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2024.07.02

代表コラム

油外放浪記 第188回「SS社員の年収を上場企業並みに!」

4月も営業利益が積み上がった

当社のSSの重点油外商品は、車検・車販・レンタカーです。

この3品の需要期は3月に重なりますが、4月はその反動で落ち込みます。このため4月の収支は、昨年は赤字でした。今年はどうでしょう。

前年同月と比べ、粗利益が3,500万円増えました。経費は1,500万円しか増えなかったため、営業利益は約2,000万円増の1,450万円(8店合計・表1)。

しっかり利益貢献した月となりました。油外商品だけでなく、燃料油も450万円増加。利益貢献に一役買いました。

経費管理の精度が向上

今期は経費の抑制が効いており、利益の上がりやすい体質になったと思います。
グラフ1に示す通り、前期は平気で予算を1,000万円以上もオーバーし続けていたのですが、今期は予算意識が高く、経費の効果を確認・修正していることが伺えます。

事実、月1回だった店長会議を、今期から週1回のペースでオンライン開催するようにしました。本部が毎週細かくチェックし、、指示を出し、現場がこれを即実行し、毎週報告しています。
なお、今期1月以降の予算超過は、アルバイト時給を大幅に見直したためです。詳しくは先月号の本稿をご参照ください。

車検はキャンペーン失敗が尾を引く

今期の車検キャンペーン(1~3月)は、目標未達で終わりました。続く4月も、前年より103台少ない1,083台。キャンペーン報奨(今年も箱根温泉旅行)がお預けとなった責任を、車検販売担当者たちが背負う格好となり、モチベーションも下がったでしょうか。
ただし車検の1台当たり粗利益は、39千円から41千円に上がりました。

当社のSSは、車検は1万円で販売しますが、販売したお客様から整備を受注することによって、客単価を上げます。車両の点検結果を、いかにお客様と共有するかがポイントです。これは車検販売担当者とは別に、点検結果報告の担当者が行います。
客単価アップもキャンペーン目標の一つでしたが、4月になってさらに上がってきました。有利な車検ローンの取り扱いをしたことも一因でしょう。

年間自動車販売目標6,000台が見えてきた

車販は3月にキャンペーン目標400台を達成したことで、意気が上がりました。4月は小売りで45台増加の248台、業販で37台増加の51台、合計299台を販売しました。粗利益もプラス2,200万円の7,450万円。絶好調です。
特に業販は、この1年で3.6倍に成長。次第に要領が分かってきました。

当社はオートオークション(AA)から毎月300台の中古車を仕入れ、架装し写真撮影しています。多額のインフラ投資をし、専任部門を精鋭化してきました。
架装した車両は、売れ筋分析に従って各店に振り分け、グーネットやカーセンサーに掲載します。すると、エンドユーザーから電子メールなどで問い合わせがきます。ここからがSSの出番です。車販担当者がご来店日時を約束し、現車を見てもらって商談します。これが「小売り」の流れです。

一方、架装した車両は、ほぼ同時に「エーエスネット(オートサーバー社)」にも掲載します。
全国の中古車販売店がこれを見ます。商品車としてすぐ販売できる中古車が、安く大量にラィンナップされ、写真も詳細が伝わりやすく、AAの出品票に記載されない情報も明らかです。手間暇かけられない業者が買い求めてくれます。これが「業販」です。
エーエスネットの会員数は7万7,000社あるそうですが、このほど当社は「5つ星」の格付けをいただきました。「5つ星」は20社ほどだそうです。業販にいっそうの拍車がかかると期待しています。

当社にとって、業販が不可欠となった経緯を申し上げます。
時は2020年に遡ります。コロナ禍で世の中が大騒ぎした年です。当社は6箇所のSSを運営し、自動車販売台数は年間1,000台くらいでした。
「仮に、1店当たり月に30台を販売したとして、年間360台。そういう店を15店展開すれば5,400台」という皮算用をしました。「よしっ、年間6,000台を販売するまで出店数を増やそう」と決め、行動を開始しました。

その矢先です。同年10月、当時の菅首相が「カーボンニュートラル宣言」をしました。
自動車業界全体がザワついたのは記憶に新しいですが、私の頭の中にも警告音が嗚り響きました。「EVしか売れない時代が来るなら、車の流通構造が大きく変化するに違いない、このまま出店計画を進めるのは危険だ、座礁資産を抱え、途方に暮れる」と青ざめました。
すでに2店の新規出店に手をつけていましたが、ここで打ち止め。「2025年度までに8店で、年間6,000台を販売しよう」と方針を大転換しました。

というわけで、小売りだけでなく業販チャネルの開拓に注力しています。販売粗利は低いですが、今のところ1人で対応できているので、生産性は十分。

当社の今期(2023年度/第38期) の年間車販台数は、3,600台となる見通しです。そこで来期(2024年度/第39期) の販売目標は5,000台を考えています。これがクリアできれば、2025年度目標6,000台は、目の前です。

意地でもSS社員を、人並み以上に遇したい

さて、唐突ですが40年前の話をします。
私は大学卒業後、マーケティング会社に勤務しました。会社から命じられた担当が石油業界でした。
その後、コンサルタントとして独立しましたが、なまじ石油業界を齧ってきたので、SSのマーケティングに特化しました。そしてあろうことか、SS運営にまで手を出しました。

特石法の廃止(1996年)や車検の解禁(1995年)、SSのセルフ化解禁(1998年)といった激動の時代を経て、あれよあれよという間に、300人の社員の生活や人生に影響を及ぼす立場となってしまいました。

どうしてこうなったのかと首を捻ることしばしばですが、会社を設立して38年、一貫して追求してきたことがあります。
「社員にできるだけ多くの給与を支払いたい」
ひょんなことからSS業界にズッポリはまった当社ですが、私の夢やわがままに、身を挺して付き合ってくれている彼・彼女らに報いたい。私が意地になってSS事業の収益最大化に取り組んでいる本音です。

ところがSSは、高給を支払うのがなかなか難しい業態です。
「エッセンシャルワーク」と言われますが、人が人に、手づからサービスを提供する業態です。給油、洗車、通検といった 付加価値の低い(誰でもできる)仕事を薄利で提供する、肉体労働です。

SS従事者の平均年収を調べてみました。352万円。
サラリーマンの平均年収414万円と比べると、15%低い。上場企業の平均年収620万円と比べると、半分。
大手石油元売会社の平均年収は1,000万円を超えると聞きますが、雲泥の差です。
片や寒暖風雨にさらされ、1日2万歩を走り回り、早朝・深夜勤務も当たり前の労働環境。
片やエアコン完備の屋内で9~17時勤務、土・日休み。
ここまで差があるのは絶対におかしい。いつかは上場企業並みの年収を支払ってやる。そう決意したのが10年前(2014年)です。

年俸1,000万円店長を輩出すれば、店が変わる

身の丈知らずが格好つけて何を言うか、と思われるかもしれません。
2014年当時、当社のSSは赤字でしたが、まずは店長の給与を底上げすることから始めました。
SSは「店長産業」と言われるくらい、店長の力量が店の収支を左右します。店の収支が良くならなければ、一般社員の給与水準も上げられません。

2014年まで、当社は外部の人事コンサルタントの指導にしたがった賃金体系を運用していました。SSの実績をSABCDの5段階に評価し、四半期ごとに給与が変動するという「成果対応賃金」です。
S評価の店長は、月給が3万円アップ。S評価が続くと、1年後には月給が12万円アップ、3年後には36万円アップとなります。逆に、D評価の店長は3万円ずつダウンします。やる気があれば、どこまでも給与が上がる。油断すれば下がる。素人目には、当然の評価だと思えました。

ところが、この賃金体系がスタートして1年後、ある店長から辞表が出されました。「給与が下がりすぎて生活できません」とのこと。びっくりして給与明細を確認すると、月給が10万円下がっていました。
減給され続けて泣き言一つ言わなかった店長も店長ですが、十分に予想できたはずなのに、他のプロジェクトにかまけ、生活できなくなるレベルになるまで気づかなかった社長も社長です。
先の賃金体系はすぐに破り捨て、新たな店長評価を独自に作りました。

まず店長の最低年収を「450万円保証」と定めました。
店の年間営業利益が2,500万円を超えた分の20%程度を成果給としました。たとえば年間営業利益が5,000万円の店の店長の年俸は、450万円+((5,000万円ー2,500万円)x20%)=約1,000万円。営業利益1億円の店なら2,000万円となります。
上限はありません。青天井です。

グラフ2は、1店当たり年間営業利益の推移です。店舗数が5店から8店に増え、店長も増えましたが、新体系にして以降、SSが黒字化し、2020年には平均で5,000万円を超えました。
ちょうどレンタカーや自動車販売といった高生産性商材のイノベーションが重なったこともあり、年間利益1億円の店が実現したことも、嬉しく思います。
さぁ、次は一般社員の賃金体系です。世間並みの定期昇給でお茶を濁してきました。SSの生産性関連指標を見てみましょう(表2) 。

前期までの4年間の変化は、粗利が1.7倍、社員数は1.6倍、その人件費も1.6倍。事業規模は確実に拡大しています。
新人の構成比が高まり、生産性(1時間当たり粗利益)は1.0倍と横ばいです。
平均年収は580万円。上場企業の620万円に少し近づいていますが、まだ足りません。
今期(2023年度)はまだ締まっていませんが、平均年収を何とか上げたいと思っています。

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