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2025.01.07

代表コラム

油外放浪記 第195回「SSの年間利益5000万円のリアル」

24年11月は1店当たり営業利益430万円

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
当社の会計年度は、現在「第39期」です。世に「企業の寿命は30年」と言われますが、おかげさまで、今年7月から、節目の「第40期」に突入します。

SS運営を始めたのは1995年(30年前)です。当時は、まさにSS業界大激動の真っ只中でした。特石法の廃止(1996) 、SS車検の解禁(1995) 、セルフ給油の解禁(1998) 、そして元売会社の大編成。
「油外で食べていけるSS」を目指し、そこで働くスタッフの社会的地位の向上を真剣に考え、たどり着いた結論が「1店当たり年間営業利益5,000万円以上」のSSづくりです。

その後もコロナの襲来(2020)、政府によるカーボンニュートラル宣言(2020) など想定外の事態が発生するたび、決意が揺らぎがちでしたが、ふと順調に推移していることに気づきました。24年11月の当社のSSの営業利益は、8店合計で3,450万円(表1)。

1店当たり430万円となります。単純に12倍すると、年間5,160万円。
車検も車販もレンタカーも、特に売れる月ではない、普通の月で年間5,000万円レベルをクリアしたことになります。なんだ、実現したじゃないかと小躍りしました。

読者の皆様はもとより、地場の中小企業経営者様にとって、日本のSSに潜在するポテンシャルの一端を、もしもお感じいただけたとしたら、この上ない喜びです。

レンタカーが最も手堅く伸びる

レンタカーが前年比1,000万円伸び、5,500万円の収益を得ました。SSレンタカービジネスは、固定客が積み重なるため、オフシーズンでも安定的に成長します。

顧客の利便性も高めました。
コロナをきっかけに、「労働時間短縮」の時流もあって、各店とも営業時間を短縮していましたが、レンタカー業務の集中する朝/晩のアルバイト確保がうまくいったため、元に戻しました。
それからETCカードの貸し出しサービスを始めました。顧客アンケートでは、以前からご要望がちらほらありました。試しにやってみると、6%程度のお客様が希望され、1店当たり月7万円程度の手数料収入が上乗せされました。

2024年のレンタカー売上は、8店合計で6.6億円です。SS別に見ると、3店が年間売上1億円を超えています。

レンタカー年商1億円プロジェクトが始まった

当社が主宰するニコニコレンタカーFC(フランチャイズ・チェーン)でも、1年間の指導を受けたあと、独自の努力で年商1億円の大台を超えた店が数店存在します。そして、こうした先行事例を受け、レンタカーの可能性に気づき出した企業様から「うちの店も1億円にしたい」とご要請をいただくようになりました。

そこで、昨年夏から新たなプロジェクトがスタートしました。3~5年以内に保有台数を100台とし、「年間売上1憶円以上、営業利益4,000万円以上」が安定的に上がる店を、FC本部とともに作り上げましょう、という計画です。
当面の目標は100店ですが、インストラクターのキャパシティに限りがあるため、初年度のスタートは20店で締め切らせていただきました。順番待ちが発生している状況です。

この15年来、本稿でも「レンタカーがSSを救う」と口を酸っぱくして言い続けてきました。ようやくこの認識を共有できるSS事業者様の輪が広がりつつあります。

中古車の仕入れ機能が付加価値を生む

次に、今や筆頭油外として定着した車販について、見てみましょう。
24年11月は800万円伸び7,200万円。油外粗利の35%を占めます。一見快調に見えます。しかし「小売」が振るいません。昨年5月に車販担当者に対する個人インセンティブを廃止して以来、横ばい、もしくは前年割れが続いています。中古車相場の高騰により販売難易度が高まったこともあります。

そして、比較的優秀な車販担当者(月間販売5台以上)の退職が続出しています(グラフ1) 。

この5年間で16名が優秀車販担当に育ち11名が退職したので、正味5名しか増えていません。年を越してもこの突破口を見出せず、店長も私も苦慮しています。

一方、業販が著しく伸びています。前年比は台数2.5倍、粗利4倍。
小売用の商品車をAA(オートオークション)から大量に仕入れるため、当社はその機能を強化してきました。1台を落札するには、およそ50台のAA出品車両をピックアップし、下見し、入札しています。つまり、売れ筋で品質の高い中古車を適正価格で大量に仕入れるには「人海戦術」の側面があります。

しかし、その手間暇をかけることができない中古車販売店や輸出業者は、当社が仕入れた車を求めます。これが業販です。AAの価格高騰、玉不足がこれに拍車をかけているでしょう。当社も仕入れ担当者の人員強化が必要になってきました。

ネット販売なくして油外は成り立たなくなってきた

次は車検です。
24年11月は1,357台入庫し、5,650万円の粗利を得ました。1台当たり41千円。
気になるのは、店頭販売が減少していることです(グラフ2)。

webや商圏告知による販売(コールセンターが受注)の実績はむしろ上がっていますので、商品力が低下しているとは考えにくい。やはり SSの販売力が低下しているのでしょう。車検販売スタッフの育成、配備、行動量、販売手順、このあたりに課題がありそうです。 やれやれ、この賽の河原の石積みのごとき苦行!これも経営者の仕事です。

ところで車検販売チャネルのうち、Webが半数以上を占めるようになってきました。気になって、日本人がwebメディアに触れる時間を調べてみました(グラフ3)。

奇しくも50%。20~30代に限れば、圧倒多数です。
なるほど、思えば車検だけではありません。
レンタカーの予約チャネルも、同様に変化しています。15年前は電話(コールセンター)による予約が圧倒的でした。しかし今、電話予約はわずか3%。代わってアプリ予約が50%、一般的なブラウザによるネット予約が34%となっています。

極めつきは車販です。給油客や車検客に小売りするのは、せいぜい1割程度。9割がWeb(グーネットやカーセンサー)で集客したお客様です。そして、業販は、WEB(エーエスネット)から100%の注文が来ます。

隔世の感がありますね。私はすでに(グラフ3) の調査対象からも外れた70代。時代の変化に目が回る思いです。

旗艦店の牙城に迫る新進気鋭店

さて、11月実績の話に戻りましょう。
当社の旗艦店は、第一号店である仲町台店です。30年間、私の「油外放浪」癖に付き合ってもらってきた実験店ですが、常に当社のトップを走ってきました。

今日の三大油外商品(車検、車販、レンタカー)は、すべて仲町台店から取り組みが始まりました。SSの優位性を生かした車検獲得方法が確立したのも、レンタカーの売上と生産性を飛躍的に伸ばす方法を発見したのも、仲町台店です。
コロナ禍で閑古鳥が鳴いたレンタカー専業店の余剰人員を集め、中古車販売支援部隊を結成したのも、仲町台店の会議室を仮設事務所としてスタートしました。

30年間で当社のSS数は8店に増えました。すべて仲町台店を金太郎飴のように模倣することから始めています。
年間営業利益が初めて5,000万円を超えたのも仲町台店(2021年度)。翌2022年度には、2店がこれに続き、仲町台店は1億円を超えました。このように、SS事業全体を牽引してきた仲町台店ですが、トップの座を脅かす店が出てきました。

新百合ヶ丘店です。11月は何と、仲町台店を凌ぐ営業利益を出しました(表2、グラフ4)。

当社で最新参の店です。神奈川県川崎市の住宅地に立地するSSで、2021年2月に運営を引き継ぎました。
ちょっと不思議なSSです。東京都から多摩川を越えて伸びる、通行量の多い道路沿いで、同時6台のセルフ給油設備を有します。4年間、LINE販促 をやってきましたが、燃料油販売量がほとんど伸びません。

・・・にもかかわらず、車検入庫は発足初年度から1,500台。指定整備工場を併設します。そろそろリピート車検客が加わり始めていますが、まだ入庫台数は、仲町台店に及びません。

自動車小売は年間240台です。仲町台店はその2倍近くを売っており、やはり「一日の長」があるようです。

ところがレンタカーの商圏規模は、新百合ヶ丘店の方が仲町台店の2倍あります。2024年は1.7億円を売上げました。まだまだ伸び代がありそうで す。

そして新百合ヶ丘店には、仲町台店で取り扱っていない、鈑金塗装があります。
運営継承した時から工場が併設されていました。しかも運営継承前からの固定客もついています。11月はこの大きなアドバンテージを発揮し600万円の鈑金塗装収益を上げました。

さあ、尻に火がついた仲町台店。このまま捲られてしまうのか、はたまた旗艦店としてのプライドにかけ、意地でもトップを死守するか。経営者としては、期待を込めて「どっちも頑張れ」です。

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