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2024.02.13
油外放浪記 第183回「人と仕事のミスマッチを解消し本来の力を発揮させたい」
油外収益の伸びが止まった
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
コロナショックや円高、ウクライナ情勢などにより高騰したガソリン価格は、収まる気配を見せないまま2024年を迎えました。
当社のSSは、23年11月の実績が締まりました(表1)。
前年と比較すると、燃料油粗利が270万円増加したものの、油外粗利は微増、経費が960万円増加したので、営業利益は440万円下がってしまいました。
「その他油外」が670万円減少したように見えます。これは実は、昨年は新車リースのメンテナンス収益を計上するのを忘れていたため、11月にまとめて1年分1,300万円を計上したからです。
とは言え、主力商品である車検、車販、レンタカーの伸びが減速したのも否めません。
WEB中心となった車検販促だが、紙媒体も疎かにできない
車検入庫台数が、前年より1台しか伸びていません。2023年の上半期までは、前年同月比120%成長していたのですが、急ブレーキです。考えられる要因は、またもや販促費の削減です。
経緯を述べます(グラフ1)。
2022年、現場の強い意向を容認し、車検の販促費を大きく抑制しました。果たして、入庫台数があれよあれよと減少し、4月は前年比60%台にまで落ち込みました。事ここに至って、我慢できなくなりました。車検復活プロジェクトを立ち上げ、私が旗を振って先導しました。
結果、販促の霊験あらたかで、入庫台数の伸び率は120%に復活。年間入庫台数は初めて16,000台(8店合計)を超えました。
それ見たことかと、私はいささか得意げだったのですが、2023年6月の期末決算を見て驚きました。SS部門の年間営業利益が、計画値を1億円も下回っていたのです。経費を大盤振る舞いしたことが原因の一つです。
そこで2023年7月から、再び経費引き締めに転じています。すると、2カ月経った9月頃から、入庫台数の伸びがストップしてしまいました。前年割れするのも時間の問題です。
販促費の内訳を(グラフ2)に示します。インターネット広告費を1.7倍に増額した代わりに、ミラーリング費を26%カット、ポスティング費を半減しました。これによる車検受注数の変化を(グラフ3) に示します。
インターネット広告は1.5倍増、ミラーリングは10%減、ポスティングは30%減となりました。
ネット情報を見ずに、紙媒体で車検を注文する方が今も厳然として多数存在していると分かります。ポスティング頻度を月1回に戻してみようと思います。
車検客単価を上げる
さて、車検収益を増やすには、入庫台数を増やす一方で、客単価を上げるという方法があります。前者は販促費を伴いますが、後者は経費がかかりません。
当社のSSでは、車検をご注文いただいたお客様に対して、車検を実施する前に一度、ご来店していただき、車を点検し、車の状態をお客様と共有する、というプロセスを採っています。
すなわち、点検結果を報告し、必要な整備を提案し、お客様の希望を聞いて受注します。
点検結果報告の丁寧さが整備受注額を大きく左右します。つまり、報告担当者の接客力や提案力が十分に発揮されないと客単価は上がりません。
以前は、報告担当者それぞれの、1台当たり粗利獲得額を集計し、毎月開示していたのですが、ここ数年やっていなかったことに気づきました。
そこで昨年9月から開示するようにしたところ、何と2カ月間で、1台当たり4,500円整備粗利が増えました(グラフ4) 。
「なんちゃって車検予約」に陥っているかも
当社のSSでは、新規車検客の多くが、上記・販促活動によるものです。コールセンターに問い合わせがあり、コールセンターが受注します。
このやり方には弊害もあります。いつしかSSスタッフは、車検を「天から降って湧いてくるもの」と勘違いしてしまうのです。
客単価の改善が、車検1台1台の貴重さを意識するきっかけになってくれればと思います。そして店頭での車検獲得にも、より一層身を入れて活動してほしいと願います。
と言うのも、当社SSでは、車検獲得研修を経て、そのスキルを発揮し続けるスタッフを「車検名人」と認定しているからです。各店に約3名ずつ配備し、SS来店客に対する車検獲得に励んでもらっています。コールセンターとは別に、毎月300~400件の車検予約を彼らが獲得しています。
ふと気になって調べてみました。店頭で車検を予約した顧客は、ちゃんと入庫しているのだろうかと(表2) 。
何と入庫しなかった予約が、半分もあるではないですか!
かつて当社のSSは、車検の1年以上前の新規客に対して早期予約を獲得したことがありました。「次の車検は、当店でお願いします。日程はまだ決められませんよね、近くなったらまた電話をします」と提案します。
すると、ホイホイ予約が取れます。経験上、8割以上が予約してくれます。
ところがほとんど入庫しません。電話すると、多くのお客様が「覚えていない」-。 覚えていても「仮予約でしょ?」「名前を書いてくださいと言われただけだから」と、車検を申し込んだ認識がお客様にありません。
われわれはこれを「なんちゃって予約」と呼んでいます。
その反省を踏まえ、2年前、店頭受注オペレーションを再確立しました。
SS来店客のうち、アプローチ対象客は車検の2~3カ月前の顧客です。「当店の車検は最高品質です。手数料は1万円です」と説明し、注文をお願いします。
受注したら、実施日程を決めてもらいます。そして「車検の1週間前に点検させてください。整備の必要がありましたら、別途お見積もりをさせていただきます」と言って、点検日を決めます。
この手順を正しく行うと、4~5割から注文が取れます。これができる人を「車検名人」としたわけです。
・・・にもかかわらず、(表2)の結果。がっかりです。
担当者別に集計してみると、入庫率13%という猛者もいました。「予約」と言いながら、お客様と何ら約束していません。典型的な「なんちゃって予約」です。
「なんちゃって予約」は、車検を(正式に)受注していないので、キャンセルが多発します。それだけではありません。客単価も下げてしまうのです。
素直に点検に来ていただいたお客様に、整備を提案します。その金額が高くなるほど、車検そのものを注文してくれなくなります。せっかく丁寧に点検して、報告したのに、一銭もいただけません。ですから、最低限の整備しか提案しなくなってしまうのです。
表2を前にして、店長に聞いてみました。
まず入庫率が最優秀の平塚店の店長。いわく「3週間前に入庫確認の電話をしています」「前日にも再確認します」とのこと。
同様に、他の店長は「特に何もしていません。それが何か?」との認識レベルです。
「なんちゃって予約」がバレバレになってしまうのが怖いのでしょう。
もしも車検名人が受注している月間300~400件の入庫率が、現状52%のところ、70%に改善すれば、年間700台の車検を底上げできます。
というわけで、車検名人についても、各々の入庫率を開示することにしました。
車検を売る(入庫させる)のは車検名人の仕事、整備を売るのは点検結果報告担当者の仕事。
この責任を果たしているかを、数字で共有するわけです。
時給1,500円の魔力
アフターコロナで世の中は急速に人手不足となりました。当社のSSも例外ではなく、タウンワーク、バイトル、インディードに、毎月40万円をかけて募集し続けていますが、一向にアルバイトが集まりません。
最も危機的なのが新百合ヶ丘店です。川崎市の住宅地の店にもかかわらず、ここ何カ月間も応募者ゼロ。
悩んでいたところ、アメリカ系スーパーマーケットのコストコが、時給1,500円で募集し、数千人の応募が来ているという情報を得たことを、前回お伝えしました。
当店でもやってみました。店を閉めるよりはましです。時給を平日1,400円、日曜1,500円として、昨年10月17日から募集開始。
すると、1カ月間で14名の応募がありました。コストコと比較すると雲泥の差を感じますが、店長は大喜び。6名を採用しました。
これに味を占め、今年2024年からは、全店、同じ時給で募集することにしました。もちろん既存アルバイト175名の給与水準もこれに合わせます。人件費が月間190万円増加することになりますが、経費の増加分以上に稼いでくれれば、問題ありません。
朝のスポット時給を試してみる
稼ぐべき者が生産性の高い仕事に注力できない、もう一つの要因があります。
レンタカーの仕事が集中する朝と夜です。
たとえば当社の仲町台店では、朝7~10時のレンタカー出発業務が、平日で20件程度、土・日曜は40~50件あります。夜は帰着したレンタカーの洗車清掃業務が、17時頃から断続的に22時まで集中します。いずれもアルバイトだけで運用できる単純業務です。
夜のアルバイトシフトは比較的簡単ですが、朝のシフト希望者がなかなか定着しません。そういうわけで、有能な社員が、朝のレンタカー業務にかまけてしまっているのが実情です。
本来、車販を担当すべき社員が、朝7時前に出勤し、レンタカーの出発を担当しているのです。10時を過ぎると手持ち無沙汰となります。なぜなら、車を購入したいお客様は、夕方から夜にかけて来店を希望されるケースが多いからです。しかし7時に出勤した社員は、16時に退社します。本人は仕事をした気分でしょうが、本来の業務をほとんどしていません。
そこで、7~10時のアルバイト時給を、2,000円にしてみました。どんな成果が現れるか、楽しみです。
アルバイトを充実させることは、車販担当者、車検名人、点検結果報告担当者の「適材適所」を最適化し、言い訳の余地をなくすための必要条件です。経費削減で失った油外収益を、SS内部の力で挽回したいと考えます。