市況の改善は嬉しいが・・・
当社SSの1月実績を表1に示します。
経費が前年より500万円増えたものの、粗利益が700万円増えたため、営業利益は200万円増の850万円です。
しかし、燃料指数が1.4悪化しました。粗利益改善の主役が、油外ではなく燃料油だったためです。このところの燃料市況の好転は、まさに天からの贈り物です。何の努力もせず380万円増収しました。人もSSも、長生きすると良いことがあるものですね。
でも、手放しで喜ぶわけにはいきません。「市況頼み」が危険なことは、私も身にしみて分かっています。市況に合わせて従業員の給与や雇用数を増減するわけにはいかないのです。
自ら結果をコントロールできる油外収益こそ死守しなければなりません。にもかかわらず、1月は経費の増加額が油外の増加額を上回ってしまいました。年初から危機感を感じます。
車検の逆風を跳ね返す
油外商品で気を吐いたのは、「車販」と「レンタカー」です。
車販は、個人向けオートリースのブルーオーシャン市場が、年々拡大していることを実感します。レンタカーはSSによって明暗を分けました。積極的に車両を高年式に入れ替えたSSだけが増収しました。
油外の伸長にブレーキをかけたのは「車検」です。1月の入庫台数は前年比マイナス35台。
車検は昨年夏以来、依然不調です(グラフ1)。
確かに、車検需要の伸び自体が昨年8月頃から鈍っており、今年の夏頃まで低迷すると予測されます(グラフ2)。
これは2009年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2014年の消費増税などが影響していると言われます。
でも、経営者がそんな「言い訳」に流されてしまうと、SS現場の士気が削がれます。ですから 年末にハッパをかけ、1月から販促を強化し、全店一斉にキャンペーンを開始しました。
キャンペーンの概要は太枠内のとおり。●実施期間2018年1~3月
●インセンティブ車検実施でもれなくプレゼント、さらにオイル交換2年間無料
●告知方法店頭告知、商談会、商圏には折り込み広告、ポスティング、
ミラーリング、ホームページ、リピーターにはDMと電話
●販促予算1200万円
●入庫目標2700台
CPO(入庫1台当たり販促費)は4,400円となります。1台当たり車検粗利が36,000円ですから、その12%を充てることになります。
販促費の半分近くを占めるのは景品代です。「もれなくプレゼント」は、5種類から好きなものが選べます。今回ドライブレコーダーを良い条件で仕入れることができましたので、目玉景品としました。
昨年の高速道路での危険運転による死亡事故のニュースは、まだ記憶に新しく、大きなインセンティブ効果を期待しています。
1月は昨年を上回る車検予約が獲れたので、2月、3月の入庫台数が楽しみです。
リピート率改善が課題
当社SSにとって車検は、年間8,500台が入庫し、3億円以上をもたらしてくれる「稼ぎ頭」です(2017年実績)。この牙城を崩すわけにはいきません。
まだまだ改善余地はありますが、最も「伸び代」が高いと考えているのが「リピート率」の改善です。「新規客を獲得するより、既存客にリピートしてもらう方がはるかに労力もコストもかからない」ことは知っているつもりです。
ただ、2年ごとにリピートしてもらうには、ダイレクトメール発信や店頭フォローだけでは限界があります。電話によるコミュニケーション、すなわちコールセンターの設置が不可欠です。
私も10年くらい前からコールセンターの設置を試みてきました。しかし、2年後の成果を狙うより、今月来月の結果を出すことにどうしても優先度が高くなってしまったのは否めません。
私の認識の甘さもあり、ノウハウもなく始めたコールセンターは、オペレーターが集団退職するなどダッチロールを繰り返しました。
ようやく本腰を入れたのが2016年の春。1年がかりでコールセンターマネジメントのプロをスカウトしました。さらに1年をかけ、やっと車検客に対するアフターフォローの流れが少し形になってきたと思います。
現在のリピート率はやや改善して52%(グラフ3)。
やきもきしますが、車販と同様に車検も「狩猟型」から「農耕型」へとシフトしなければ、 生産性アップは望めないのかなと思います。
「ニコニコステーション計画」始動
相変わらずのドタバタ「放浪」ぶりですが、一貫してブレていない思いがあります。
SSで働くスタッフが誇りと夢を持ち、人並み以上の待遇が得られる職場、すなわち「エクセレントカンパニー」を作りたいという野望です。
2014年、当社SSは年間3,000万円を超える赤字を計上しました。まさしく尻に火がついた状態にあって、私は考えました。
❶徒に商材を増やしたところで、人も予算もノウハウ開発も追いつかない。
エネルギーを注力するのは、せいぜい3品に絞りたい。
❷注力する商材の要件は、需要が大きくて変動が少ないもの、
SSが勝てる(競合が弱い)もの、生産性の高いものにしよう。
❸その筆頭は車検。レッドオーシャンではあるが、SSが優位な点もたくさんある。
商品、設備、販売ツールなどもほぼ完成している。
❹次にレンタカー。市場はまだまだ伸びる。
販売努力が不要でマネジメントが簡単なのもいい。
❺3つ目は自動車販売。SS利用客の半数以上を車販客で占めるようにしたい。
月間20台を販売する必要があるが、中古車の無在庫販売だけでは無理か。
❻「ぬるま湯」体質のSSを変えたい。それには優秀な店長と評価基準が不可欠。
牽引役となる店長を外部からスカウトしよう。評価基準は利益追求型にしよう。
ーーこのような方針を決めた私は、数多くの車販セミナーに参加し、コンサルタントに指導を仰ぎ、優秀店を見学させてもらいました。また、人材スカウト会社にも当たりました。かれこれ2年かかりましたが、次第に条件が整ってきました。●車検の入庫台数が年間8000台となり、販売手順が確立しました。
●若くて優秀な店長をスカウトし仲町台店に配備しました。
●新店長はさっそくレンタカーの収益性、即効性に着目し、
古い車両をどんどん入れ替えたり増車しました。
●新店長に触発され、他の店長の意識や行動が変わり始めました。
●新車リース商品「定額ニコノリパック」を開発し、
一部店舗で取り扱いを始め、ブレイクの兆しが現れました。
満を持して2016年1月、全店を臨時休業して一堂に集め 「2020年までに営業利益5,000万円/年を稼ぐSSにしよう」と発表しました。 題して「ニコニコステーション計画」です。
条件を整え、道を示せばSSは動く
この5カ年計画を発表してから丸2年が経過しました。その推移を表2に示します。
1年目の2016年、営業利益は平均2,000万円に達しました。新車リースによって車販が活性化したことと、レンタカーの収益改善が主な要因です。
9月以降は燃料指数がマイナスとなり、油外収益で総経費を賄う体質ができました。
2年目の2017年も順調に改善が進みました。燃料指数はマイナス5.6、営業利益は平均3,000万円。SS別に見ると仲町台店が5,000万円に達し、早くも「ニコニコステーション」構想に一番乗りです(表3)。
そして、2018年を迎えました。ここからが胸突き八丁です。
目下の課題は、①ガソリンの増販による客数の拡大。②車販収益をあと200万円増やす手立て。③車検や車販と比較的相性の良い鈑金塗装や自動車保険の開発です。
しかし、今のSSはまだまだ「砂の城」、迂闊にいじると崩れかねません。慎重に歩を進めようと思います。