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2024.12.27
油外放浪記 第193回「油外販売に「人」が介在する複雑さと、どう向き合うか」
油外収益の月間ギネス 24カ月連続更新中
今年も残暑厳しい9月でしたが、彼岸を過ぎて急に秋らしくなってきました。
当社のSSは、8店で4,200万円の営業利益となりました(表1) 。この夏を無事に乗り切ったスタッフたちに感謝です。
前年同月と比較すると、油外粗利は2,800万円増えましたが、燃料油粗利が900万円減少し、経費は1,000万円増加。・・・というわけで、営業利益は900万円伸びました。
燃料油の低迷を尻目に、袖外粗利は2022年10月以来、連続して前年同月を平均2,000万円オーバーしています(グラフ1)。
当社が注力する油外商品は車検、車販、レンタカーです。9月はバランスよく伸びました。
車検の獲得は3チャネル
9月の車検入庫は1466台でした。獲得方法は、次の3つです。ここ数年の、チャネル別車検獲得台数を(グラフ2)に示します。
➊店頭活動
給油客にアプローチして車検を予約してもらうという、SS車検の伝統的な獲得方法です。
当社のSSでは、車検満了の近い車両の来店を車番認識システムが検知し、スタッフが商談しています。
正しく行動すれば、リピーターなら9割、新規客なら4割以上が注文してくれます。が、この方法は人的活動の「塊」です。
SSスタッフは、お客様から頼まれた仕事(受動的行動)は喜んで一生懸命やります。しかし、頼まれもしない仕事(能動的行動)は、マネジメントの手綱を緩めると、たちまち落ち込んでしまいます。
2023年度の入庫台数が前年割れしたのは、まさに店頭での能動的行動が失速したからです。あらためて人の育成、管理、評価基準を立て直したことにより、復旧しました。
➋CC(コールセンター)
折り込み広告、ポスティング、ミラーリングでSS商圏内に告知すると、コールセンターに電話がかかります。当店で車検を注文する前提での問い合わせですから、訓練されたスタッフが誠実に対応すると、電話で受注できます。
これは仕組みで獲得できる車検です。コールセンター部門長が受電数や受注率などを正確に把握し管理する限り、安定しています。
「チラシ」という紙媒体の威力は決して衰えていません。
➌WEB
ネット検索してホームページを見ていただいたお客様からも、メールや電話で問合せがあります。その存在感が着実に増していると感じます。
3年前の受注件数は、全体の2割に届きませんでした。今は3割になろうとしています。これはマーケットの変化、すなわちスマホの普及率などと関係していると思います。
車検の客単価アップで効果14億円
各チャネルの担当組織が奮闘している一方で、お断りしてしまっているケースも増えています。これはSSの設備不足によるものです。
車検需要期である3月や週末は、早くに作業枠が埋まってしまいます。お客様が希望してもお受けできないケースが目立って増えました。
当社の8店中6店は、普通のSSを運営継承した店です。可能な限りリフトも増設しましたが、足りません。
設備キャパシティの壁にぶち当たっているところです。
この悩ましい問題をいったん棚に上げ、客単価をもう一段上げようと取り組んでいます(グラフ3)。
今年度の車検1台当たり粗利は41,000円です。4年前と比べ、8,500円上昇しました。入庫台数の限界が年間1万7,000台とすれば、客単価の改善だけで年間14億円以上の増収となります。
当社は、車検を1万円で販売します。そして受注後、日を改めて車を点検させていただいています。しっかり点検し、その結果について時間をかけて分かりやすく説明し、車の状態をお客様と共有することが重要です。こうして整備や快適性を高める商品を注文していただくことにより、客単価を高めています。
台数アップには販促費がかかりますが、客単価アップには経賀がかかりません。点検結果の報告手順を訓練し、個人別に獲得粗利を公開したことによって、スキルが底上げされました。
ただ、これとて、青天井に増やせるものではありません。
やりすぎると、先ごろ問題となった同業者と同じような行動に走るーお客様を騙して過剰な整備を売りつけることは、絶対にあってはなりません
自動車小売が失速 業販は堅調
次は車販です。9月の粗利は7,600万円でした。前年より1,000万円以上の改善です。業販が24台から63台へと大躍進しました。
一方、自動車小売台数は244台と前年並みです。その推移を(グラフ4)に示します。
今年の4月まで、前年実績を大きく伸ばしておりました。伸び率は平均130%、絶好調だったのです。しかし5月以降、急プレーキがかかりました。
理由は明らかです。車販担当者個人へのインセンティブを中止したのです。車販業績を伸ばすため、カンフル剤として昨年から実施していました。効果テキメンですが、もともと爆弾を抱えた方法論だとは、分かっていました。
特定の個人にインセンティブを支給することは、
店全体のモチベーションの低下を招きます。果たして、看過できない不協和音が生じました。
インセンティブは直ちに中止、途端に業績が伸びなくなった、というわけです。
これが人的販売の難しさでしょう。スタッフのスキルアップを図ると同時に、店長のリーダーシップ、管理能力を強化することが不可欠です。
ちなみに、業販は「仕組み」で取り引きが成立します。インセンティブなどなくとも、安定的に伸長しています(グラフ5)。
「エーエスネット(オートサーバ社)」で5つ星に格付けしていただいたことも効いています。
古くて新しい労働投入時間の管理
グラフ1に見るとおり、油外粗利が年々伸びているのは結構なことですが、当社は、この7月から「人時油外粗利」という指標にも注目していることを、先月号で述べました。
人時油外粗利とは、「油外粗利÷労働投入時間」すなわち、「1時間当たり油外生産性」を意味します。
これまで店長たちには、主に「油外粗利」「経費総額」、そして「営業利益」を数字で捉えるよう、口を酸っぱく言い続けてきました。
したがって、この3つの指標には、それなりに敏感です。ところが「労働投入時間」に関しては、ほぼ無関心でした。
思い起こせば、30年以上前、SS業務の大半がフルサービス給油と洗車だった頃は、元売会社からも必要な労働投入時間を算出しマネジメントする重要性が説かれたものです。
ところが、給油も洗車も機械任せとなり油外販売が主業務となった現在のSSは、それこそ「能動的行動」が不可欠です。「労働投入時間」を読むことが難しくなり、死語となった感さえあります。
しかし、スタッフの給与の原資は付加価値です。これをいかに効率的に上げるかは、昇給や賞与に直結します。そこで今期から、労働投入時間にも神経を使おう、ということにしました。
9月の人時油外粗利は、計画9.2千円に対し、実績は6.6千円でした(表2)。
うーん、まだまだです。
ちなみに、レンタカーはかなりの精度で労働投入時間を読むことができます。販売活動はネット任せなので、朝の出発の受付と、夜に帰着した車両の洗車が主業務となります。
これらはアルバイトだけで運用できます。しかも出発時のレンタカー契約や支払いも、かなりネット任せになってきました。レンタカー保有台数によって、朝・夜に配備すべき人員数を、ある程度読むことが可能です。