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2024.10.04

代表コラム

油外放浪記 第192回「油外は一日にしてならず」

8月商戦を振り返る

8月が終わりました。当社のSSは大きな事故もなく、熱中症で倒れる人もなく、無事、酷暑を乗り切りました。
油外収益は8店合計で、前年を1,800万円上回りました。しかし燃料油が1,300万円減少し、経費が1,600万円増加したため、営業利益は1,100万円減少しました(表1)。

一喜一憂してはいけないと分かっていますが、ついつい燃料油販売量の伸び縮みに目がいってしまいます。7月に5%落ち込みましたが、8月は前年並みに戻したことに、顔が綻んでしまいます。

販促担当者が市況対応を徹底し、LINE販促にエネルギーを注ぎました。もしかしたら南海トラフ地震への警戒感から満タン給油が促進されたかもしれません。

SSレンタカーは8月がスプリングボード

1年で最もレンタカーが稼ぐのが、8月です。
下旬に大型台風10号が日本列島を直撃し、長く居座りました。幸い関東圏に届くことなく雲散しましたが、当社の店でも、かなりのキャンセルが発生しました。それでも結果は上々。
前年比900万円増加し、8店で8,800万円。もちろん当社のギネス記録です。

各店の内訳を(表2)に示します。新百合ヶ丘店がしっかり増車し、トップに躍り出ました。
ただ、SSレンタカービジネスの本当の楽しみは、実は9月以降です。

一般的なレンタカー店、すなわち駅前や観光地の店は、シーズンが過ぎると売り上げが元に戻ってしまいます。しかし、SSレンタカーの多くは地域密着ビジネスです。8月に新規客を獲得した店ほどリピーターが累積し、秋冬の月間売り上げは1店当たり100万円単位で上昇します。

つまり8月までに増車したり、商品力や営業体制を強化した店とそうでない店とでは、年間数千万円の差がつくことになります。
当社の8月実績に戻ります。車検と車販が伸び悩みました。「車」が稼ぐレンタカーとは違い、車検や車販は「生もの」である「人」が稼ぎます。
確かに暑かったし、集中できなかったろう、夏休みもとったろう、台風で商談も延期になったろう。目標未達を各スタッフが意識し、秋から奮起してくれることを願い、とりあえず厳しい追求はしていません。

生産性に注目していく

当社ではこの7月から、SS別の生産性を毎週確認しています。「油外粗利÷投入時間」すなわち「人時油外収益」を、当社では生産性指標としています。燃料油は人の投入とは無関係に上がり下がりしますので、含めていません。
表3に当社のSSの7月と8月の生産性を示します。

油外粗利は前年を上回り、計画値にも絡んでいます。しかし投入時間が7月で5,000時間、8月で7,000時間も計画をオーバーしました。
まだ店長の頭には「労働時間のマネジメント」の概念がない様子です。あと何ヵ月かすれば、共通認識となるでしょう。生産性こそが、スタッフの年収アップの源となります。

SS経営29年にして、基幹商材3品が育ってきた

当社のSSの営業利益は8月は5,000万円(1店当たり625万円)となりました。営業利益の原点は、何といっても油外収益です。しかし油外が SS収益の柱として確立するには、相当の時間を要することも事実です。

当社が最初にオープンしたのが仲町台店。1995年、29年前です。多くの元売マークが乱立し、ガソリン安売り合戦、SSの潰し合いの真っ只中にあって、油外販売こそがSSの競争力だと言われました。
当社としても、TBAはもとより、洗車、コーティング、鈑金塗装、窒素ガス、カーディテーリングなどなど、随分精力を注ぎ込みました。しかし残念ながら、これらは結果につながっていません。

失敗を重ねるうち、SSが取り組むべき油外商材の選択基準が分かってきました。

(1)大きな需要が、通年安定して見込まれること
(2)競合企業と競って、勝ち目があること
(3)SSが取り扱うことに、顧客が違和感を持たないこと

その結果、当社では車検、車販、レンタカーが大きく成長したわけです(グラフ1)。

もちろんこれらの商材とて、簡単に伸びたわけではありません。

【洗車】・・・開所した当初は、洗車、オイル、車検を「油外3本柱」と位置づけました。しかしオイルは芽が出ず、車検の付帯アイテムに格下げ。洗車(コーティング含む)は相当頑張りましたが、生産性の低さから次第に凋落。セルフ給油になってからは、声かけもしなくなりました。

【車検】・・・車検も開所と同時に取り扱いを開始しました。競合は整備工場です。SSで取り扱うには、当時の価格体系があまりに不透明でしたので、「ユーザー車検、基本料9800円」としました。
折込広告で訴求したところ、バカウケしました。仲町台1店で、月間416台入庫。この記録はいまだ破られていません。その後、紆余曲折しました。商品力や商圏内販促を強化し、店には車番認識システムを、社内にはコールセンター組織を設置するなどして、安定収益源となりました。

【車販】・・・2004年にオートオークション落札代行に取り組みました。これもすったもんだ苦労しました。実に15年もの間低迷しますが、あきらめきれません。2016年、新車リースに参入してみたところ、平均200万円の商材となりました。そして、コロナ禍を経て中古車の現車販売体制を作った結果、大ブレイクしました。

【レンタカー】・・・2008年スタート。中古車レンタカーというコンセプトが時代の波に乗りました。しかし2015年頃に頭打ちとなります。試しに新車に入れ替えてみたところ、売上急増の兆しが見えてきました。この方法論を確立したことにより収益4倍増。

自動車保険は電話で売る

こうして見ると、基幹商材を育成するには10年単位の時間がかかります。長期戦を戦う覚悟が必要です。
たとえば自動車保険。獲得粗利が低いので優先順位が低いと思っていたのですが、ストックビジネスと捉えると、いつかはSSの基幹ビジネスとしていきたい。そう考え、2016年、私は「10年以内に保険契約1万件」という目標を社内に宣言しました。1万件になれば、安定的に1.5億円の手数料収入が上乗せされます。さらには保険客の鈑金、車検、自動車買い替えといった需要も取り込める、との目論見です。

「毎月100件10年間」を合言葉に、まずはSSから最も優秀な店長を引き抜き、保険会社に出向してもらいました。待つこと1年、ピカピカの保険マネージャーとなって帰ってきました。
彼を中心に保険推進チームを編成。ほどなく「保険販売担当者を、各SSに、5名ずつ育成しよう」と行動開始。

車検客と車販客がターゲットです。商談をしてみると、車検客はなかなか手強いのですが、車販客に正しくアプローチすれば、5割が成約すると判明。
ところが6店30名を育成しても、成約件数は月間30~40件止まり。100件には遠く及びません。車販の成約と同時に保険をすすめることが、現実的に困難であると分かりました。
件のチームは解散し、今度は保険会社から出向してもらって、作戦を練り直します。

試しにSSから車販客のデータを入手し、保険事務の担当者にトーク原稿を渡して電話してもらいました。対応力の乏しい棒読みにもかかわらず、何と半数が保険契約してくれたのです。2カ月目には100件成約しました。

「これだ!保険はリモートセールスだ!」と分かったので、その部隊を本社内に編成しました。試行錯誤した結果、車検客からも保険獲得できるようになってきました。今や月間250件(年間3,000件)の獲得ぺースです(グラフ2)。

「保険契約1万件」の宣言をして8年が経ちます。これまで累計4,600件を獲得しました。残り2年で5,400件、不可能ではなくなってきました。

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