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2023.08.03

代表コラム

油外放浪記 第177回「赤字脱出するも、問題山積」

経費の伸びに販売力が追いついていない

当社のSSは、4月に51カ月ぶりの赤字を計上しましたが、5月は900万円の黒字(8店合計)となりました(表1)。

とは言え、昨年5月の営業利益は1,800万円弱でしたので、物足りません。
私は経費をコントロールするよりも、収益拡大を強く志向する経営者です。「経費」と「投資」は、ほぼ同義ととらえ、比較的、経費の投入にためらいを感じません。

「必要な経費はどんどん使いなさい。でも使った経費の2倍以上の粗利益を稼ぎなさい」と常々社員に言っております。しかし、5月の実績を見ると、経費を2,100万円増やしたにも関わらず、粗利益は1,250万円しか増えていません。
投資額の増加に販売力が追いついていないという、構造的な問題が解消せずにいます。

客数をとるか 口銭をとるか

燃料油販売量が、ほぼ前年並みに回復しました。
一時期は前年比90%にまで落ち込みましたが、市況対応(商圏内最安値に追随)を店長に厳命したため、前年比97%までお客様が戻ってきました。しかし、口銭は下がってしまいました。燃料油粗利は1,100万円にどどまり、前年より550万円マイナスです。
もしも前年の口銭7.5円/Lを死守していれば、どうなったでしょう。販売量は10%減の1,900klになるとして、燃料油粗利は1,400万円となります。前年よりマイナス250万円で済んだかもしれません。
口銭よりも販売量を優先するのは、昭和世代のアブラ屋のノスタルジーでしょうか。これが収益悪化に一役買ったかもしれず、何とも複雑な心境です。

車検快進撃も設備キャパがブレーキ

車検は前年比250台増の1,340台、粗利は1,000万円以上伸ばし、5,100万円を上げました。絶好調です。車検はレンタカーと同じく「仕組み」で売れる、ありがたい商材です。いくつかトピックスを述べます。

①CPOが改善した
2022年の初め、車検の販促費を大幅削減したところ、入庫台数が大きく前年割れしました。この反省から、今期(2022年夏~)は販売促進を大規模に展開したため、入庫台数が挽回しました。
さぞやCPO(入庫1台当たり販促費)が膨らんだかと思いきや、今年に入って落ち着いてきました(グラフ1)。
一時は15千円にまで上昇したものの、8千円前後に改善、前年を下回っています。

②GBPが改善
Googleのクチコミ評価(Google BusinesProfile) の改善に努めています。昨年4月は5点満点中3.27。今年4月は4.0を超え始めています。来期中には4.5にまで改善したいと思っています。

③車検の早期予約は工夫次第で効果あり
販促活動と並行して、店頭活動も強化しました。車検の販売担当としてのスキルと実績を維持するスタッフ(車検名人)を育成するため、昨年夏に各店とも訓練キャンペーンを実施しました。
通常は3~4カ月以内に車検満了を迎える顧客が販売対象ですが、キャンペーン期間中は大量の商談訓練をさせるため、最大1年先の車検満了客まで対象としました。

これまでも車検の早期予約を試したことは何度かあります。しかし、入庫率は芳しくありませんでした。電話してもつながらない、忘れている、結局ほとんど入庫しないので、早期予約の有効性には懐疑的でした。今回は、たとえ1年先であろうと、入庫予定日をお客様と約束するようにしました。
そして本社から毎月DM(ダイレクト・メール)を出しています。その結果がそろそろ現れ始めています(表2)。半数近くが入庫しています。予約後のフォローをもう少し強化すれば、さらに改善するに違いありません。

④車検のオーバーフローが増加
この半年間で、注文をお断りしてしまった件数が300件を超えてしまいました(表3)。入庫キャパをオーバーフローしてしまったのです。整備士は増員できますが、設備が足りません。どの店もリフトは限界まで増設しており、これが今の限界。
お客様には「売り切れ御免」、当社にとっては年間2千万円相当を放棄している状況です。

車販スキルがあるのに売らないスタッフ

当社のSSは昨年秋以降、車販の伸びが減速しています。
月500台売ることを目標に、その仕組みをつくるため順調に投資してきましたが、販売実績は200台止まり。
SSの収益性を大きく損ねる「問題児」商材となりつつあります。その大きな要因として、SSスタッフのモチベーションが低下していることを、先月号で述べました。
末端アルバイトに至るまでベクトルを合わせる必要を感じていますが、一朝一夕にできるものではありません。まずは車販担当者の一人ひとりの販売実績を、改めて調べてみました。

・・・すると、おかしなことに気づきます。以前は毎月10台以上を販売していたスタッフが、ここ1~2年、ほとんど実績を上げていない。 そういうスタッフが何人も存在します。
では、誰が販売しているのか。
入社1年程度の若手スタッフが、元気よく販売しているのです。これはどういうことでしょう。理由はすぐに判明しました。 「売っても売らなくても、給与が変わらない」からです。ベテランスタッフは一生懸命行動することがバカらしくなり、若手に押し付けていたのです。

スタッフ評価に悩まされ続けてきた

約40年前、当社は「ガソリン増販コンサルタント」として開業しました。そして、様々な販促アイデアを自らテストしてみたいという思いが次第に募り、1995年、無謀にもSSを直営する挙に出ました。以来、私はSSスタッフの評価、給与、職能制度、目標管理といった問題に、悩まされ続けています。まず思ったのは、スタッフの行動を適正に評価したいということです。
SS事業者の諸先輩やコンサルタントに教えを乞うたり、専門書を読み漁りましたが、回答が見つかりません。そこで身の程知らずにも、自カで評価基準をつくることにしました。想像以上に大変な作業でした。

半死半生の思いで1年かけて「行動対応賃金体系」なるものを作り上げました。
これは洗車販売、オイル販売、車検販売などすべての販売行動および、その作業をポイント化し、ポイントによって給与が計算されるという仕組みです。おかげで当時、業界関係者の誰もが驚く実績が出ました。
フルサービスでガソリン販売700kl、車検販売400台、油外収益3,000万円・・・。ところが「ド素人考え」はすぐに露呈します。店の清掃とか車両の回送といった、ポイントがつかない仕事が現場には山ほどあります。要領のいいスタッフは、これを心優しいスタッフに押し付けます。

不公平感が募り、モラルも低下。実に20年もの間、当社のSSは、微修正を加えながらもこの仕組みで運営されていたわけです。ようやく抜本改訂したのが5年前。
営業利益本位の評価基準に変更しました。
誤解を恐れずに言うと、「店の営業利益をみんなで山分けする」シンプルな仕組みです。しかし、ベテラン社員は今も、お金になる仕事とならない仕事を本能的に嗅ぎ分けているようです。「おいしい」ところだけを掻っ捜う習性が身についてしまったのでしょう。

人は結局お金で動くのか

過去の反省から、当社はここ数年、販売インセンティブを極力回避してきました。
しかし、優秀な販売能力があるにもかかわらず、これを使わないスタッフが生じている事態に鑑み、やむを得ず「車販インセンティブ」を設定しました。

「10台を超える成約は、1台につき1万円をそのスタッフに支給する」と。効果は歴然。
5月は260台を販売し(グラフ2)、ギネス記録を更新しました。まった<ゲンキンなものです。車販が不調だったのは、「売れない」のではなく「売っていない」だけ。「人が足りない」のではなく「人が行動していない」だけだったのです。
ただ、インセンティブは劇薬、大きな副作用を伴うことはもう分かっています。これを放置すれば、早晩、車販担当者とそれ以外のスタッフとの分断が進み、店のモラルが低下することは、火を見るより明らかです。さてどうしたものか。

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