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2024.02.14
油外放浪記 第184回「油外伸長の阻害要因をひも解く」
油外の伸びに手詰まり感
今回はまず、昨年7~11月の当社のSS実績を振り返ります(表1)。
5カ月間の営業利益は1億7,000万円弱。前年比で4,000万円上回り、計画値に対しても1,300万円の差をつけてクリアしました。
ただし、内容はあまりよくありません。車検と車販は、前年実績をクリアしましたが計画には及ばず、油外粗利は対計画5,000万円のマイナスです。
ところが何と、燃料油がこれをカバーしてくれました。口銭が好調に推移したためです。
経費は、前号で述べたとおり慎重に管理してきたため、計画内で収めることができました。ただし、経費増を油外粗利増に反映できていないのは事実で、手詰まり感を否めません。
12月も不調
そう感じながら、昨年12月の実績がまとまりました(表2)。
営業利益が前年より半減、1,000万円も落としてしまいました。
経費は順調に700万円増加しましたが、油外粗利は350万円しか増えませんでした。おまけに燃料油の口銭が3円下がってしまい、粗利が600万円下落。もしもこのペースが今後も続くようなら、11月までに積み上げた利益など、すぐに消し飛んでしまうでしょう。
この不穏な兆候に、お正月も心穏やかではいられませんでした。
燃料油口銭の気まぐれっぷりは、今に始まったことではありません。それ以上に気になるのが、油外収益の伸びが鈍化していることです。
特に車検やレンタカーは、通信販売ができません。地域密着型サービスであるが故に、販売数量の限界に近づいているのではないかと考えてしまいます。
設備キャパが車検を制限
まずは車検。
商圏需要の限界よりも、処理能力、すなわち設備の限界が来ています。当社が運営するSSは、運営継承後にリフト設備を増強しました。しかし、敷地面積の制約がある以上、どの店もこれ以上増設できません。
かつて仲町台店をセルフ化したとき、建屋を3階建てにし、リフトを10基設置しようと本気で計画したことがあります。しかし用途地域の問題で、あえなく断念。
唯一、敷地面積を拡大できたのが平塚SSです。運営継承した時、前面道路の向かいに競合SSがありました。お互い張り合っていたのですが、2013年に競合店は撤退。そこでこれを居抜きで借り受け、リフト2基を新規増設しました。
それまでリフト1基で月50~60台の車検を受注していたSSです。1基では足りず、ジャッキを持ち込んでSSフィールド上で点検整備することも日常茶飯事。しかし、リフトが3基になった今では、月150台以上を受注しています(グラフ1)。しかしもう限界です。
余談ですが、同店は2015年、隣接する200坪の農地を借り受けることもできました。当社初の「中古車展示販売場」の誕生です。これによって同店の車販台数は飛躍的に伸びたわけですが、販売車の増加がリフト活用枠をさらに圧迫するようになったことも付け加えておきます。
いずれにせよ、通常のSS敷地にリフトを設置するには、2基が限界でしょう。そしてリフト2基のSSでは、指定工場資格を取得したとして、車検入庫は最大200台が限界だと思われます。土・日曜・祝日を中心に「予約いっぱいでお受けできません」という事態が生じてき
ます。
表3は、当社のコールセンターで「車検をお願いしたい」と電話を受けながら、お断りしてしまった件数です。
打開策は、SS店舗数を拡大することです。しかし脱炭素時代への潮流を鑑みると、投資回収が不安です。
あるいは、給油設備のない整備工場を単独で開設するのはどうでしょうか。ガソリンという武器を捨てた店に、果たして顧客は来てくれるでしょうか。あるいはこちらから引取納車サービスを提供したとして、そのコストを顧客は支払ってくれるでしょうか。
いまだ逡巡しています。
SSレンタカーで新規需要を掘り起こすべきか
次にレンタカーです。
レンタカーは車検と異なり、車が公道を走行して稼ぐ商売ですので、設備の制限はありません。顧客が必要とする車両台数をラインナップするだけです。
車両も、駐車場も、SSの外部からいくらでも調達できます。
たとえば、店の足元商圏に3万世帯があれば、月間500万円以上のSSレンタカー需要があることが分かっています。
さらに、駅前や観光立地の店なら、地元客だけでなく遠方客も取り込むことができます。
そして当社の店は、どうやらこの市場の飽和点に達したと思われます。増車しても商品力や利便性を強化しても、以前ほど伸びなくなりました。昨年12月はレンタカー経費(主に車両原価)を前年比1,400万円増額したにもかかわらず、売り上げは1,300万円しか伸びませんでした。
そこで思い至るのは「一般貸し」以外のレンタカー需要--たとえば損保代車やインバウンド需要への展開です。
そして当社は、SSとは別に、これを実験的に推進して、成果を出している店を運営しています。
JR新横浜駅の駅前と、北海道や九州の空港前に出店している「レンタカー専業」7店です。SS兼業のレンタカー店とは収支構造がまるで異なります。(表4)をご覧ください。
専業店は、人件費や店舗設備費が丸まるかかります。この膨大な固定費を賄うには「一般貸し」だけでは足りません。損保代車やインバウンドに取り組まざるを得なかったという事情があります。
生半可な努力ではレンタカー専業店は成立しない
2010年、JR新横浜駅の新幹線ホームの真正面にある古びたビルの、「テナント募集」の告知を目にしました。このビルの壁面に大看板を掲示したい、ついでにレンタカー専業業態を実験してみたい。
そういう思いから、ビルの5階を借りて受付カウンターと事務所を置き、近隣に発着場、駐車場、洗車場を借りてスタートしたのが、新横浜駅店です。
立地の良さから毎月1,000万円以上を稼ぎます。ニコニコレンタカー全1,500店中、ナンバーワンの売り上げを誇る店ですが、実は毎月500万円以上の赤字を計上していました。
これを打開すべく、保険会社に対して営業活動を始めます。
車両保険には「代車特約」というオプションがあります。事故によって損傷した車両を、保険を使って修理する期間中、保険会社が代車を提供するという契約です。
保険会社は、その代車をレンタカー店から手配します。そしてレンタカー店は、保険契約客の希望する場所に車を届けます。
幸いにも当社は、当時年間5,000台の車検を実施していました。自賠責保険の取扱量が大きいので、その影響力を利用させていただき、新参者にもかかわらず、大量の代車をご用命いただけるようになりました。
(その後、同店のレンタカー駐車場は、300台を収容できる1箇所に集約することができ、その敷地内にプレハブ店舗や洗車場を設置し、現在に至っています)
福岡空港店も見てみましょう。
空港前に周転する数多のレンタカー店とシノギを削る激戦立地です。比較的都市部に近い空港なので「一般貸し」も期待できますが、やはり空港利用客がメインターゲットとなります。
特にインバウンド客(外国人旅行者)を集客するために、海外の旅行会社に営業したり、国内では楽天トラベルなどのOTA(オンライン旅行代理サービス)を活用しています。
ところがコロナの影響をモロに受けました。2年間の開店休業状態を経て、昨年頃から回復しています。
なお、福岡は当社のSSの商圏ではありません。つまり、自賠責保険取扱量の威光が効きません。そこで損保会社が指定するカーディーラーからレンタカーを大量購入するなど、互恵関係を構築する努力も行っています。
SSレンタカーの優位性
こう考えると専業店は、人件費や店舗費を賄うために、かなり無理をしていることが分かります。
同じ努力をSS兼業でやるのは、果たして得策でしょうか?
損保代車はどうでしょう。当社の自賠責保険取扱量の威光は、新横浜駅店で使い尽くしていますので、これ以上の拡大は困難が予想されます。
インバウンドについても、当社のSSは住宅地や郊外立地なので、販促活動に見合う集客は期待できそうにありません。
あるいは、大手レンタカー会社のように、地域の法人需要を取り込む方法もあります。ただし、その営業活動は手数と値引き合戦であり、SS業とは馴染まないでしょう。
・・・というわけで、SS兼業店は自然体で集客できる「一般貸し」に注力すべきだというのが、目下の結論です。
当社のSSは現在、すでに年間6億円のレンタカー収益を得ています(8店合計)。そして兼業だからこそ、この5割が営業利益となっています。
この利益率の高さ、すなわち損益分岐点の低さが、SSレンタカービジネスを「格安」とならしめます。この「格安」が「一般貸し」ニーズに響いており、大量の集客と安定利益を約束してくれています。この事実に、まずは満足しようと思います。
車販はいまだ限界知らず
今回は、当社のSSの車検の限界、レンタカーの限界について考察してきました。しかし経営者としては、業績頭打ちの状態を容認することはできません。
当社が今後伸ばせる余地がある油外商品は、「車販」しかないと結論づけています。もちろん「その他油外」にカテゴライズしている洗車、鈑金、軽整備も無視できませんが、生産性を考えると優先順位は低いと考えます。
昨年はビッグモーター騒動やダイハツの不正で、自動車業界に対する消費者の信用が大きく揺らぎました。しかし車の保有や利用は、もはや生活の一部であり、そのニーズは人間の本能です。決して縮小することはないでしょう。
販売方法も「グーネット」や「カーセンサー」によるネット集客、そしてEメールやLINE商談が主流です。したがって、店舗設備に制限されることはありません。商圏範囲もかなり広域で柔軟です。
今年の3月は、販売台数300台突破を目指します。