SS全般

油外放浪記第162回 車が売れる猶予期間に売れるだけ売りたい

1、2月は車販とレンタカーが増収 車検は横ばい

当社の直営SS数は、昨年1月に小田原東IC店が、2月に新百合ヶ丘店が相次ぎオープンし、現在8店です。
この2店の業績は、これまで「新規店特別扱い」としていました。しかし、1年経過したので「保育器」から出し、全社実績に組み入れます。

2月の実績を「表1」に示します。
昨年2月は新規2店が2,000万円近い赤字を計上しました。このため全8店合計では、かろうじて800万円の黒字でした。

今年2月は、8店で2,800万円の黒字となりました。
したがって、営業利益は数字上、前年比2,000万円改善しました。小田原東IC店だけが、まだ損益分岐点上を彷徨っています。

油外粗利が3,800万円増収しました。商品別に見ると、車販が1,400万円、レンタカーが1,000万円増収しました。しかし、車検は200万円とほぼ前年並み。入庫台数も4台増にとどまりました。

車販200台への道のり

月間車販台数がまもなく200台を超えます(グラフ1)。
このまま推移すれば、今期の年間車販台数は2,700台、付加価値6億円となる見通しです(グラフ2)。


当社はこの10年の間で、車販の転機が2回ありました。

1回目は2016年。長らくオークション落札代行による無在庫販売(オークションダイレクト)を実施してきましたが、1店当たり月間5~6台の販売がやっとでした。

ある時、「個人向け新車リース」がうまくいっている自動車販売店を見学させていただく機会がありました。当時は「リース」のこともよく知らず、「ふーん」という感想でしたが、ものは試しです。紹介していただいたフランチャイズ本部に教えを請うと、断られてしまいました。

仕方がありません。見よう見まねで自社開発・商品化し、本社スタッフがSSで売ってみたところ、1週間で4件の契約を獲得できました。

これを見て、最も興味を示したのは、そのSSの車販担当者(現寒川店店長)です。自ら新車リースをマスターし、月間15台を売るようになりました。

その成果はたちまち全店に波及します。その結果、当社の車販が最初にブレイクすることになりました。
ところが、またたく間に競合が増えました。新車リース市場は、あっという間に「レッドオーシャン」化し、当社の販売台数も伸び悩みました。

第二の転機は、新型コロナです。2019年3月当時、当社は6箇所のSSと7箇所のレンタカー専業店で、合計1,200台のレンタカーを運用していました。
最初の緊急事態宣言が発令(20年4月)された時、町はまるでゴーストタウン化しましたが、レンタカーのキャンセルも相次ぎました。特に空港前の店は、利用客がピタリと止まってしまいました。

最悪の状況を想定せざるを得ません。レンタカー専業店の余剰人員を本社に集め、プロジェクトチームをつくり、SSを通じて大量の余剰レンタカーを売却しました。
幸いレンタカーが受けたコロナダメージは、インバウンド(外国人旅行客)以外は最小限で済みました。

そしてSSが、中古車の現車販売に目覚めました。「怪我の功名」とはこのことです。

「グーネット」などインターネットで集客し、お客様にご来店していただき、現車を見せて売るスタイルが当社SSの主流となりました。

プロジェクトチームはそのまま、中古車の仕入れ、架装、ネット掲載、在庫管理に携わる部門へ変わりました。
自動車販売台数は月間100台、150台、180台へと伸び、まもなく200台を超えるところまできたというわけです。

次の5年で車販500台を目指す

さて、当社の車販「第三の転機」は、2020年の菅義偉首相(当時)によるカーボンニュートラル宣言となるかもしれません。
今後、脱炭素時代に向け社会構造は大きく変革するでしょう。しかしどうすればいいか、誰も示してはくれません。

かくなる上は、現時点で最も確実性の高いことに集中するのが有効です。良くも悪くも、今はガソリン燃料車がモビリティの中心です。このビジネス基盤の上で、全力で利益を最大化しておこうと考えました。

当社は2021年7月から「第二次5カ年計画」期間に入っております。
不確定要素が多く計画策定を遅らせていましたが、このほど、ようやく社内発表しました。車販に関しては5年後、「月間500台」を目指します(表2)。
「棒ほど願って針ほど叶う」と言われます。ならば、望みが大きい方が、成果も大きいに違いありません。

車販に「3つの課題」

「月間車販500台」と計画を立てると、乗り越えないといけない3つの課題が浮上します。

➊販売拠点の拡大
現在の直営SS数は8店ですが、足りません。1店平均40台として12店が必要です。あと4店。

しかし、なかなか適当なSS案件が見つかりません。ならば、給油機能を外し、油外(車検、車販、レンタカー)だけの店でもよいかと考え始めています。

➋販売スタッフの育成
他社の自動車販売経験者が、必ずしも当社SSで通用するわけではありません。やはり、SS業務の担当者を採用し、そこから車販担当者へと育成することになります。1年もすれば、月間10台の販売能力を発揮できるようになります。

➌大量仕入
「売りモノ」がなければ、売れません。現在、毎月250台の中古車を仕入れていますが、そろそろ限界、四苦八苦しています。

計画上は、月間1,000台の商品車在庫が必要です。オートオークション以外に、新たな仕入れチャネルを開発する必要があります。

新規2店の1年間を総括

さて、冒頭にも記しましたが、小田原東IC店と新百合ヶ丘店がオープンして1年が経ちました。
どちらも前運営者があきらめたSSを運営継承した案件ですが、1年間を総括しておきます。

➊小田原東IC店
神奈川県小田原市の郊外店です。マーケットが小さく立地条件も悪く小規模設備なので、お受けすべきかどうか数ヵ月間、ためらっていました。

当社は、年間5,000万円の営業利益を計上する店を「一人前」としています。しかしそれは高望みかもしれない、年間2,000万円の営業利益を出す店を3店を持つのと同じではないかと考え、引き受けることになりました。
が、想定以上のハンデキャップに苦戦また苦戦です。

車検や車販は広告宣伝、人材育成、顧客づくりに時間がかかるので、まずはレンタカーで最短最速黒字化を狙うのが当社の最近の定石です。

駐車場を50台分くらい用意し、まず20台投入してみました。まった<稼働しません。想定していた以上に、レンタカーマーケットがありませんでした。6カ月間の累積赤字は1,500万円。あろうことか、赤字の最大の元凶がレンタカー。半分以上を他の店に移し、店長を交代させました。

その結果、昨年8月以降、かろうじて黒字基調に乗りました(グラフ3)。
ただ、これは経費抑制による縮小均衡です。この延長線上に年間営業利益2,000万円はありません

ありがたいことに、ローカル商圏であるがゆえ、たとえば車検が1台入庫すると、その家族の車検が立て続けに入庫する、また車販につながるケースがしばしばあります。こうして、少しずつファン顧客を積み上げています。

その一方で、車販スタッフの強化・増員を図っています。車の販売力は筋トレと同じ、ひたすら店頭経験を積むしかなく、時間がかかります。

黒字基調になったので、こうした持久戦が可能となりました。
もしも油外収益が300万円上積みされれば、年間利益2,000万円を超えることができます。

➋新百合ヶ丘店
神奈川県川崎市の住宅立地の店です。
敷地面積は600坪と広く、商圏も厚く、前面道路の通行量も申し分ありません。この恵まれた条件をどこまで生かせるかという1年でした。

小田原東IC店とは対照的に、オープンイベントも派手に実施し、レンタカーも60台配備。
オープン2カ月目にして油外収益は1,000万円を超え、半年後には2,000万円、なおも勢いが止まりません(グラフ4)。オープン1年半を待たずして、累損を一掃しそうです。
このまま成長すれば油外収益は4,000万円/月も夢ではなく、当社ナンバーワンのドル箱SSになるでしょう。

車検はまだ新規客しかいませんが、2月は126台入庫しました。陸運局まで片道1.5時間かかり生産性を下げていましたが、今夏にも指定工場資格を取得できる見通しです。

レンタカーも当初は、駐車場が遠く分散していましたが、徐々に解決しています。200台くらいまで保有できるでしょう。

車販も軌道に乗っており、2月実績は22台。月間30台ペースは十分可能です。

それからこの物件は、運営継承前から塗装ブースが備わっていました。おかげで鈑金塗装収益だけで月間500万円の収益が安定的に上がっています。

新百合ヶ丘店の店長は、当社仲町台店が昨期記録した年間営業利益1億円を、密かに凌駕しようと考えているに違いありません。

唯一の弱点は、ガソリン販売量がまったく伸びないこと。600坪、同時給油6台のセルフ給油設備にもかかわらず、販売量は150kl止まり(平均130kl/月)。価格は競合店と同じ、 LINE販促なども実施していますが、伸びません。
地下タンクに地縛霊「ジバニャン」が潜んでいないか、覗いてみようと思います。

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