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2019.05.01

代表コラム

油外放浪記第127回「車検もレンタカーも売れるときに売る」

燃料指数マイナス22の価格対応力

SS商売は、一般に12月に山場を迎えます。しかし、当社は3月がピークに達します。車検の最大需要期だからです。

その3月の実績を表1に示します。
燃料指数はマイナス22。
前年同月より10以上改善しました。ちなみに昨年12月はマイナス7.3でした。

5店合計の油外収益が初めて1億円を超えました。当社のギネス記録です。これまでのギネスは2年前の3月、9,157万円でしたから、1.5千万円以上の記録更新です。

一方で、燃料油はマージンが6円以上落ち込み、粗利が760万円減少しました。それでも「カエルの面に水」ー。油外収益のおかげで、営業利益は800万円以上改善しました。

当社のことを「車検屋」とか「レンタカー屋」とか椰楡する声があることは存じています。
そう、少なくとも「油屋」ではないことは確かです。20年来、当社はガソリンをフロントエンド商品(集客商品)と位置づけてきました。そして、来店されるお客様のニーズをつかむための放浪に明け暮れてきました。その結果に、私は素直に喜んでいます。 
仮に、今も燃料油に依存していたらと想像すると、ぞっとする思いです。

市況の下落が店の利益を根こそぎ削り取ります。
スタッフの残業手当の支給をストップしたり、照明を半分にしたり、色褪せたポスターを貼り替えずに我慢するなど、手を尽くしてもたぶん補いきれず、赤字に苦しんでいたことでしょう。

かつて私は、「燃料指数がマイナスになれば、どんなに楽しいだろう」「これを背景に安値合戦に乱入したら、どんなに気分がせいせいするだろう」と夢想したものです。
収益力不足、経営不振が続いて、きっと心が病んでいたのでしょう。
マイナス22の燃料指数を得た今、この「伝家の宝刀」を振りかざす気持ちは、すっかり霧消してしまいました。不思議ですね。

車検もギネス更新

前年より伸びたのは、車検とレンタカーです。
5店合計で、車検は1,291台入庫し、粗利5,000万円。レンタカーは2,591回貸し出し、2,180万円を稼ぎました。

1店当たり1日の平均的な業務量は、車検作業が8.3台、レンタカー作業が17台です。曜日や時間帯によって波はありますから、かなり多忙だったと思います。
この2品に気圧されたのか、車販は、前年比マイナス100万円でした。

3月は自動車販売の需要期でもあります。しかし、「皿回し」に例えると、我がSSは2皿までは回せるが、3皿目は、目が行き届かず落としてしまうようです。

むろん車検が不調だった時は、車販が頑張ってくれましたので、経営者としては注力すべき商品と時機を見誤らないことが大切なのでしょう。

ところで、車検は法定需要であり、その時期は車両に明記されています。そして、燃料を売る限り、その車両は必ずやってきてくれます。

しかも今では、SSに車検を任せることに偏見や抵抗感を持たないお客様が大多数です。これほど売りやすい商品はありません。
ですから、売れる時機にスタッフのベクトルを合わせれば、必ず好成績が上がるはず。
ーということで、当社は、毎年1~3月に車検キャンペーンを実施します。今年も車検キャンペーンが終了しましたので、総括します。

正月明けの1月初旬、2日間に分けてSSスタッフ全員を集め、キックオフミーティングを開催しました。
新設の堀之内店も加わり、3カ月間で入庫3,060台、粗利1.1億円という目標を掲げました。重点活動は車検だけ。

車検の皿だけは、3カ月間、一瞬たりとも目を離してはならないと決起しました。以後3カ月間、私も部長も毎日実績を確認し、激を飛ばしてきました。

その結果、表2に見る通り無事に達成することができました。
昨年は「お預け」を食らった温泉旅行でしたが、今年は、全店・全スタッフがそのご褒美を受け取ることになり、ホッとしています。

レンタカーは店長がありがたみを知れば勢いづく

一方、何のキャンペーンも販売促進策も打たずに大きく伸びたのはレンタカーです(表3)。
既存5店の3月のレンタカー粗利は2,180万円。昨年より668万円増加しました。

当社のSSは2皿しか回せないと言いました。でも、実はレンタカーは、ほぼ勝手に回ってくれるのです。人の訓練や配置、毎日の評価、モチベーションの高揚、人間関係や気配りなど、およそ店長が日がな一日悩む事柄とは、一切無関係です。

適正台数の車を配置するだけで、ただただ稼いでくれるレンタカー。そのありがたみを、ある日突然、店長たちが気づきました。
しかも仲町台店の店長は、もっと効率よく稼ぎたいと考え、検証し、他のSSに波及させてくれました。その方法論を「Nメソッド」と呼んでいますが、もう一度、「表3」を見てください。

既存5店のレンタカー収益は、前年比668万円増えました。しかるに、レンタカー台数は231台から263台へと32台しか増えていません。昨年、1台当たり66千円稼いでいたレンタカーが、今年は83千円稼ぐようになったわけです。

これは「稼がない車」を処分して「稼ぐ車」に置き換えつつあるからです。
高年式車両が比較的多くなりますので、車両の償却費は増えました。しかし、メンテナンス費が激減しましたので、レンタカー経費は台当たり3千円しか上がっていません。

つまり、レンタカー経費は全5店で170万円しか増えなかったにもかかわらず、粗利は、その4倍増えたわけです。 
売上対利益率は全店平均で59%。まだまだ改善しそうです。

新設店もレンタカーが即効果

昨年11月にオープンして以来、大赤字続きの堀之内店の話をします。
何しろ新参SSですから、地元での認知度も信頼度もないところにあって、店頭スタッフも学生アルバイトが中心です。
油外を売ろうにも商品知識も販売スキルも薄っぺらです。

こうした素人集団SSが手っ取り早く稼ぐには、そう、レンタカーしかありません。
幸い同店が立地する多摩ニュータウンは、大学生が多い町です。ちょうど3月の春休み期間が狙い目です。「よしッ、3月までにレンタカーを100台にしなさい」と店長に厳命しました。

新車なら発注するのは簡単ですが、納車に時間がかかる車が多い。そこで年末ごろから、オークション(AA)も活用し、70~100万円の中古車を調達してきました。調達した車は、1台1台整備し、ETCやカーナビを装着し、レンタカー登録を経て「商品」化します。1~2月は、整備士たちはこの業務に忙殺されました。
駐車場も借り増ししました。登録前の車を駐車場に並べていたところ、もらい事故で2台が廃車したハプニングもありました。ともあれ2月末までに100台が揃いました。

果たして3月、堀之内店はレンタカーで870万円を稼ぎました。大先輩の仲町台店の実績が910万円。堀之内店がこれに迫る勢いです。
今後はリピーターも増加するので、まだまだ売り上げは伸びるでしょう。

堀之内店が5カ月目に黒字!

その甲斐あって、3月、堀之内店は黒字となりました(表4)。
オープンから5カ月目にしての快挙です。燃料油粗利は相変わらず奮いませんが、油外粗利は1,800万円を超えました。
内訳はレンタカーが堂々の870万円、次いで、車検が560万円です。
新設店ながら、車検も頑張りました。入庫台数は174台、当然ながら、すべて新規客です。

以前にも記しましたが、新参SSでも素人アルバイトが説明しても、5割のお客様が車検を予約してくれます。堀之内店は、オープン以来、新規来店客に対して会員化と同時に、車検予約を打診してきました。これが実入庫につながったわけです。

ただ、手放しでは喜べません。黒字化したとは言うものの、レンタカーも車検も、3月バブルの瞬間値に過ぎません。
これからが正念場。堀之内店は当社の集大成を目指したSSです。安定的に利益を生み出すためには、スタッフ、商品、顧客の育成という地道なテーマの繰り返し。待ち受けるのは長い長い上り坂。気を引き締めて、一歩一歩取り組んでいこうと思います。

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