることを喜んでいます。

粗利は、燃料油が1,000万円、油外が6,800万円で合計7,800万円。経費が7,000万円かかったので、利益は800万円でした。
燃料指数は1.5。昨年と比較すると5.5も悪化しました。経費が900万円近く増えたのに、油外は700万円しか増えなかったためです。
ただ経費の増加は、今秋に新規出店を計画しており、既存店で人の採用・育成を始めているため、その人件費負担も含まれています。

ここ数年、当社SSの成長は、まず10年前にレンタカーを投入したあたりから始まります。次いで、車検を3年かけて倍増しました。そして、3年前からは新車リースが起爆剤となり車販が活性化しました。

しかしここにきて、これら主力3品の成長に鈍化傾向が見られます。いわば「ゴムの伸びきった状態」—。今のやり方の延長線上で、無理に月間1,000万単位の収益増を強いると、プツンと切れてしまうかもしれません。
そろそろ「新しいゴム」を用意する必要がありそうです。

以前にも記しましたが、当社が目指すSS像は「年間5,000万円の営業利益を安定的に確保できる業態」です。
働くスタッフたちにとって、他業界に負けない報酬とプライドが得られる職場にしたいという、強い思いがあります。これを実現するために、今の3品では足りない。そろそろ4品目の扉を開くべきかと考えています。

SSにありがたい「二刀流商品」

お店には、お客様が集まってくれる商品が必ず必要です。これを「フロントエンド商品」と言います。
一般的に「フロントエンド商品」で集客し、「バックエンド商品」で儲けるわけですが、SSにとって、昔は、ガソリンがフロントエンドであり、バックエンドでもありました。いわば、大谷翔平選手ばりの二刀流商品だったのです。

ところがガソリンの収益力が落ちるにつれ、ガソリンで集客したお客様に洗車を買ってもらおうと声かけをしたり、ボンネットを開けて、バッテリー、オイル、水抜き剤などを提案しようという機運になりました。

SS業界全体がもがき苦しみましたが、その中から、かつてのガソリンのように集客力も収益力も併せ持つ、二刀流商品が出てきました。それが車検、レンタカー、新車リースです。

表2で示すとおり、➊需要があり、➋競合が弱く、➌お店に行かなければ買えず、➍何度もリピートしてくれる「フロントエンド商品」の要件と、➎生産性が高い「バックエンド商品」の要件を、これら3品は兼ね備えます。

生産性が高いから販促費が捻出できます。そして、販促すればするほど集客効果も上がります。さて、そんな都合のいい商品が他にもあるでしょうか。私は、鈑金塗装(BP)がその候補だと考えています。

「鈑金の放浪」から20年

BPビジネスヘの当社の取り組は古く、1998年にプレハブ事務所を改装し、簡易工場を設置したのが始まりです。

当時唯一の直営店だった仲町台店を窓口に、簡易補修を受注しました。月間収益はせいぜい50万円くらい。設備も技術も未熟で、ブレイクする兆候もなく、5年で閉鎖しました。
その後しばらくは外注です。受注してもマージンが低いため、SSも販売に消極的で、低迷しました。

転機は2008年です。レンタカービジネスがスタートしました。車を増やした分だけ儲かるぞと躍起になりましたが、200台もレンタカーが稼働するようになると、日常的に事故車が発生します。修理しなければ貸し出せませんから、再びBPを内製化しようと考えました。

2009年、山奥に安価な工場を借り、プロを採用しました。ホームページなどで一般客の集客も試みましたが、自社保有のレンタカー修理だけで、ほぼ手一杯となりました。
レンタカー修理に外注コストがかからなくなったものの、これでは「集客」にも「収益」にもなりません。

そこで2015年、空き倉庫を借り、最新設備を導入し、工場長のプロを採用しました。SSからの送客はもちろんですが、自らも集客・受注しようと、店舗機能を備え、ホームページも強化しました。

しかし、その立地は工業団地の裏通りです。思ったほど集客できません。作業キャパもなかなか増えず、月間収益は300万円。年間3,000万円の赤字を計上しました。

ところが今年4月、営業努力の甲斐あって、晴れて損保会社3社の鈑金工場に指定されました。車検を年間8,000台販売すると自賠責保険の扱いも8,000件ですから、何かと保険会社に対して影響力を発揮できるものですね。
ほどなく保険会社から、仕事が次々と舞い込むことでしょう。何とか早期に投資回収できればと考えています。そして今、今度こそ幹線道路沿いにBP工場を作ろうと目論んでいます。

自らも大量集客し、SSや保険会社からも送客するBP専門店としたいわけですが、実は秘策があります。

自動車保険は一石三鳥

車で事故を起こすと、そのドライバーにBPのニーズが発生します。
その人が頭に浮かぶのは、いつも目にするBP屋さんです。まずそういう人を集客する店にしたいと思います。あるいは「保険で修理したい」とドライバーは考えるかもしれません。彼らは、自動車保険の代理店や担当者に相談します。

そう、キーワードは自動車保険(任意保険)です。
自動車保険の販売手数料も積もればバカになりません。しかも毎年、契約更新する商品ですから「顧客の囲い込み」に非常に適した商品です。

そしてさらに、自動車保険はBP需要をも囲い込んでくれるのです。まさに一石三鳥の商品です。自動車保険を売れば売るほど、BPの受注が増える。これに手をのばさない理由はありません。

この考えは以前からあったのですが、いかんせん、鈑金工場を確立するのに時間がかかりました。当社の保険担当者も「営業マン」とは程遠く、事務処理に終始しているレベルだったのです。

前代未聞の保険代理店へ

しかしここにきて、条件が整いつつあります。
まずSSが安定黒字の体質になったこと。鈑金工場も軌道に乗り始めたこと。車販が活性化したおかげで、自動車保険の契約が徐々に増えてきたこと。

そして、極めつけは、保険のトップセールスマンが当社に帰ってきたことです。
実は昨年春、当社SSの店長から優秀な1人(48歳)を抜擢し、大手損保会社に出向させました。

彼は、そこでの厳しい修行を経て、何と1年間で5,000万円の契約実績を挙げるトップセールスマンに成長したのです。同期が100人いるそうですが、ぶっちぎりのトップ成績だそうです。

その彼が、このほど元気いっぱいで帰還しました。さっそく彼に「10年以内に保有契約件数1万件」という目標を与えました。保険関連だけで年間2億円以上の収益貢献です(表3)

こういう皮算用、私は大好きです。
皮算用もしなければ、絶対にそこにたどり着けないのですから。

それにしても「保険契約という固い絆で結ばれた顧客が1万人」という世界は、SSビジネスに新たな景色を見せてくれるかもしれません。ワクワクします。

もちろん、いかに天才的な彼といえど、1人でなし得る数字ではありません。自動車保険を大量かつ、恒常的に獲得する組織体制の構築が不可欠です。

そこで本社に保険チームを設立、各SSにも2名ずつの保険担当者を任命し、横断的なプロジェクト委員会を立ち上げました。月間平均100件の新規契約獲得を目指し、活動を始めたところです。 

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