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燃料油販売が油外増収に実を結ぶ条件

一難去ってまた一難

新型コロナウイルスの猛威が止まりません。
入国制限から始まり、休校やイベント自粛が求められ、ドラッグストアには早朝から行列ができています(原稿執筆3月初旬時点)。

何だか「令和」になって、次々と厄災が襲ってきていると感じます。
昨夏の台風は、各地に大きな被害をもたらしました。保険会社にも多額の支払いが生じたと聞きます。当社が主宰するニコニコレンタカーFCは、全国で1万7000台のレンタカーが稼働していますが、突然、自動車保険料を値上げするとの通告を受けました。
じたばたした結果、何とか保険会社を変更したり付帯サービスを切り分けるなどして当面の保険料は据え置くことができ、ホッとしています。

値上げと言えば、昨秋の消費増税も全国の小売り業に大きな打撃をもたらしました。2019年10~12月四半期のGDPが年率換算マイナス7.1%と発表されましたが、全国的に減退した消費意欲は、いまだ復旧していないようです。…そして、新型コロナウイルスの襲来。

当社はSSと別に8カ所のレンタカー専業店を直接運営しています。多くは空港立地のお店ですが、インバウンド利用がほぼゼロになりました。
もっとも当社は、インバウンドの売上構成比がやっと3割くらいになったところでしたから、直ちに店じまいしないとならないほどではありません。
しかし、回復の目処も立っていません。

SSはまだ対岸の火事

旅行・観光業やイベント関連業に比べると、SSが取り扱う燃料油や車は生活のインフラです。取引先も海外ではなく地域住民ですから、新型コロナウイルスの影響はまだ最小限です。
今のところ震災時のようなパニック行列もありません。

当社SSの2月の実績を見てみましょう(表1)。

  

営業利益は前年が970万円でしたが、今年は2,200万円(6店合計)。2.3倍の伸びです。2月の過去最高利益は2018年の1,300万円でしたから、月間ギネスも更新しました。

利益増に貢献したのは、燃料油、車販、レンタカーです。
燃料油は販売量が400kl以上伸び、マージンもℓ3円増えました。

油外は堀之内店が車販、レンタカーを倍増したのが大きいでしょう。この店だけで油外粗利は1,000万円伸びました。堀之内店は新設から1年経ってすっかり一人前、安定黒字基調になったと感じます。

しかし、あらためて思います。
世界中が新型コロナウイルスで大騒ぎしている中、こんなのんびりした原稿を書いていてよいのかと。
SSも接客業ですから、スタッフの感染リスクは小さくないでしょう。
今後どんな災難が私たちに降りかかるか、想像もつきません。早く終息することを切に祈るばかりです。

燃料油増販に効くLINE

国内のガソリン需要は減少一途をたどっていますから、その逆風に抗して増販しているのは立派なことだと、SSスタッフを激励しています。

燃料油増販の基本策は、新規来店客に対するリスト取りと、会員化です。
これに加え、昨年5月から12月までの間、LINE公式アカウント販促を試しました。

どちらも車番認識システムで来店客を見分け、アプローチしてきました。
その結果、8カ月間で3万件以上の「友達登録」を獲得しました。LINEで、ガソリン割引クーポンを継続的に届けています。ℓ当たり3~5円引きのクーポンです。これだけでガソリンマージンは吹き飛びますから、油外商品の販売を前提として初めて成立する販売促進策です。

グラフ1を見ると、8月頃からガソリン増販効果が現れたことが分かります。

販売革新で伸びる車販、レンタカー

過去に遡って、当社SSの2月の営業実績の推移を「グラフ2」に示します。
(2018年秋にオープンした堀之内店は除いています。)

2014年は経費が粗利を上回り、赤字でした。その後は営業利益を出し続け、5店で2,000万円の利益を稼ぐまでになりました。

粗利が5,000万円近く増えましたが、経費は2,700万円しか増えませんでした。粗利の増加は、「➊車検」「➋車販」「➌レンタカー」に支えられています。

ここで➊と➋➌では、販売拡大のタイプが異なることに気づきます。
➋➌が伸びたのは「販売革新」です。
車販は「新車リース」というインパクト抜群な新商品を投入したことで、中古車販売も活性化し、一挙に年間1億円増収しました。

レンタカーは「中古車を再利用する」という創業当初のコンセプトを捨て、顧客ニーズの変化に対応した商品構成や営業体制を構築したことで、年間2億円以上改善しました。
この2つの商材のおかげで、当社SSは高収益店に転換できたと思います。

ところが、好事魔多し。
新車リース市場は競合が増え、早くもレッドオーシャン(過当競争)気味です。トヨタやホンダなどメーカーも自動車の「サブスク」に参入し始めています。当初のインパクトは消え、ここ3年間、当社の車販実績は一進一退を続けています。

その点、レンタカーは見るべき競合が当分現れそうもありません。なぜならSSとの「兼業」であることが、圧倒的な損益分岐点の低さを生み出しており、品質を同じにすれば、価格優位性が発揮できるからです。

ーーーと安心していたら、まさかの新型コロナウイルス騒動です。消費者は外出を控えるようになり、予約のキャンセルが目立ち始めています。

PDCAで伸びる車検

このような「販売革新」型商品はドラマチックな実績変化が起こり、世間の注目も集まります。

しかし、当社SSの収益ナンバーワンは、依然として「➊車検」なのです。
2019年の車検入庫は1万680台、4億円の収益を上げました。文字通り大黒柱です。

そこには何らドラマチックな要素はありません。やるべきこと、やるべき量、時期、役割分担を決め、その計画を忠実に実行しただけです。
むしろ大切なことは、「PDCA(計画・実行・評価・改善)」サイクルを確実に回すことにあります。

当社は、各店から選任された車検委員により毎月「車検委員会」を開催していますが、これがPDCAを回す軸を担っています。
決して華やかな活動ではありません。各店の目標・実績の確認有効な車検獲得法、販促策とそのCPO(入庫1台当たりに要する販促費)、客単価アップに資する商材などの情報を共有しています。

重箱の隅をつつくような会議をかれこれ5年以上やってきました。数年前からは、テレビ会議に切り替えています。かつて当社の車検は年間4,000台、1.5億円でした。商品内容も販売手順もほぼ同じなのに2.5倍に伸びたのは、この車検委員会のメンバーたちが、愚直に無駄を無くし続け、精度を高めてきたからです。

人手不足は油外販売の敵

せっかく客数が拡大したので、まずは車検販売に生かしたいわけですが、どうもキャンペーンの実績が思わしくありません。
1~2月の燃料油販売は、前年比123%伸びました。しかるに、車検入庫は2カ月間で1,921台、前年比98%。kl当たり台数で比較すると80%です(表2) 。

目標台数は2,070台ですから149台もショートしています。キャンペーン期間は4月まで。4カ月間のトータル目標は、4,330台です。あと2,409台。果たして挽回できるでしょうか。

このままだとSSスタッフたちが毎年楽しみにしている箱根温泉旅行は、今年は「お預け」になるかもしれません。
いや、どっちみち今年は自粛することになるかもしれない、なんて考えが頭をよぎります。

そもそも車検は法定需要なので、新型コロナはまったく関係ないはず。落ち着いて、目標未達の原因を考えます。
ハタと気づきました。
総労働時間は前年比97%しか投入していないのです。

客数が増えたのに、投入時間が減っている。SSが人手不足に陥ったとき、最初に削られるのは能動的な接客、すなわち「声かけ」です。

いくら売れる商品をつくり販売促進しても、販売行動がなければ泡と消えます。人員確保に対する配慮が足りなかったかと反省します。

生産性向上の仕組みを模索

とは言え、ただ人手を増やせばよいのかという疑問も感じます。一人当たり販売成果、すなわち生産性の改善も大切です。

レンタカーのように、放っておいても勝手に売れる高生産性商品もありますが、車検販売もできるだけ属人的な要素を減らそうと、ネット販売や電話販売(コールセンター)などを行っています。

今後もこうした工夫は必要でしょう。

車検以上に属人的要素が強いのが車販です。
かつて当社のSSには、読心術や催眠術が使えるのではないかとさえ思えるスタッフ(Aさん)が在籍していました。Aさんが赴任したSSでは、月間100万円未満だった車販収益が安定的に500万円以上、計上するようになりました。

そのAさんが退職しました。すると、数字は元に戻ってしまいました。

Aさんの「術」は標準化できず、誰も真似できなかったのです。

そこで車検と同様、2年前から「車販担当者委員会」なるものを立ち上げています。Aさんのような爆発力はありませんが、一定の成果が上がっています。
2年かかりましたが、かのSSも月間300~400万円くらいの車販収益を稼ぐようになってきました。

普通の人間が一定の行動をすれば、一定の成果が上がる、その仕組みを何とか構築したいと足掻いています。

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