油外放浪記

油外放浪記第120回「SS車販の新たな切り口が見つかったかもしれない」

「人間力」の車販 「仕組み」のレンタカー

とにかく今年の夏は、尋常の暑さではありませんでした。当社でも、SSスタッフには本社からスポーツドリンクを無制限に供給したり、ほかにも扇風機内蔵ウェアの着用などを試してみましたが、どれも焼け石に水。休憩をこまめに取らせることくらいしかできませんでした。 
冬場はいろいろ防寒対策のやりようもありますが、夏の暑さはお手上げですね。 
よくぞみんな無事に生き延びてくれました。

8月の営業実績を表1で示します。

     
営業利益は1,500万円(5店合計)。前年同月より270万円ダウンです。経費が640万円増え、その分を燃料油が420万円カバーしてくれましたが、油外は逆に50万円ダウンし、足を引っ張ってしまいました。
今年の夏の暑さで、スタッフの生産性もお客様の購買意欲も鈍ってしまったのでしょうか。

収益を大きく下げたのは車販です。600万円ダウン。実は車販担当スタッフが相次いで体調を崩してしまいました。今夏の甲子園大会、秋田県金足農業高校の吉田投手の活躍には全国が沸きました。地方の公立高校が決勝にまで駒を進めたのは、彼の踏ん張りが大きいと評されます。

吉田投手ほどではないにせよ、わがSSの車販ビジネスも、一握りのスタッフの力量に頼ってしまっていることが今回露呈しました。組織としてリカバリーできる態勢を整えなければ、ビジネスは安定しないでしょう。

一方で、レンタカーは560万円プラスとなりました。
レンタカーは、完全に仕組みだけのビジネスです。仕組みを整えれば、誰がやってもうまくいきます。先月号でも触れましたが、7月から、仲町台店の店長のやり方(仲町台メソッド)を全店に適用した結果がグラフ1です。所沢店の伸びが著しいですが、どの店にも効果的であることが確認できます。

私が車販にこだわる理由

その点、車販はまだまだ未熟です。しかし、あきらめるつもりはありません。 
なぜなら車販は、数ある油外商品の中でも際立って生産性の高い商品だからです。
レバーレート(1時間当たり付加価値)は、洗車が3,000円、オイル交換が5,000円、車検が1万円、レンタカーだと1.3万円くらいでしょうか。ところが車販は5万円と格段に高いのです。 
平たく言うと、洗車担当者15人が束になっても、車販担当者1人に勝てないということです。

そればかりではありません。
もしもSS利用客の半数以上を自店の車販客で占めるようになれば、オイルも車検も鈑金も保険も、それこそ「仕組み」で売れ続けます。

そう、車販ビジネスを強固にすることは、SSの営業基盤そのものの強化に直結するのです。 
当社の燃料油販売量は1SS当たり月平均300kl。固定客数(台数)は約5,000台です。そのうち2,500台を当店が売った車にしたいとしましょう。毎月20台以上を販売すれば、8~10年で悲願達成です。

しかるに、当社の車販実績を見てください(グラフ2)


長らく月間4~5台で推移していましたが、2015年に「新車リース」を投入してから、ギアが上がりました。しかし、まだ月間14台。今の成長率を維持したとして、20台に達するには、あと4、5年かかりそうです。

需要はあるが、切り口が乏しい

車の平均的な買い替えサイクルは8年と言われます。ということは、当店の固定客5,000人のうち毎年625人、つまり月間52人がどこかの店で車を買い替えているのです。

自動車販売業界も競争が厳しいですが、この52人のお客様にとって、最も接点が多いのは当店です。ですから、当店が買い替え需要をいち早く見つけ、52台のうち、せめて20台を当店から買っていただきたい。そう思うのは無理があるでしょうか。

SSスタッフたちも努力しています。
新車をこれ見よがしに店頭に展示し、定期的にキャンペーンを張ったり、車検のお客様やレンタカーのヘビーユーザーにア プローチしたり、低年式車両の車が来店すると果敢にアタックしたりしているわけですが、「藪から棒に車の話をしても、なかなか乗ってきてくれない、警戒されるだけ」と言います。ごもっともな話だと私も思います。

車を買いたい人は、売りたい人

新たなアプローチ方法はないものかと考えていて、ふと思いつきました。 
車を販売すると、多くのお客様が今の車を下取ってほしいと希望されます。あるいは、近所の中古車買取屋さんへ行かれます。

つまり、車を買うお客様は「車を売りたい」お客様でもあるのです。
ということは、「車を買ってください」それだけではなくて、「車を売ってください」というアプローチも成立するのではないでしょうか。

「当店は、車を高く買い取りますよ」というメッセージを発信すれば、車販の見込み客がもっと反応してくれるかもしれません。

とは言え、SSで生半可な中古車買取ビジネスをやっても、お客様は反応しません。どこよりも高く買い取るにはどうすればいいでしょう。

中古車買取の常識を打ち破る

中古車のオークション相場はだいたい決まっています。
たとえば、相場価格50万円の車があったとします。通常、中古車買取屋さんがこの金額をお客様に教えることはありません。お店が15万円の利益を得たいと思ったら、「買取価格は35万円です」と提示するだけです。その過程でお客様との駆け引きがあります。

どこまで自店の利益を確保できるか、お客様を他店に逃さないギリギリの落としどころを探しながらの交渉です。
「お店が得をするほど、お客様は損をする」ーいわば、ゼロ・サムゲームの中で、お客様を持ち上げたり車に難クセをつけたりしながらしのぎを削っているのが、中古車買取業界なのです。

当社は、買取の専門店を15年やっていますが、こうした腹の探り合いは、SSスタッフにはできません。断言できます。

ではどうするか。 
いっそのこと、「このお車の相場価格は50万円です。当店はこの金額で買い取ります」と正直に言ってしまえばどうでしょう。買取利益はありません。しかし、車が売れれば30~35万円の利益になります。

つまり、車の査定、買取、出品、そして販売、仕入れ、納車までを―つの業務とするなら、 レバーレートは最低でも3万円を確保できます。高付加価値ビジネスとして十分成立します。

お客様との駆け引きはありませんから、買取価格を書面にして提示することもできます。
これも業界では掟破りのやり方で、通常は、口頭で伝えるだけなのが業界慣習です。しかし当店は、「これを他店との交渉材料に使っていただいてもいいですよ」と堂々と言えます。

いずれにせよ、お客様は最高価格で車を売却できます。「騙されているかもしれない」という印象を当店に抱くことはありません。

翻って、当店は、車販見込み客を増やすことができます。お客様の信用度が増すので、車販の成約率も増えるでしょう。

つまり、ゼロ・サムゲームだった中古車買取ビジネスが逆転します。お店もお客様も得をする、Win-Win(ウィンウィン)の関係を築くことになります。お客様とは「対決姿勢」 をとるのではなくて、共に喜び合える関係を保てます。スタッフとお客様がハイタッチする姿が目に浮かぶではありませんか。

手応えあり 車販の前途に光明

ここまで考えると、私の「油外放浪」癖がウズウズしてきます。ぜひ試してみたい。

店頭でドカーンと「一番高い値段で、あなたのお車を買い取ります」「愛車の最高値を知りたくありませんか」と告知してみたい。

お客様がどのように反応するだろうか。そして、車販契約がどれくらい獲れるだろうか。早速やってみました(表2&画像1)。 
その結果を表3で示し、ポイントを述べます。

➊3割がマイカーの価値を知りたい 
257人にアプローチしたところ、「査定してみたい」と言ってくれたのが80人。3人に1人がマイカーの価値を知りたいと、興味を示してくれました。

➋15%が車を売却 
買取価格にびっくりし、その場で買取契約書を交わしていただいた方が、12人いました。

買取屋さんに目的来店したお客様ではないわけですから、なかなかの高確率ではないでしょうか。
内訳を表4で示します。



買取金額が合計300万円を超えましたが、オークション相場なので損はありません。
車によってはオークションに出品をせず、小売りすれば利益を出せます。あるいは、レンタカーとして運用すれば、1台当たり年間100万円前後を稼いでくれます。

➌90%が車を購入
12人中11人が、車を購入(またはリース)してくれました。驚くべき確率です。これだけで300万円以上の粗利です。
「買取」が「販売」の切り口になったと考えていいのではないでしょうか。

❹やりやすい
SSスタッフたちは異口同音に「すごくやりやすい」と興奮気味に言います。

車販の商談に至るまで一手間かかるわけですが、「お客様の食いつきが全然違う」「これなら誰でも見込み客を見つけられる」といった感じだそうです。

まだ告知方法もオペレーションも拙速で荒削りでしたが、標準手順として確立すれば、SSにおける車販の一つのスタイルとなるかもしれません。

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