インフォメーション

INFORMATION

  1. INFORMATION
  2. 油外放浪記 第190回「車検は昔も今も「金のなる木」」

2024.09.24

代表コラム

油外放浪記 第190回「車検は昔も今も「金のなる木」」

当社の第38期が終了

当社MICは、この6月、会計年度の第38期を無事に終えました。
38年前に脱サラして創業した当時は、目の前の仕事に専心していましたから、まさかこんなに長い間、石油業界にどっぷり浸かっているとは、想像だにしませんでした。
「近い将来、石油製品はなくなるぞっ」と、絶えず脅されてきたように感じます。しかし、石油は一向に枯渇する気配がありません。

昨今はカーボンニュートラルが叫ばれ大騒ぎしましたが、ここに来て、再生可能エネルギーやEV(電動車)への急激な転換に対する疑問符もまた表面化しています。
政府やマスコミの論調に、ハラハラドキドキしてきた38年間でした。おそらくこれからも、時代は二転三転しながら進むのでしょう。

売れない6月も順調に推移した

当社の直営SSの6月の業績を(表1)に示します。

営業利益は8店合計で650万円。
燃料油はほぼ前年並みですが、油外粗利が前年より1,700万円増加し、1.86億円を得ました。8店中6店が、6月の最高額を更新してくれました。
経費が1,200万円しか増加しませんでしたので、営業利益は前年同月より400万円改善しました。

当社のSSの油外重点商品は、車検、車販、レンタカーです。6月はこの3品とも需要が落ち込む月ではありますが、車検が400万円、車販が700万円、レンタカーが300万円伸びました。足を引っ張る商品がなかったのも、幸いしました。

期末に有給休暇が集中し販売力が低下

車販は業販が伸びました。前年比7倍の販売台数です。
一方、小売りが足踏みした一因として、労働基準法の改定が考えられます。
2019年4月より、すべての企業は、年10日以上の有休を付与する労働者に対し、年5日以上の有給取得が義務付けられました。取得させない会社には、罰金が科せられます。

当社も法令順守に努めていますが、SS現場はなかなか徹底できません。総務部が強く指導し続け、3年かけてようやく数字上はクリアしました。しかし実態は、アンバランスな有給取得になっています。

年度末の6月になって、慌てた店長が、無理やりスタッフを休ませるのです。ですからここ数年、6月は販売スタッフが足りず、業績が落ち込むのが通例になってしまいました(グラフ1)。

それが顕著に現れるのが、自動車の小売です。
ちなみにレンタカーや自動車業販は、ほぼ仕組みで稼ぐので、影響はありません。

車検客単価向上策で月400万円

最近の傾向として車検の1台当たり粗利が、4万円台に高止まりしています。
6月は1,443台の車検を実施し、粗利が5,800万円。つまり1台当たり4万円。
昨年6月は1,436台で5,400万円ですから、1台当たり3万7,500円。

つまり入庫台数が横ばいにもかかわらず、客単価が2,500円改善し、車検収益が400万円良化しました。
この水準が続けば、年間5千万円の粗利増となります。おろそかにできません。
当社のSSが販売する車検商品は、手数料が1万円。これに整備などの追加注文をいただくことによって、客単価が上がります。

当社の採った施策は以下の4つです。

(1)商品単価の見直し
ガソリンの販売価格は毎日のように見直しますが、自動車部品やパーツも、ときどき競合店の販売価格を調べ見直します。

(2)主要アイテムはデフォルト提案
車検を受注した車両は、車検を実施する1週間ほど前に点検し、必要な整備を提案します。このとき、定期交換の可能性の高い商品は、提案漏れを防ぐため、必ず整備提案書(見積もり書)に表記するようデフォルト設定しています。

(3)車検ローンの取り扱い
提案した整備の優先順位や金額をもとに、お客様は注文する商品を選びます。ローン支払いを希望されたお客様からは「あと1品」の注文が取りやすくなりました。

(4)整備販売担当者の実績開示
点検結果を報告する担当者の整備受注実績をランキングし、全店に開示しています。

車販の「種まき」が完了した

これまで当社のSSの営業利益のピークは、コロナ直前の2019年度(第34期)。1店当たり月間平均350万円でした(グラフ2)。

以後3年連続して減り続けておりました。粗利(主に油外粗利) は、月230万円ペースで伸び続けましたが、それでも経費の増加に追いつきません。
しかし、昨期2023年度にようやく反転しました。先行投資が一段落。油外粗利の伸びは止まりません。したがって、営業利益がかなり回復しました。商品別に見てみましょう(グラフ3)。

車検はコロナ前と比較すると、1店当たり月30台増えました。粗利は550万円から720万円へと、170万円増加しています。当社では車検は長らく油外のエースでした。レンタカーは堅調です。コロナの影響は最小限で止まり、すぐに回復しました。

続いて車販です。コロナ前の月間販売台数は12台でしたが、4年後の昨期は38台となりました。伸び率3倍以上。収益面でもレンタカーを抜き、次いで車検をかわし、油外トップに躍り出ました。

その背景には、中古車を大量に仕入れ、架装し、ネット掲載するための設備と人を先行投資したことがあります。
種まきの時期は苦しみましたが、見事、たわわに実りました。業販の窓口となる「オートサーバー」からも、五つ星認定されました。来期からは本格的に収穫できそうです。そういうわけで、来期(2024年度)の営業利益は、1店当たり月間460万円、年間5,500万円が見えてきました。
「社員1人当たり年収600万円超え」を念願としてきましたが、いよいよ近づいてきたと感じます(注:国内上場企業3,800社の平均年間給与額は638万円/帝国データバンク2022年調べ)。

車検制度は今後も続く

このように記すと、車検はもはや陳腐化した、成長の止まった商品に見えます。
昔からある商品です。SS業界にとっては1995年の道路運送車両法の改正が、最初の変革でした。同じ年に開業した当社の第1号店「仲町台SS」は、いち早く車検を商品メニューに加え、その生産性に驚きました。以後一貫して、油外商品の柱に据えてきました。

何しろ、顧客ニーズが車両のフロントガラスに貼ってあります。顧客は先延ばしにできない、必ず買わなければいけない唯一の商品です。
こんなに売りやすい商品はないと確信し、その販売について日々研究を重ねてきた結果、コバックや速太郎といった量販専門店に、一歩もひけをとらない販売実績を維持してきました。

そこに水を差したのが、2022年10月の政府による「カーボンニュートラル宣言」です。私は慌てました。ガソリンエンジン車がEVにとって代わってしまうのはともかく、果たして、車検制度は存続するのかと。そこで国会議員を通じて、国交省、経産省のしかるべき役人との面会をとりつけ、国の考えを直接聞く機会を得ました。
ご安心ください。日本政府は、車検制度を廃止・縮小する意思も計画もありません。

私の迷いは吹っ切れました。たとえガソリン車が売れない時代になっても、車検市場は厳然として残る。ならば当社のSSは、車検を主軸とした販売姿勢により一層傾注していく。そう社内に明示しました。

車検を笑うものは車検に泣く

ところがこの方針発表を嘲笑うがごとく、2021年度から車検台数が前年割れする月が目立って増えました。
2022年1~3月に実施したキャンペーンは大幅に目標未達。前代未聞の事態です。続く4月は前年比64%と、落胆に追い討ちをかける惨憺ぶり。

理由は明らかです。突如沸き起こった車販バブルに、店長はじめSS全体が踊ってしまったのです。
コロナ禍で不要になったレンタカーを、グーネットに掲載してみたら、あっという間に売れました。これを契機に、中古車の仕入れ、架装、ネット掲載、SSへの配送を一手に引き受ける社内組織をつくりました。するとSSには日々購入希望のメールや電話が入ります。

日々在庫車を目当てに来店し、購入契約するお客様が現れます。1台売れれば15~20万円。車検よりもはるかに高い生産性、はるかに簡単な販売手順。SSの優先順位が車販ファーストになるのは、火を見るより明らかです。車検は隅っこに追いやられ、未熟なスタッフに押しつけられます。

この状況を見て私は、強い危機感を抱きました。
車検の将来性は国が約束してくれました。しかし、今の自動車販売マーケットが将来も続くとは誰も保証していません。このままでは当社の車検販売体制が脆弱化してしまい、車販も時代の変化についていけなければ、SSは油外の二大柱を失ってしまいます。平均年収600万円どころか、全員が路頭に迷うことになるかもしれません。

やむを得ません。車販の流れを止めずに車検を復興できるのは、経営者しかいません。
SSとは別のプロジェクトチームをつくり、私がリーダーとなりました。名付けて「ルネッサンス車検プロジェクト」。販売力が未熟なスタッフを育成し、少数で最高のパフォーマンスが発揮できる仕組みをつくります。さらにはWebによる告知やコンバージョン率の強化、商圏内ミラーリングの強化、コールセンターの強化、リピート率の改善。これらを全社横断的に推進しました。

その結果、2022年度、23年度と増加に転じることに成功しました(グラフ4)。

本プロジェクトはこれにて終了。車検は昔も今も、高い収益が得られ、かつ顧客との永続的な関係構築の入り口となる、極めて重要な戦略商材です。
当社の目下の課題は、設備キャパシティーの不足による入庫台数の頭打ちです。客単価向上による収益アップは、その解決策の一つです。

MENU