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2019.09.12
油外放浪記第131回「当社の車検、車販、レンタカーの遍歴」
堀之内店はまだヨチヨチ歩き
当社の堀之内店(東京都八王子市)は、昨年11月にオープンした新設SSです。
以来8カ月間、「新生児」並みに集中治療室で手厚く保護してきましたが、7月からは、いよいよ一人前のSSとして扱うことになりました。が、いきなり300万円の赤字を出しました(表1) 。
マーケットに恵まれた立地です。年間1億円の営業利益を目標に掲げ、設計段階から店づくりをしてきました。特に車検は、月間300台の車両を入庫可能な設備とし、指定工場資格も大急ぎで取得しました。初戦から助っ人外人選手並みの活躍を期待していたのですが、あえなく凡退です。
表1は、既存5店と堀之内店の車検実績の比較です。
燃料油販売量は2倍近くの開きがあります。これは客数の差です。もしも既存店と同様、kl当たり0.5台の車検を獲得していれば、堀之内店は100台以上、上乗せされたはずです。少なくとも赤字は免れたでしょう。
車検実績に差がついたのは、店頭活動を見ると明らかです。
「B2捕捉率」とは、来店する車検対象客に対し、何割が受注したか表すものです。既存店は27%ですが、堀之内店はわずか8.5%とお粗末です。
これはどういうことでしょう。
堀之内店には、リピーターがいないハンデがあります。しかしオープン以来、新規客には当店の車検を説明し、「次回の車検はぜひ当店で」と予約を獲ってきました。その成約率は当初5割くらいでしたが、最近は8割くらいに高まっています。そして、8カ月間で累計4,000件くらいの予約を獲れました。すなわち、月間平均130台の入庫見込みがすでにあるのです。
そしていざ、車検の時期が近づいたお客様が来店すると、車番認識システムが教えてくれます。予約をいただいたお客様かどうかも、教えてくれます。
あとはお客様と話し、入庫の日程を決めるだけです。
しかるに、車番認識システムが知らせてくれても、ちゃんと対応していないことが判明しました。せっかく当店で予約してくれたお客様が、車検の時期に来店してくれたのに、スタッフがフォローしていない。お客様は肩透かしを食らいます。
コールセンターも全力でカバーしていますが、限度があります。結局、お客様は「まあいいか、ディーラーの営業マンが熱心なので、今回もディーラーに頼もう」となります。
またしてもSSに立ちはだかる「人」の問題です。頭数が足りていない、訓練されていない、管理されていない、モチベーションが足りない…。
「宝の持ち腐れ」とはこのことです。独り立ちしたとは言え、堀之内店は、まだよちよち歩き。ハラハラしながら見守りたいと思います。
ガソリン増販は小休止か
既存店の7月実績に目を移します(表2)。
目下、既存5店のメインテーマの一つは客数の拡大、すなわち燃料油の増販です。
熱を入れて、リスト獲りやLINEの友達募集をやっています。最近は毎月103~105%の伸び率で推移していたのですが、7月は前年並みでした。ちょっとがっかりです。
今年の7月といえば、遅い梅雨明けでした。九州地区のような大雨浸水や停電被害はなかったものの、関東も記録的な雨天続きでした。その影響がガソリンの売れ行きに及んだのかもしれません。
燃料油口銭は下がり始めています。燃料油粗利は、前年同月比300万円減少しました。
これを油外増収と経費削減でカバーすることができたので、営業利益は300万円伸びました。そこに堀之内店の赤字300万円が加わります。結局、お店が増えて、営業利益は前年並みでした。
いい話もあります。
女性店長へ代わった寒川店の月別営業利益のギネス記録は、昨年12月から8カ月間連続で更新されました。
車販も伸び悩み
車販収益の伸びが止まっているのも、気になります。
新商品「新車リース」を投入して以来、車販は伸び続け、1店当たり月間平均300万円に達しました(グラフ1)。
おかげで5店ともに油外粗利で総経費を賄う、いわゆる「燃料指数マイナスSS」「燃料油収益に左右されない経営体質」となりました。
貢献度の高い車販ですが、昨年度はやや下降に転じました。
当社の悲願は、1店当たり月販20台です。もしも毎月20台を販売すれば、8年間で約2,000台。SS利用客の半数を当店で販売した車両で占めるようになります。
どうやら、現状の延長線上では月販20台に到達しそうもありません。ここにきて、またしても五里霧中です。
「知恵が出なれば汗を出す」というわけで、年末までに各店2回ずつ、店頭キャンペーンを実施することにしました。
来店するお客様1人ひとりと対面して「新車リース」をご説明させていただき、いつか車を買い替える時、その選択肢に当店を加えていただこうというわけです。
さっそく順次キャンペーンが始まりました。連日猛暑の中、SSスタッフには体当たり活動を強いています。私も注意深く見守り、「車販の壁」を突破する糸口を見つけたいと考えています。
車検販売は3通り
「販促費をかける」「人手をかける」「どちらもかけない」
一方で、車検は順調に伸びています(グラフ2) 。
需要の「当たり年」「ハズレ年」はありますが、当社SSでは不動のナンバーワン商品です。
昔懐かしいSS指標「L当たり粗利」を算出すると、車検だけで20円を超えます(表3) 。
ガソリン(5.7円/L)の4倍を稼ぎます。
もしSS利用客すべての車検需要を獲得すれば、計算上、車検台数はkl当たり0.5台です。当店はすでに0.6台に達しました。このうち、来店客から0.4台を獲得し、商圏内需要から0.2台を獲得していると見ています。
これが法定需要商品の売りやすさです。お客様は2年ごとに必ず買います。いつ買うかも、ひと目で分かります。ですから、商品力を高め、「声かけ」のタイミングを誤らなければ、多くのお客様はその店で注文してくれます。
つまり、SSほど車検を売りやすいポジションはないと断言できます。
販促コストの面から、当社の車検販売を振り返ります。
車検が解禁された1995年、当社も取り組み始めました。最初は右も左も分かりませんでしたから、近所のコバック店を参考に、折り込み広告やミラーリングをやってみました。
いわゆる「①商圏内新規獲得」から、当社は車検販売に取り組んだのです。
なるほど、たくさんの車検を取れました。しかし、販促費がかかります。25年来、この販促費のかけ方を随分と研究し、ネット広告なども加えました。それでもいまだ、CPO(受注1件当たりの販促費)は5,000円を切ることができません。
販促費のかからない車検販売もやってみようと、「②SS店頭販売」にも取り組みました。
顧客接点の多いSS業態の強みを発揮しようというわけです。
販売手順を何度も試行錯誤し、ブラッシュアップしてきました。SSのセルフ化に伴い、車検タイミングのお客様を見つける仕事も機械化しました(車番認識システム)。しかし、結局は人的販売活動ですから、その訓練や管理には、底なし沼のように手間と時間がかかります。販促費はかかりませんが、極めて厄介な販売方法と言えます。
そしてここ数年、当社は「③リピーター確保」に取り組んでいます。
これは販促費も「人」の問題もほとんどありません。2年前に車検実績があれば、効果を出せます。
当社の車検客のリピート率の推移を(グラフ3)に示します。
2013年当時、リピート率は31%でした。
そんなものかと思っていましたが、整備業界の人に聞いてびっくりしました。並みの指定工場で60%、優秀店だと80%を超えると言うのです。彼らには、②がありませんから③に命を懸けます。③で不足した分を、①で補っているわけです。
下手に、②を持ってしまった我々SSは、③がおろそかになりがちです。しかし、最大の費用対効果を安定的に生み出す③が欠如したままでは、その店に未来はありません。
仮に、リピート率が30%上昇すれば、当店の車検の入庫は年間3,000台増えます。
というわけで、日本中を巡り、教えを請いました。そしてSSに現実的な方法を次々と投入してきました。
●車検実施後の顧客に対する調子伺いや、ガソリン価格の優遇
●車検完了時に2年後の車検を予約していただく
ーなどです。
2017年にはコールセンターのプロをスカウトし、電話の数・質ともに飛躍的に改善しました。おかげで、ジワジワとリピート率は向上し、最新実績は58%。ようやく並みの整備工場レベルになりました当面の目標は65%です。あと3~4年で到達できるでしょうか。
楽に儲かるレンタカー
車販がもたつく間に、これをかわして油外第2位に躍り出ようとしているのがレンタカーです。
もともと2008年の夏、当社の仲町台店で代車に使っていた車、下取りした車、不良在庫車などから10台を「わ」ナンバー登録し、車検のチラシの片隅に告知してみたところ、あれよあれよとレンタル予約が埋まったのが始まりです。
試しに20台、さらに50台へと増やしても、予約で満杯になります。他の直営店で展開しても同様です。
そこで「ニコニコレンタカー」フランチャイズチェーンを立ち上げ、各地の加盟店でやっていただきました。すると、全店で車両台数と売り上げが完全に比例しました。
さらに最近、レンタカーの商品力(車種、構成比、年式など)を工夫すれば、投入台数(=経費)以上に売り上げが伸びることが分かってきました。
レンタカー経費のほとんどは、車両償却費、税金・保険、駐車場代です。事業収支がはっきり出ます。
表4は、ここ5年間の当社SSのレンタカー収支です。
たった5店で、年間1億円の利益を叩き出すようになりました。
営業利益率は50%、つまり投資効率200%。設備投資は車両です。自動車は中古市場が確立していますから、いつでも換金できます。万が一、過剰投資してもリスクはありません。そして何より、人間力がかかりません。販促費もかかりません。
こんないい商売はないと私は心から思い、本連載でも言い続けてきました。
にもかかわらず、「ニコニコレンタカー」FC1500店舗のうち9割がマーケットに見合うだけの車両台数を用意せず、くすぶっています。
新規出店したいと希望される事業者は相変わらずいますが、「儲からなかった」と撤退するお店もあります。
他の油外商品と比べると、はるかに楽々と儲かるのに、なぜ車両投資しないのか。SS事業者はスタッフに楽に儲けさせるより、苦しんで稼がせたいのだろうか。ボーっと生きてて、チコちゃんに叱られっぱなしの私には、計り知れない理由があるに違いありません。
ふと今般、レンタカーの事業展開を阻害する意外な要因に気づきました。市場環境や経費の問題ではなく、どうやらお店の内部に阻害要因がありそうだと思い至ったのです。
次号で、その謎を解いてみたいと思います。