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2018.09.01
油外放浪記第119回「車種構成を見直せばレンタカーはもっと伸びる」
そろそろ「車販」に 次の一手が必要か
暑い8月が終わりました。
各地で最高気温を塗り替えましたが、横浜でも7月時点ですでに37度を超えました。SSスタッフたちはよくぞ頑張ってくれていると思います。
かつて日本人が経験していない高温ですから、「茹でカエルの法則」のように、ある臨界点を超えるとバタバタ倒れるのではないかと心配です。
さて、表1は当社SSの7月実績です(5店合計)。7月は当社にとって期首にあたり、華々しいスタートを期待していましたが、残念ながら燃料指数を3ポイント落としてしまいました。
油外収益が360万円増えたものの、経費の増加が770万円で、まったくカバーしきれませんでした。幸か不幸か、当月も燃料油収益に支えられ、かろうじて営業利益は前年比マイナス100万円にとどまりました。
油外商品で気を吐いているのは「車販」です。2015年に新車リースを取り扱いブレイクしました。今年7月は前年比180万円アップ。伸び悩んでいる「車検」に肉薄してきました(グラフ1)。
しかし、その「車販」も成長の勢いが鈍化してきたでしょうか。
今のやり方の延長線上では、早くも安定期を迎えそうです。
人間力の壁を突破する
一般に商品の販売にあたっては「何を」「どこで」「いくらで」「どうやって」売るか、すなわち「マーケティングの4P」 (Product、place、Price、Promotion) を考えます。
しかし、こと油外商品の販売に関しては、4Pだけでは不十分です。「誰が」売るか、「誰が」こなすかーこの課題が必ず付いて回ります。つまりは「人」の 投入が不可欠です。
ですから、油外収益を伸ばそうと思ったら、その販売や作業に携わるスタッフの増員にも考えを巡らさなければならないことは、SS業界の常識です。
「人がいれば売れて当たり前」という極論さえ聞きます。
私もこれまで、商品力の強化や販売促進に力を注ぎつつ、人員投入も一生懸命やってきたので、油外収益は順調に伸びてきました。
ところが今年に入り、突然目に見えない壁にぶつかったようです。油外収益の伸びが減速しているのです。人を投入しても油外販売は伸びない。増えた人件費が利益を圧迫するだけになっています(表2)。
当社SSは、生産性の高い商品に注力してきたので人件費効率(油外収益÷人件費)は200%を超えますが、今のやり方では230%くらいが限界かもしれません。
これ以上、人を増やしても生産性が下がる・・・。何だかそんな限界点があるような気がします。
では、限界点を上げるにはどうするか。今一度「マーケティングの4P」に立ち返り、新たな戦略構築が求められるでしょう。
現在、私が取り組んでいるテーマは、本連載でもいくつか触れてきました。ーーガソリン増販、コールセンターの販売チャネル化、車検の満足度アップ、 鈑金や保険への取り組み、前回(7月号本欄)はレンタカーの常識を覆す新発見について述べました。バックナンバーをぜひご参照ください。
その他でも、いろいろ試しています。車販の頭打ちを突破するためにある仮説を立てて、検証しているところですが、成功の兆しを見せています。これについては改めてご紹介します。
また、「ロイヤルカスタマー制度(優良会員制度)」を復活させたいと思っています。フルサービス時代に著しい成果をもたらしてくれた施策ですが、セルフ運営となってから、瓦解してしまいました。当社は、今秋に新規出店を予定していますので、これを機に顧客管理、個客対応(ワン・トゥー・ワン対応) の仕組みを鋭意開発中です。
レンタカービジネスの適合度の低い所沢店
取り組むべきテーマがたくさんあって目が回りそうですが、本社の開発スタッフを増員したり、専門家に顧問となってもらいながら、進めています。
そんな中、前回ご紹介したレンタカーの新たな取り組みが新展開を見せたので、ご紹介します。 まずは前回のおさらいから。
当社の仲町台店が、レンタカーの月間収益を200万円から600万円にまで伸ばしました。 同店店長が実施したことは次の3つです。
➊人気車種を揃える
➋稼働率よりも1台当たり売上を優先する
➌保有台数を増やす
さてこのやり方は、どんなSSにも通用するでしょうか。
そこで、当社でレンタカーのビジネス条件が最悪とされている所沢店に適用してみました。
この店は、2005年に所沢市郊外のセルフ給油店を運営継承した経緯があります。
関越自動車道「所沢IC」と所沢市街地を結ぶ路線上にあり、車の通行量はそこそこ多いとはいえ、沿道は農地、工場、倉庫が点在する寂しい通りです。SSの隣地は、産業廃棄物処理場。運営継承して10年以上経ちますが、沿道の風景はまったく変わりません。
周囲に住宅がないので歩行者もいません。駅から所沢店までバスで30分近くかかります。
中央分離帯や歩道の樹木もあまり整備されないため、店の視認性は非常に悪く、かなり近づかなければ「お店がある」と認識できません。基本的に車がないと行けない店なのです。
それでも2008年にニコニコレンタカーを始めた当初は、周辺にここしかないので、遠方からバスやタクシーを使って借りに来てくれるお客様も多くいました。
ところがその後、市街地や住宅地の便利な場所に、ニコニコレンタカーの競合出店が相次ぎました。当店のお客様はみるみる減少し、稼働率も悪化。20台以上あった車両を半分に減らし、レンタカー売り上げも月間70万円くらいで、細々と営業していました。
レンタカーだけではありません。
運営継承した後、宅地開発によって新たな道路ができ、車の流れが変わりました。そこには元売系列子会社の直営店が続々出店します。月平均600㎘だった当店のガソリン販売量は、 あっという間に同200㎘へ。同時給油8台の立派なSSですが、来店客の少ない寂しいSSになってしまいました。
価格競争も激しく燃料油収益はスズメの涙。昨年も競合の新規出店があったので、さらに20㎘減販/月しました。ガソリンの減販は、顧客数の減少に直結します。ですから、油外販売もジリ貧に陥ります。
店長は苦慮します。
「ガソリン販売量に左右されず販促経費もかからない唯一の油外商品がレンタカー。よしッ、もう一度レンタカーを増車してみよう」と。
5台ほど増車してみたものの、立地条件の劣位は変わりませんから、その経費以上の増収はできません。結局、今年上半期の営業利益は半減してしまいました(表3)。
仲町台メソッドでやってみた
そこで今年6月、仲町台店の店長を顧問に指名し、所沢店のレンタカー大改革を断行してもらいました。
彼はまず、所沢店のレンタカー車両の状況をつぶさに分析しました。車種別の稼働状況、売り上げ、走行距離や年式、そして何より、何日前から予約が入ったかを重視します。
こうして当エリアの人気車種と不人気車種を見い出しました。そして、次のようにアドバイスしました。
➊不人気車種を人気車種に入れ替えよ
➋保有台数も増やせ
➌利用客にスタンプカードを配布せよ
所沢店の店長も意欲は非常に高いので、すぐさま忠実にこれを実行しました。スタッフの教育訓練もキャンペーンも必要なく、すぐ実行できることばかりです。
新たに導入した 車種は、エスティマ(2台)、ノア、ウィッシュ、ハイエースバン、クリッパーバン、ワゴンRソリオの計7台です。ニコニコレンタカーに関わっている人なら「えッ?」 と首を傾げる車種がほとんどです。
稼働率を考えると、こんな車種ばかりを増車することはまずありません。そこが仲町台メソッドのマジックたるゆえんでしょう。
結果をグラフ2で示します。
前年同月と比較すると営業利益の回復には、まだ時間がかかりますが、少なくともレンタカー収益は倍増(表4)。
「いやいや、まだ1カ月目。 判断は早計」と考えるか、「えッ!こんなに即効性があるんだ、レンタカーは」と考えるかは、読者に委ねます。
しかし、店長会議で所沢店の実績の回復ぶりを知った他の店長たちが、明らかに目の色を変えたことは、お伝えしておきます。