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増田信夫の油外放浪記  人材獲得競争に勝つ条件とは

SS業は捨てたものじゃない

当社は6月が決算で、第31期が終了しました。SS部門の営業利益は5店で1億3千万円となり、当社のギネスを更新できました(グラフ1)


私がSS運営を手がけてから22年、SS部門が年間通じて1度も赤字を出さなかったのは初の快挙です。







ガソリン輸入の自由化以降、世間からも同業者からさえも「SSダメだ、斜陽ビジネスだ」と言われ続けてきましたが、まともなビジネスにしたいという一心でやってきました。5店で2億5千万円の営業利益を上げてやるぞッ、と決めたのが2年前のこと。目標に向かって、まずまず順調に推移していると感じます。

ここで一つ訂正してお詫びすることがあります。本稿6月号で、当社仲町台店の年間営業利益が5,000万円に到達しそうだと大見得を切りました。4月時点で4,080万円だったのです。しかし、勝負は下駄を履くまでわかりません。

6月期末では4,530万円に終わってしまいました。大口を叩いてすみません。
ともあれ、SSの業績好調に気を良くしていたら、新規出店の話が舞い込んできました。折しも店長ポストを増やしたいと考えていた矢先です。郊外立地で600坪、土地建物合わせて月400万円のリース料です。高額物件ではありますが、慎重に商圏を調査し試算してみると、開所3年目に年間1億円以上の利益が見込めます。

しかし不思議です。
SSでさえ経営が成り立つこれほどの優良物件に、借り手がつかないなんて。聞くと、どの業界も「賃料が高すぎる」と敬遠しているとのこと。

 

私はSSしか知らない「井の中の蛙」ですが、これを機にロードサイドビジネスの収益実態を調べてみました。

表1は、PHP研究所の発表するデータをまとめたものです。すべての店が網羅されているわけではありませんが、把握できる範囲で1店当たり営業利益をランキングしてみました(売上げや経費構成は省略)。

第1位はニトリ、そしてドン・キホーテが続きます。

隣の芝生は青く見えるものですが、順に見ていくと、有名チェーン店が、どこもつましい経営努力をしていることが窺えます。

試しに、当社SSの平均値をあてはめてみると第7位にランクされます。案外検討しています。

「SSで働いている」ことを何となく引け目に感じていたスタッフたちも、これを見て、「店舗面積あたり利益なら上位企業にも負けてない」と大喜びです。

いずれにせよ、新設案件は目下交渉中で、まだどうなるか分かりません。




まずはSSの呪縛から解き放たれよ

この6月、SS経営者向けのセミナーを開催しました。
その資料準備のため、一般的なSSの販売実績を知りたいと思い、当社とお取引きいただいている76社からご協力いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

その平均データがグラフ2です。当社SSと比較しています。燃料油販売量はほぼ同じですが、燃料油粗利では、当社は辛酸をなめている部類に入るでしょう。

         

洗車、オイル、TBAは互角です。

車検、レンタカー、車販では当社SSが大きく差をつけました。その分、人件費も販促費も多く使っています。しかし、営業利益は5倍以上の差が生じました。同じSSなのに、力点を変えるだけでこうも違うものかと思います。

多くのSSが、生産性の高い商品をあえて無視しているように感じます。ああ、もったいない。

あたかも「既成概念」という大きな岩の塊が「伸びる芽」を押さえつけている感じです(グラフ3)

邪魔な岩は打破しなければいけません。SSも商売ですから「収益の最大化」が第一目的であるはず。そのためにはSSの持てる資源、競合、マーケットの最適な組み合わせを求めることが「一丁目一番地」のはず。そういう思いで講演させていただいた次第です(今秋にアンコール開催します)。


 

生産性を求めよ。さらば人材が与えられん。

既成概念を取り払って、虚心坦懐に考えるためのチェックリストを作ってみました(表2)


どんな商品がSSに向いているか、適合度を評価したものです。やはり車検、レンタカー、そして、個人向けオートリースが群を抜いて高いという結論になります。

洗車やオイルといった従来型商品は、販売生産性の低さ、市場規模の小ささが大きなマイナスポイントです。小さなパイを巡って不毛な戦いに人材を消耗させるばかりです。

特に昨今の人材不足事情にあって、優位な給与条件を提示するためには、生産性の高い仕事を与える必要があります。

たとえばオイル交換のレバーレートは5,000円くらいでしょう(表3)

月間180時間勤務のうち実務に投入できるのは最大で8割、140時間くらいでしょう。

これをオイル交換の販売・作業に投入したとして70万円しか稼ぎません。労働分配率を高めの40%として月給は28万円弱。これでは他業界に負けてしまいます。

当社は横浜の地にあって、求人競争は激しい方だと思いますが、月給50万円も提示すれば、そこそこ優秀な中核整備士を採用できます。車検のレバーレートは1万円くらいですから、月間の稼ぎは140万円。つまり労働分配率は35%、健全経営です。

最もSSに適合度が高いのは「個人向けオートリース」です。レバーレートは35,000円以上。しかも未経験者が大活躍できる商品です。ということは素養の高い元気な若者を好待遇で採用できます。

SSは「小売り業」というよりは、ますます「サービス業」の側面が強くなっています。ですから、人の確保は生命線。そのためにはまず給与水準を定めてみてはどうでしょう。そうすれば、必要な付加価値、取り扱うべき商品が見えて来ます。

拙速すぎて大失敗

説教臭くなりました。かく言う私も実は失敗の連続です。
グラフ4は、当社の車検台数の推移です。今年は年初から好調ですが、やや雲行きが怪しくなってきました。前年並みに戻っているのです。

車検には「当たり年」「ハズレ年」といった需要の波があるので、一概には判断できませんが。車検の販売ターゲットは新規客とリピーターに大別できます。「新規客を獲得しリピーターを積み上げる」ことがすべての商売の王道ですが、リピート率には悩んできました。SS業界共通の性が起因しているかもしれません。

グラフ5は当社SSの車検リピート率の推移です。恥ずかしい数字ですが、昨年からコールセンターの改善に着手したのが少しは効いているでしょうか。

さらに拍車をかけるため、車検客への特別サービスを始めてみました。というのも、当社の車検工場の道路を挟んだ隣地にコンビニがあり、これが撤退すると聞くや、二つ返事で借りてしまったからです。

敷地150坪、地代は月80万円、そこに4,000万円を投資してリフト3基を有する整備工場を作りました。車検の作業キャパを増やそうとの魂胆ですが、指定工場として認可されるまで約1年かかります。

それまで遊ばせておくのはもったいない。ならば、当店に車検をご用命いただいて18カ月経過したお客様に対し、オイル交換や定期点検を無料サービスしてはどうか。

専門アドバイスもしよう。お客様に喜んでいただき、半年後の車検も予約していただこう。ダイレクトメールとコールセンターからお誘いすれば、5割は来ていただけるのではないか、という目論見です。

5月中旬から始めてみました。
結果は表4の通り。愕然とします。ご来店いただいたのはわずか7%!

車検の18カ月後に突然案内しても、お客様にとっては「藪から棒」すぎたでしょうか。
それにしても7%ではリピート率の底上げにまったく寄与しません。単なる「タダ働き」です。

そればかりではありません。
店長には鈑金工場の工場長を兼務させましたが、鈑金工場とは2km離れているため、どちらも中途半端な管理監督となり鈑金工場の方もガタガタ。メカニックは、隣の車検工場から調達しましたが、そのせいで車検エ場にしわ寄せがいき、深夜残業を余儀なくされ大迷惑。

しかも車検工場のメカニックは接客経験がありません。無理やりサービスさせたため、無料なのに顧客満足も今ひとつ。
「兵は拙速を尊ぶ」と言いますが、あまりにも現場を無視し人の確保育成をせず、「泥縄式」に突っ走ってしまいました。社内からは非難轟々、活動は中止、私は反省また反省する毎日です。

 


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