黒字が続くも車検が変調
あけましておめでとうございます。
平成30年ということは、平成元年生まれの若者が今年30歳!どうりで私たち団塊の世代も歳をとるはずです。今年も私の放浪ぶり(ドタバタぶり?)に、どうかお付き合いのほどを。
まず例によって、当社SSの実績を示します。
この原稿執筆時点の最新実績は昨年11月。全5店の合計値が表1です。
粗利が7,600万円、経費が6,500万円、したがって営業利益は1,100万円でした。前年同月比較では、粗利が700万円増、経費が550万円増えたので、営業利益は150万円の改善に終わりました。
当社が注力している「中軸3品」を見ると、車販が600万円改善、レンタカーが200万円改善しましたが、車検が200万円減少しました。
昨年の夏を境に、車検の入庫台数が減少に転じているのです(グラフ1)。
どうしたことでしょう。
まず気にしたのは、車検需要そのものが落ち込んでいるかどうかです。全国500箇所以上のSSに設置されている車番認識システムに登録されている現行車両31万台を分析しました。
グラフ2の点線は、2016年の月別車検需要を100とした場合の、2017年の需要の変化です。
2017年上半期は前年比120%で需要が伸びました。しかし7月以降伸び率は下がり、10月は前年比103%にまで落ち込みました。でも、前年を割ってはいません。「微増」というところでしょうか。
一方、当社SSの入庫台数は 同グラフ2の実線です。1月、2月は前年比130%と調子が良かったのですが、3月にトーンダウンし、5~7月は前年並み。8月以降は前年割れとなりました。
需要が伸びている時は「押せ押せ」ですが、需要が冷え始めると、たちまち「ヘタレ」になってしまうようです。
ちなみに、2017年と比較して2018年の需要はどうなるかを、グラフ3に示しました。
2018年の車検需要は前半は 伸び悩み、後半は回復する見通しです。
原因不明のままに年を越す
当社の車検台数が減少した理由は何でしょうか。
車検のターゲットは(A)リピーターと、(B)新規客に大別できます。
新規客はさらに、(B-1) SSに来店するお客様と(B-2) 商圏客に分かれます。
それぞれ見てみましょう。
(A)リピーター
2年前に車検を実施してくれたお客様のうち、今年も車検を実施してくれたお客様の割合が 「リピート率」です。
当社SSスタッフは、車番認識システムを活用し、日常的に車検客が来店した時の「おもてなし」を強化してきました。また、コールセンターも強化し、「今回も当店で車検をお願いします」とコールし続けてきました。
その甲斐あってリピート率は安定的に向上し、昨年も下がってはいません(グラフ4)。ただ、 52%止まりになっているのが、気がかりではあります。
(B-1)SS客
給油来店するお客様の中に車検ターゲットがいます。これも車番認識システムが検知し、スタッフがアプローチします。その結果獲得した件数をグラフ5に示します。
2016年と比較すると、店頭スタッフは頑張っていることが分かります。
(B-2)商圏客
…だとすれば、商圏客が減少したのでしょうか。
折り込み広告、ミラーリング、ホームページは継続していますので、告知量は変わっていません。
これを見たお客様はコールセンターに電話をかけてくれますが、コールセンター機能の質・量ともに強化しているので、受注率.受注数ともに上がっているはずなのですが。
強い競合が現れて、広告力や販売力が相対的に負けているのでしょうか? まだ何とも言えません。しばらく様子を見つつ、引き続き原因を突きとめるつもりです。
車販の好調が続く
さて、昨年は当社SSの車販の中核である「個人向けオートリース」の取り扱いの方法論がほぼ確立し開花しました。この5年間で累計2,570台を販売しています(グラフ6) 。
当社のガソリン販売量は全店合計1,200kl/月ほどですから、利用客数は2万4000人くらいです。このうち1割が、当店で車をお買い上げいただいたお客様になってきたということです。
むろん、自動車販売の商圏範囲はガソリン商圏より広いので、車販客がすべてSS利用客というわけではありません。それでも当店で売った車の来店が日々目立つようになってきたのは事実です。
これまでは「いかに売るか」に心血を注いできましたが、今年は「売った後、どうするか」、お客様の差別化と優遇オペレーションについても本気で考えたいと思います。
SS+中古車販売店構想
ところで、グラフ6を見ると、オートリースだけでなく現車販売も伸びています。車販台数の 25%を占めます。
古くなったレンタカーを販売したりもしていますが、これは主に平塚店に中古車展示場を増設したことによるものです。一般の中古車屋さんのようにオークションから中古車を仕入れ、 店頭に並べ、集客して販売するというスタイルです。
3年間やってきましたが、実はこれも「頭痛の種」のひとつです。
計画を大きく下回っており、いまだ低迷しているのです(グラフ7) 。
当初の目論見はこうです。
①店の特徴を明確にし、ターゲットを絞り込む。ついては「高年式軽自動車」の専門店にしよう。このカテゴリーで地域ナンバーワン店を目指そう。
②商品カテゴリーの絞り込みは、スタッフの短期育成にも役立つはず。
③広告宣伝を反復し、認知度を高めよう。地域のユーザーが「車を買い替えたい」と思った時、 真っ先にご来店いただくような店になっておきたい。
④SSには月200klのガソリン販売量がある。もとより平塚市は軽自動車比率の高い地域なので、やがてはSS利用客の半数くらいは、当店で買い替えていただいたお客様で占められるに違いない。
⑤この業態を他のSSに展開するのは無理だろう。土地がないし、あっても高いから。でも地方の安い土地に中古車販売店をつくり、集客のために給油設備を付加することなら可能だ。テレビCMの安い地域ならなお良い。
⑥ついては平塚店を、ノウハウ確立と人材育成のプロトタイプ店にしよう。
⑦平塚店で3年かけて確立し、4年目からは地方展開に着手しよう。まずは当社直営のニコニコレンタカー専業店である長崎空港店や鹿児島空港店が箪頭候補だ。レンタカーは専業だとほとんど利益が出ないが、兼業にすれば50%の利益率を獲得できるのだから。
⑧1店で年間5,000万円の営業利益を上げたい。そうすれば10年後には20店、10億の営業利益だ。
この構想にルンルン気分で、外部コンサルタントに指導を仰ぎつつ、7,000万円の設備投資をし、人材もスカウトし、2015年2月、平塚店の中古車販売がスタートしました。
そして3年が経った今、暗礁に乗り上げています。
コンサルタントからは大量のノウハウをご教示いただき、指導されるとおり折り込み広告を増量したりホームページを強化しているのですが、計画には遠く及びません。したがって地方展開構想は無期限凍結です。
中古車販売は鮮度が命
あまりにも回転が悪いので、昨年5月に平塚店の在庫車両をチェックしてみました。すると驚くべき事実が判明しました。
中古車販売店の商品回転率の目標は、0.5回転/月と言われます。すなわち2カ月間で在庫を捌き切らなければなりません。
ということは、在庫台数は販売目標の2倍。月間30台を売りたいなら、60台が適正在庫です。
2カ月間展示して売れなかったら、それはすでに「不良在庫」です。業界用語で「長期在庫」「チョウザイ」と呼びます。この長期在庫の比率が高まるほど、販売実績は悪化します。
しかるに、平塚店の在庫状況は表2の通りでした。
100日以上展示して売れなかった超長期在庫ばかりです。売れ残りは、いくら広告宣伝しても売れません。
すぐさま在庫処分を命じました。するとあら不思議。長期在庫比率が50%を切り始めた頃から、徐々に業績が前年比プラスに転じたのです。
私も含め、SS業界は商品の「鮮度」に対する意識が希薄です。気にするのは、せいぜいタイヤくらいでしょうか。
在庫を気にしないSSの「お気楽」DNAが、「鮮度命」の小売業感覚に馴染むことはできるのでしょうか? あまり自信はありません。