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2023.09.06
油外放浪記 第178回「果報は寝て待っているわけにいかない」
MIC第37期が終了
6月は、当社の会計年度の期末です。いつものようにSSの実績を(表1)に示します。
第37期のフィナーレを黒字で飾ることができたのはいいですが、前年6月と比べると、営業利益は550万円下回り、6割減となりました。
油外粗利は8店合計で1億6,000万円。つまり、1店当たり2,000万円。悪くない数字に見えますが、経費が1店当たり2,200万円かかっており、6月も経費倒れ。下半期からの低調傾向にピリオドを打てないまま、第38期に突入することになりました。
ただ、いくつかの布石は打っておきました。
車販スタッフの行動は二極分化
車販の調子を取り戻すため、カンフル剤としてインセンティブを設けたことを、前回述べました。5月に続き6月も、その効果は持続しています(グラフ1) 。
しかし心配したとおり、インセンティブが効いたスタッフと、効かないスタッフに二極分化しているようです(グラフ2)。
月に15台以上成約するスタッフは1~2名だったところ、インセンティブによって7人に急増しました。4件以下しか売っていなかったスタッフ数に変化はありません。
つまり、もともとよく売っていたスタッフが奮起しただけであり、(能力があっても)行動していなかったスタッフは、インセンティブごときでは動かなかったということです。
やはり車販担当でないスタッフも含め、店ごとモチベーションが上がり、ポジティブなムードを形成する施策が必要なのでしょう。
車検目標の達成を慰労店頭販売力も強化
6月の車検入庫は1,436台。前年より200台多く、好調が続きます。
また1~3月に実施したキャンペーンも目標を大きくクリアしましたので、遅ればせながら全店全スタッフ合同の箱根温泉旅行を催しました。
コロナ禍があったため4年ぶりの実施となりましたが、大いに盛り上がりました。彼らの屈託のない笑顔を見るにつけ、来年も、再来年も、連れていきたいと強く思った次第です。
目標達成の主役となったのは、各店に配置された車検販売担当者「車検名人」です。
ネットやミラーリングなどで集客したお客様に対しては、主にコールセンターが販売しますが、ガソリンで集客したお客様には、給油中に店頭スタッフが声をかけ、対面で商談し、販売します。
訓練を受けていないスタッフや適性のないスタッフが、「当たって砕けろ」とばかりに声かけをしても、本当に砕けてしまうだけですから、当社は、所定の販売手順を踏襲し継続的に結果を出し続けるスタッフを「車検名人」として認定し、「車検名人」にしか販売させません。
昨年秋に8店で21名を認定し、この6月、新たに14名を追加認定しました。
認定に当たっては、店長が指名したスタッフに所定の研修とOJT(現場教育)を実施します。特にOJTでは、50件以上のお客様との商談を課します。そして、4割以上を成約しなければなりません。
今回の訓練生14名は見事、全員これをクリアし、「車検名人」となりました。これで今期より当社SSの車検名人は35名となりました(表2) 。
中古車レンタカーはスタッフの心を蝕む
レンタカーが堅調です。ここ何年も、落ち込み知らずで伸びています(グラフ3) 。
当社は2008年にレンタカービジネスに参入しました。しかし、2014年頃より伸びが止まってしまいました。その理由が、どうも
SSスタッフの恣意的なものであると気づいたのが2016年のこと。レンタカーの「闇」とも言うべき落とし穴が潜んでいました。
この「穴」を埋めて以降、レンタカーは再び伸び始め、右肩上がりの成長が続いています。その辺りの事情について、述べます。
最初のきっかけは、当社のSSが中古車オークション取引に関わるようになったことです。二束三文でしか取引されない、整備すれば使えるのに廃車にされてしまう、そんな中古車がたくさんあることを知りました。ならば、格安の中古車を買い、整備し、綺麗にして、半額でレンタルしてみよう、と始めたわけです。当時はリーマンショックに端を発したデフレの真っ只中。料金を相場の半額にすると、「地元の人が地元で日常的にレンタカーを利用する」という、今までなかった需要が発生しました。そして次第に、これが思いのほか大きな潜在需要をもつことが明らかになります。「ニコニコレンタカー」としてフランチャイズ・チェーン(FC)展開しましたが、どこに出店しても看板を掲げるだけでお客様が殺到。
これはSS業界にとって、久々のヒット商材だと、私も有頂天になっていました。ただし、商品は低年式の車です。
どんなに整備しても、機械ですから故障リスクはあります。でも、私はタカをくくっていました。
「どんな商売もリスクはつきもの。壊れたら直せばいい。直せなくなったら処分すればいいだけだ」と。現に当時の私のマイカーも走行20万キロを超えていました。時々調子が悪くなりますが、整備すればまた元気に走ります。何の不満もありません。私は知りませんでした。
マイカーが故障するのと、レンタカーが故障するのとでは、天と地ほど違うことを。
お客様にとって、レンタカーは移動手段、移動にともなうアトラクションの一つです。
車そのものに対しては、何の執着もありません。移動中や出先でレンタカーが壊れることは、お客様の本来の目的が果たせないことを意味します。それはもしかしたら、一生に一度のハレのイベントだったかもしれません。これを台無しにされてしまったお客様の感情に、
店はまったくの無力です。取り返しようのない事態に、ただただ平身低頭するしかありません。
こうしてSSスタッフは、徐々に精神に異常を来たします。実に8年もの間、私は彼らのストレスを、苦しみを、まったく理解していませんでした。SSスタッフという人種は、経営者に聞こえのいい発言しかしません。経営者には決して愚痴をこぽさないことを、当時の私は知りませんでした。
裸の王様よろしく、彼らは経営者に気づかれないよう、密かにレンタカーの稼働を止めたり、あわよくばレンタカー事業をフェードアウトしようと画策していたのです。
新車レンタカーに入れ替えたら、すべて解決
転機は2016年でした。
当社は車販ビジネスを強化しようと「新車リース」の分野に足を踏み入れました。そこで車の「残価」という概念を知ります。
人気の高い車ほど残価が高いので、月々のリース料が安くなるという、不思議な理屈に衝撃を受けました。そこで試しにレンタカーを新車リースで導入しました。やはり、二束三文で購入した中古車の償却費と比較すると、リース料はやや高くつきます。しかし、故障しません。事故も激減しました。
クレーム対応、事故対応、メンテナンスにかかっていたコストや時間を含めると、実質経費はほとんど変わらないのです。そして何より、SSスタッフのストレスがなくなりました。笑顔が増え、レンタカーに積極的になります。車の稼働率が増加し、1台当たり売り上げが増え、利益率が大きく改善しました。
これを受け、2017年より全店のレンタカーを新車に入れ替えました。翌2018年には1店当たり月間売り上げは300万円。停滞していた当時と比べると2.5倍増です。
そして2020年、前代未聞の新型コロナウイルスが襲来しました。主要都市で緊急事態宣言が発布され、その危機感から当社はレンタカーを大幅削減しました。しかし、ありがたいことに、SSレンタカーのメインターゲットである生活圏需要は、コロナ禍でも変わりませんでした。
コロナがほぼ収束した今、1店当たり月間売り上げは700万円になろうとしています。
レンタカーの需要増に加え、値上げ効果に期待
さて、当社が主宰するニコニコレンタカーは、今年6月、全店一斉に「値上げ」しました。車両タイプやレンタル時間にもよりますが、平均17%の値上げです。現在の当社のSSのレンタカー売り上げは、年間5.6億円です。もしも稼働率が落ちなければ、17%増の6.6億円となるかもしれません。利益が1億円増えます。
この原稿執筆時点では、値上げしてまだ2週間しか経過していませんが、今のところ全国的な稼働率は変わらず、売上・客単価ともに値上げ分がそのまま上乗せされています。明るい材料です(表3)。各種コストの上昇に苦しんだ昨期でしたが、今期はこの1億円の利益増を期待していいかもしれません。