収益が増えたが経費も増えた
当社は6月決算なので、7月から新事業年度がスタートし、第36期となりました。
初月のSS実績は、表1のとおりです。
既存6店の営業利益は、かろうじて前年を上回りました。「表1」には記載していませんが、計画値と比較すると95%、未達です。情けないスタートとなりました。
油外粗利が1,800万円伸び、経費も1,800万円増加しました。
常日頃からSSスタッフには「経費を増やすのは構わない。しかし増やした分の2倍、できれば3倍稼げ」と言い聞かせてきました。
経費の増加以上に収益が増加する限り、営業利益は増加します。つまり、この経費は健全です。
しかし17カ月間続いていた月間営業利益のギネス更新が、今年5月以降、ピタリと止まってしまったのは、イヤな感じです。
「市場規模」すなわちパイには限界があります。限界に近づくほど、経費効率が悪化するわけですが、当社は限界に近づいてしまったのでしょうか。
先行投資にSSの販売力が追いつかない
先月号の本稿で述べたとおり経費が増加した主な要因は、中古車架装センターです。中古車を仕入れ商品化し、SSに在庫するための新設部門ですが、月間1,000万円かかります。
生産能力は年間3,600台。・・・にもかかわらず、SSの販売力はまだ年間1,500台程度。現時点では明らかにオーバースペックです。
あえて先行投資したのは、政府による脱炭素化政策が本格化すれば、私たち自動車関連ビジネスに何が起こるか、どんな影響が及ぶのか、まったく不透明だからです。
今確実にできることを目一杯やっておけば、少なくとも将来の備えにはなるだろうと信じます。
今期の車販目標は2,700台ですが、早期に年間6,000台を実現したいと思います。ただそれには、生産能力も販売拠点数もまだまだ足りません。
レンタカーが伸び盛り
さて、表1に戻ります。
前述の大きな先行投資によって、既存6店の車販収益は470万円伸びました。新規2店の車販も弾みがつき始めています。
ところが、それにも増して著しく伸びたのがレンタカーです。
念のため、コロナが発生する前、2019年以降の7月のレンタカー実績推移を「グラフ1」に示します。
2年前は6店で400台近いレンタカーを擁していました。
しかし、昨年のコロナショックで約100台を減車、これにより月間200万円をコストダウンしました。
ところが予想に反して、レンタカー需要が意外に堅調で、売り上げは横ばい。
「コロナはSSレンタカービジネスに影響しない」それが分かるやいなや、当社は各店とも増車に転じました。
昨年7月と比較すると、車両を50台増やし、コストは240万円増えました。売り上げが640万円増加したので、利益は400万円増となりました。
SSレンタカーはストックビジネス
実は、こういう戦略がきちんと計算できるようになったのは、SSレンタカービジネスの成功要因を分析し整理したからです。
ニコニコレンタカーではこれを「Nメソッド」と呼んでいますが、同じ車種でも車齢により稼ぎがまったく変わります。また同じタイプの車でも、車種によって稼ぎがまったく異なります。
2016年頃に仮説を立てて、仲町台店で検証し、2017年から順次、全店でNメソッドを展開してきました。
1台当たり収支構成の推移を「グラフ2」に示します。
レンタカーは最盛期である毎年8月に向けて増車していくのがセオリーですから、7月は1年のうちで最もコスト先行になる時期ではありますが、ここでは7月の変化を見ます。
1台当たり経費は34千円から44千円へ1万円増加しました。車の「若返り」を進めたからです。かつて、平均車齢は10年を超えていましたが、現在は2年未満。大手レンタカー店と遜色ない商品力となりました。
経費が1万円増加して、売上げが3万円増加。したがって利益は2万円増加し45千円。コロナ禍の中でのオフシーズであるにもかかわらず、利益率は50%を超えました。
平均45千円を稼ぐ車が397台あるので、この7月は1,580万円の利益が得られたわけです。
改めてはっきりしたのは、SSレンタカーは典型益な「ストック型ビジネス」だということです。お客様は、通りすがりの旅人ではなく、SSの近所に住んでいる人たちです。したがって、そのお客様がリピート利用してくださるほど、利益率が改善します。
ポイントは顧客満足度です。商品力の高い車をラインナップすると、その車にファン(リピーター)がつきます。
あとは、インターネットの窓口からお客様をどんどん送り込んでくれるので、その需要を満たす車両台数へ合致させていけば、新規客が次から次とリピーターに転換します。
お客様もスタッフも喜ぶ仕組みは勝手に回る
車を新しくしたことにより、お客様からのクレームや故障はなくなりました。運営側にとって、このストレスから開放されたことは実に大きい収穫です。
スタッフが前向きにレンタカー業務に取り組むようになり、顧客満足度の高まりに相乗効果を与えています。
さて、車が増えリピーターも増えてくると、出発時間が集中します。土曜日の朝ともなれば、20組以上の出発が重なることもしばしば。
出発手続きに通常10~15分かかります。複数人数で対応してはいますが、どうしてもお客様をお待たせしてしまいます。
1時間もお待たせしていたのでは、お客様から怒声を浴びるのも当然のことです。
そこで、ニコニコレンタカーでは、お客様に、事前に出発手続きをやっていただくスマホアプリ「ニコパス」を開発しました。
このアプリから予約していただいたお客様は、車のキーを渡すとすぐに出発できるようになります。
出発手続に割く時間は9割も削減されます。劇的な合理化が図れるので「このアプリをダウンロードしてもらうよう、お客様にすすめなさい」とSSスタッフたちに命じました。
しかし、スタッフも面倒臭いのでしょう。最初はアプリ会員がなかなか増えませんでしたし、私もあまり口酸っばく言いませんでした。
ところが最近、急激にアプリ会員数が増えています。「どうしたんだ?」と聞くと、「いや、アプリに入ってもらうと全然ラクなんっスよ」とのこと。
「今まで社長からやれっ、と言われて、やってよかったことがあまりなかったのですが、これだけは本当にいいです」とストレートな物言いで返してきます。
スタッフたちが能動的にお客様にアプリを勧めるようになったことを明かしてくれました。
なるほど、お客様が喜び、自分たちが楽になる仕組みであれば、自然に回り出すものだなぁと、改めて感じます。
そう言えば、レンタカーの「若返り」も途中からSSが自主的に推し進めるようになりました。これもお客様が喜び、自分たちがストレスから解放されることを実感したからです。
経営者の仕事とは何であるか考えさせられます。
一方通行で「やれっ」と命令するのではなく、大事なのは、好循環をもたらす条件づくり。最初の一歩さえ踏み出せば、あとは自ら回る、そんな仕組みづくりだと思います。私も口うるさく言いたくはありません。
営業利益が平均5,000万円に到達
最後に、前期(第35期)の当社SSの実績を総括します。
当社は年間5,000万円以上の営業利益を生むSSづくりを目指してきましたが、1店当たり営業利益の平均が、ようやく5,000万円に到達しました(グラフ3)。
店別に見てみます(表2)。
3年前に、5,000万円到達に一番乗りを果たした仲町台店は、その後も快進撃が続いています。2年前は惜しくも1億円に届きませんでしたが、前期、晴れて1億円を突破しました。
2年前に5,000万円に到達したセンター南店と寒川店は、惜しくも一歩後退。割って台頭してきたのが平塚店と堀之内店。2番手争いはこの4店が拮抗するようになってきました。
今期(第36期)の目標は、表3のとおりです。
2店が新たに加わり、営業利益の合計は4億4,000万円を目指します。
SS業界にとってゼロエミッション社会の到来は、業態転換を余儀なくされる一大事となる可能性が大きいでしょう。
2030年まであと9年弱。
内燃機関の車両を対象とした商売は、利益構成比が半分以下になるかもしれません。残り半分は前人未踏、前例のない世界。ビジネスチャンスがどこにあり、いくら投資すればいいか、誰にも分かりません。
今のうちにしっかり原資を獲得しておきたいと思います。