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2018.11.01

代表コラム

油外放浪記第121回「ガソリンと保険はSSの販売インフラ」

車検が持ち直したと思ったら 今度は車販が・・・

創刊60年を心よりお祝い申し上げます。
猛暑疲れでしょうか、9月は当社のSSに特筆すべき結果は出ませんでした。
5SS合計の営業利益は680万円。前年同月より300万円も下回ってしまいました(表1)

前年と比べ、経費を800万円近く増やしたにもかかわらず、油外粗利は100万円しか増えていません。

「経費を使うのはかまわない。しかし、増えた経費以上に油外収益を伸ばせ」と、店長たちには繰り返し言い聞かせているのですが、燃料油が好調だと気持ちが緩んでしまうのでしょうか。このままでは再び赤字に転落しかねません。

9月の油外の戦犯は「車販」です。前年より500万円もマイナスです。トップセールスの車販担当者が7月から体調を崩していることが響いています。自動車販売は、まだまだ属人的な要素が大きいですね。
しかし、車検とレンタカーがそれぞれ300万円以上伸び、車販の穴を埋めてくれました。

ガソリン増販は本社の仕事

さて、今回は久しぶりに「油外」ではなく燃料油を考えます。
かつて当社は「ガソリン増販」で鳴らしました。幾多のSSの販売量を軒並み増やしたものですから、元売会社もこぞって当社流のマーケティング、販売促進策を採用してくれたものです。

しかし、1996年3月末の「特石法」廃止後、完全自由化され、ガソリンマージンが激減しました。元売会社も運営者も、そこへ販促費を投入することができなくなってしまいました。

当社のSSもかつては、1店舗当たり500kl/月を販売していたのですが、わずか5年で見事に半減しました(グラフ1)


客数の減少は、油外販売にも大きく影響します。危機感を抱いた私は、ガソリン増販をあれこれ試みてはいました。しかし、減販傾向を止めることはできません。

これは当社の店長の評価基準が大きく影響していると考えられます。
店の四半期ごとの営業利益が、直ちに店長の月額給与号棒に反映されます。そうすると店長の関心は、短期的な利益追求が第一になります。

長期的な視野に立てば、ガソリンに時間とコストをかけ、客数を増やすことの重要性を理解してはいるものの、どうしても即効性の高い活動を優先しがちになってしまいます。

そこでこの夏、ガソリン増販費用を本社が助成すると明言しました。顧客の囲い込みの徹底度に応じ、その販促費を0%から最大80%まで助成すると約束したのです。

ガソリン増販は公共事業と同じです。私企業が期間利益を追求する一方で、誰かが長期展望に立ち、道路や学校や公園を造らなければ、社会は発展しません。

同様に、ガソリン増販すなわち客数拡大は、SSビジネスのインフラづくりです。本社の予算で地道に粘り強く推進する必要があると考えました。

元売会社の都合に任せていいのか?

ガソリン増販の基本は、30年前と変わりません。

①新規客(フリー客)を集客する。
②新規客(フリー客)を固定化する。
③固定客の流出を防止する。

ーーーかつてのガソリン大増販時代、SSはこぞって、①集客イベントを実施し、②新規客に現金会員カードを渡し、③会員にはいわゆる「モノクレ」DM(ダイレクトメール)を定期発信し、反復来店を促進したものです。

その効果はすさまじく、当時、月平均販売量100klのSSがたちどころに同200kl、同300klヘ成長したものです。集客イベントを開催したり反復来店してもらうにはお金がかかります。昔はこれを元売会社が随分と補助してくれました。どんどんエスカレートして、「モノクレ販促」と椰楡された時代もありました。

しかし、元売支援が打ち切られた途端、ガソリン販促は全国的に沈静化してしまいました。現在の顧客囲い込み策は、元売提携クレジットカードと、ポイントシステムに統合されつつあります。
ただ、これはあくまで元売会社にとっての「費用対効果の最大化」を目論むものであり、リテイラー(SS運営者)の視座ではありません。

今や元売会社の再編・統合によって、同一商圏に同じサインポール、同じポイントサービスの店があちこちにあります。セルフ給油が主体ですから、人的サービスによる差別化は難しくなってしまいました。

となると、SSは立地と設備カで戦うしかありません。すなわち資金力勝負。SS経営は、極めてつまらないものになってしまいました。

生きていた「リスト獲り神話」

当社のような中小販売店は、資金力で太刀打ちできませんから、知恵と努力で勝負したいわけです。お客様が求めるメッセージを発信したり、お客様に喜ばれるサービスを提供し続ける、その積み重ねが地域一番店への第一歩だと思います。
このためには、顧客個々の住所・氏名・電話番号だけでなく、車種、車番、初度登録、車検時期などの情報が必要です。

これら顧客情報を得るための店頭活動が「リスト獲り」です。顧客に応じたDM、LINE、電話、そして店頭での個別接客へ繋げることによって、当店への固定利用が促進されます。

したがって「リスト獲り」こそが、ガソリン増販の出発点と言えます。
さて、この「リスト獲り」の効能が、今の時代にも通用するか、実は一抹の不安がありました。30年経って人情も価値観も変わってしまったかもしれない、SSもセルフ化され、お客様との関係もドライになってしまったかもしれないと。

しかし、嬉しいことに杞憂にすぎませんでした。SSに販促助成を約束した途端、たちまち新規客(フリー客)のリスト獲得数が大きく伸びました。

      
新規客は現在も月間800件以上来店していますし(グラフ2)、これに7月から積極的にアプローチしてリストを獲得した結果、減販が止まり、増販に転じたのです(グラフ3) 。

昔も今も「リストを獲れば、ガソリンは増販する」という法則は通用します。

リスト獲得率は手順次第

新規客からリストを獲得するのは、誰でもできる仕事です。ところがその手順次第で、リスト獲得率は大きく変わります。

当社SSでは、いつの間にか過剰な景品、馬鹿丁寧な接客が当たり前になっていました。
当社の仲町台SSに配属された研修生(I君)も最初、教えられたとおりにやったところ、リスト獲得率は49%でした。

そして通常は、慣れるにつれて次第に行動手順は劣化し獲得率が下がるものなのですが、I君は違いました。「社長、シンプルにやってみたら84%獲得できましたよ」と報告してくるのです。

そのポイントを表2にまとめたので、参考にしてください。
当社もさっそく「I君方式」を標準化し、全店に落とし込もうとしているところです。

「日々是訓練」で動き出した自動車保険

さて、SSインフラの構築には、客数の拡大だけでなく、顧客の「質」の向上も重要です。そこで当社が今取り組んでいるのが「自動車保険」です。

本稿7月号でも述べましたが、優秀なSS店長(O君)を損保会社に1年間出向させ、今年4月、大きな成果を得て戻ってきました。
彼には「10年後の保険契約客数1万人」とのミッションを課しました。保険契約という、固い繋がりの顧客でSSを埋め尽くしたいとの思いがあります。

手始めに「月間100件の新規契約獲得」という目標を掲げています。
損保会社に尋ねると、SSの年間新規獲得件数のギネス記録は200件余りだそうです。

当社の目標が5店で月間100件ということは、年間1,200件、すなわち1店舗当たり年間240件です。あながち突飛な目標値ではありませんし、実現すれば、SS業界のギネスを塗り替えられます。意欲も湧きます。

まずは自動車販売時の保険契約率(付保率)を6割にしよう、と動き出しました。5店で月間70台の車を販売しているので、これだけで40件/月を契約できる計算です。

4月からO君が活動を始め、7月頃から目に見えて付保率が向上しました(グラフ4)

この9月は車を56台を売り、うち47人から保険を契約していただきました。付保率は実に84%(奇しくもI君方式のリスト獲得率と同じ)。 ただし、成約マージンは車1台当たり1万4000円ほどですから、得られる収益は「スズメの涙」。

店の優先順位を考えると低く扱われそうですが、これを10年継続することが重要なのです。まさに10年先を見据えた「公共事業」と考えなければ、なし得ない活動です。

ですから、0君は、あえて通常の販売研修のような集合研修を実施していません。各SSに連日赴き、車販担当者との「マンツーマン研修」を繰り返し実施しています。

表3は、O君がつけている個人別理解度状況です。25人の車販担当者がいますが、〇印は完了した研修、△印は研修途上のものを10段階レベルで示しています。

効率は悪いですが、理解度を確認しながら、分かるまで何度も、極めて泥臭く、熱意を込めて個人レッスンしている様子が伺えます。

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