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増田信夫の油外放浪記  SSレンタカーが陥った落とし穴

夏商戦、雨続きでも絶好調

当社のSSが好調です。
今年は毎月営業利益のギネスを更新し続けています。7月の営業利益は全5店で1,660万円。
実に7年ぶりの記録更新です。8月は昨年1,070万円の快挙でしたが、今年は1,530万円と、あっさり記録を塗り替えました(表1)

今年の夏、関東は記録的な雨天の連続でしたが、「洗車」に頼らない営業体制を築いてきた当社SSは影響を受けずにすみました。

表1で示した、ここ3年間の8月の営業実績の変化を見てください。
粗利が5,000万円から8,000万円へ3,000万円増えました。経費は1,000万円増加したので、営業利益は1,800万円の増加です。

商品別に見てみます。
まず燃料油粗利が伸びたのはありがたいことです。2年前の8月は5店で120万円と「お駄賃」商売でした。しかし今年は、石油元売の再編効果のためか、650万円を超えました。とは言え、燃料油の貢献度は粗利全体の8%しか占めません。やはり収益の主役は車検、車販、レンタカーです。それぞれが2000万円を超える収益力を持つ商品に育ってきました。

7月以降、車検が減少傾向なのがやや気になります。3年前の4月に実施された消費増税の影響かもしれません。

車販は2年前の夏にテスト導入した「個人向けオートリース」がブレイクし、2倍以上の収益をもたらしています。
自動車販売は、夏場はトーンダウンするそうですが、もともとゼロに等しかったオートリースマーケットが、広告宣伝や店頭活動を続けることにより、徐々に顕在化しているのだと思われます。

これまで稼ぎ頭だった「車検」が頭打ち状態のため、やがては「車販」にその座を明け渡すことになるかもしれません。



地道に収益を下支えするレンタカー

コンスタントに収益を下支えしてくれているのが「レンタカー」です。
例年8月は稼働率がグンと上がるのですが、今年は2年前の8月と比較しても2倍となりました。

当社が仲町台SSでニコニコレンタカー第1号店を立ち上げたのは2008年夏のことです。以来、あれよあれよと言う間に油外の柱の一角を占めるようになり、5年後には年商1億円を突破しました。

レンタカーはガソリンと同様、「売らなくても売れる」商品です。スーパーやコンビニのように、商品を陳列するだけでお客様が勝手に求めてくれます。
この特質がSSの風土とミスマッチを起こすことがあります。
SSは元来、販売努力が「美徳」とされてきました。店頭で断られても断られても、果敢にアタックする「体当たり」の姿勢が称えられます。

レンタカーは異質です。「売る努力」が要りません。ですから、評価しようがありません。他の「油外商品」とは別枠とし、評価対象から外してしまうSSがあるとよく聞きます。


 

まさかの理由でレンタカー失速

当社もそうでした。
グラフ1は、当社レンタカーの年間売り上げの推移です。
順調に伸び、2012年に1億円を突破しました。
しかし、翌年より下降に転じ、みるみる3,000万円も落ち込んでしまいました。一体何が原因でしょう。当時は悩みました。

❶需要の伸びが止まったのか?
SSレンタカービジネスは、2008年から翌年にかけて華々しく登場しました。当時は毎日のようにマスコミに取り沙汰されたものです。しかし5年も経つとこのブームは去りました。

このため、レンタカー需要が急速に冷えたのではないかと考えました。


ところがグラフ2を見てください。
SSレンタカーの需要は今なお堅調に増加しています。世間の認知度も毎年高まっています。ニコニコレンタカーは、国内1,500店規模へ成長し、かつ1店舗当たり平均売り上げも年々伸び続けています。つまり、供給量の拡大以上に需要が伸びているのです。
当社の落ち込みの原因は、需要の減少ではあり得ません。

❷競合が激しくなったのか?
当社はニコニコレンタカーの加盟店ですが、周りのSSや自動車屋も類似ブランドで次々に参入しました。ハイブリッドカーに特化したり、「宅配」を売りにする事業者も登場します。近隣の駐車場に「カーシェア」ののぼりが次々に立ち始めたのもこの頃です。

しかし、レンタカー需要そのものが伸びているのです。当社の売り上げが30%も落ち込むほど競合店が繁盛しているようには見えません。
結果論ですが、価格競争を仕掛けずとも2016年以降、売り上げがV字回復し、さらに伸び続けているので、この仮説も成り立ちません。

❸SSそのものに原因がある?
よもや我がSSに問題があるのか?という考えが頭をよぎります。実はその通りでした。レンタカー事業に対するスタッフたちの意欲喪失こそが業績悪化の原因だったのです。というわけで、今回はその経緯をご紹介します。

「レンタカーステーション」構想は夢と消えた

レンタカービジネスをSSに投入した当初、どの店でやっても大成功しました。
レンタカー車両を10台用意すれば、月間70万円を稼ぎます。30台にすれば200万円、50台なら350万円となりました。天井知らずです。

おっちょこちょいの私は、「レンタカーこそSSの救世主となるに違いない」と本気で考えました。車を用意した分だけ儲かる夢のような商品です。つらい「声かけ」をスタッフに強いることもありません。

営業利益率は50%ほどありますから、もしかしたら、レンタカーだけで運営費が賄えるSSが作れるのではないかと考えました。いわゆる「レンタカーステーション」です。

たとえば、総経費が月間350万円のSSなら、レンタカーを100台用意するだけです。さっそく検証することにしました。SSに大号令をかけます。「オークションから大量に安い車を調達せよ」「大急ぎで駐車場を確保せよ」と。

その結果、当社のレンタカー売り上げが年間1億円を突破したのは前述のとおりです。さぞかしSSの利益が改善したのだろう。否。実はほとんど変わりませんでした。レンタカーの収益が伸びた分、他の収益が減少してしまったのです(グラフ3)

なぜか。
SS現場を見て愕然としました。店内をレンタカーが埋め尽くしています。レンタカー車両を100台も揃えると、週末の朝などは50人以上が一斉にレンタカーを借りに来店します。SSのセールスルームは手続き待ちのお客様であふれ、スタッフは配車と接客に追われます。程度の差こそあれ、この状態は平日も昼間も慢性化します。

レンタカー以外のお客様にとっては入りにくい、入ったらなかなか出られない、そんなSSになってしまいました。スタッフもレンタカーの取り回しに明け暮れ、油外販売どころではありません。

唖然ボーゼン。私の発想はあまりにも短絡的でした。SSの規模にもよるでしょうが、SSでのレンタカーは50台くらいまでがコスト負担を増やさずに運営できる最大値です。月間売り上げ350万円、営業利益170万円くらいは、無理をせずに上乗せできます。

レンタカーはSSを支える重要な商材の一つではありますが、しかし、経費のすべてを賄うだけのパワーはありません。

失意のあまりの反動

―ということが、検証によって明らかになったわけです。これを素直に喜べばよかったのです。

しかし私は、心底がっかりしてしまいました。あまりにもレンタカーに期待、いや妄想を膨らませすぎたのです。その反動で、今度はレンタカーに見向きもしなくなってしまいました。

勝手に恋い焦がれ、勝手に失望されたレンタカーこそ、いい迷惑です。しかし、もう私の眼中にありません。2012年12月、今度は「車検を2倍にするぞ」と号令を発しました。
当時、車検台数は全店で年間4,000台でした。これを8,000台にしようと全精力を注いだわけです。当然ながらSSスタッフも経営者の気持ちを「忖度」します。
優先順位は「一に車検、二に車検、三四がなくて五に車検」―。

格下げされたレンタカーは、アルバイトスタッフに任せっきり。車体の損傷や軽微な故障は放置され、忙しさにかまけて洗車清掃もおざなり。ニコニコレンタカーはユーザーアンケートがシステマティックに把握できるようになっていますが、お客様は苦情を申し立てるなど、しきりに危険信号を発しているにもかかわらず、私もスタッフも見て見ぬフリ。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない…」。

車検倍増は3年後に達成できました。喜んだのもつかの間です。いつの間にかレンタカー業績が3,000万円も落ち込んでいるではありませんか。事ここに及んで、ようやく「なんでだ?」という問題意識が芽生えた体たらくです。

こんなにいい商品をおざなりにしていた

新店長が気づきました。「こんなによい商品があるにもかかわらず、 おざなりにしているなんてもったいない」と。

2015年8月、当社の仲町台SSもセルフ化しました。私は、優秀な店長候補を採用したいと思い、評価基準を変えました。つまり、SSの営業利益と店長の給与を連動させたのです。20代で年収1,000万円を超えることも十分に可能です。

やる気のある若い店長経験者を採用できました。そして、数カ月の勤務を経て店長に抜擢しました。彼にとって、車検が月間200台以上入庫する店の運営は初めてとのこと。まして、レンタカーは経験も見識もありません。ですから、最初は、自分の得意なタイヤ販売で何とか利益改善しようと頑張りました。

が、3カ月もするとレンタカーのポテンシャルに気づきます。
「キャンペーンも販促も訓練もいらない」「目標管理も行動管理もいらない」「最も手早く業績改善できる」「アンケートの苦情の数々も、すぐ改善できるものばかり」いいことづくめです。

彼は、古いレンタカー車両をスッパリ捨てて、新しい車に入れ替えました。さらに接客できないスタッフ、手抜きするスタッフを排除しました。

そして3カ月後の2016年2月、レンタカー業績は前年同月比プラスに転じます(グラフ4)

16年4月以降、現在に至るまで毎月過去最高実績を更新中です。

仲町台SSの快進撃は、他のSSの店長にも波及します。新人店長に遅れをとってはならない、車を増やせ、綺麗にせよ、整備せよ、まともに接客できるスタッフを勤務シフトの中心に据えよ、というわけです。

全店同一の評価基準です。仲町台SSの成功例を全店長が共有し行動しました。
もともと経営者がSSに「やってみよ」と押し付けたレンタカービジネスですが、ここにきて、レンタカーの真のポテンシャルを、おそらく初めて店長たちが理解し、自ら行動したのではないでしょうか。

お陰で当社も晴れて「レンタカー需要の伸び」(グラフ2)の恩恵にあずかれるようになりました。

当社では、経営者の私がやれレンタカーだ、車検だ、オートリースだ、と叫ぶとみんな「右向け右」となってしまいます。

 

 

 

ところが、評価基準の変更により、主導権を現場店長に渡すことに成功しました。
店長は、最も高く利益を稼げるようにSSの経営資源を最適なバランスに振り分けます。これが、今日の好業績を生み出しているのだと感じています。


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