SS全般

油外放浪記第126回「お客様の利用動向を見るとレンタカーはもっと伸びる」

今年の前半は車検がツボ

昔から2月と8月は「ニッパチの枯れ」と言われ、小売り商売が低調になると言われます。
2月は日数も短く、年末年始の出費の反動があるからだそうです。

当社直営SSも、かつて2月はパッとしませんでした。しかし、車検販売に軸足を置いてから、以降、2月は「稼ぎ時」となりました。
今年2月は直営5店で865台が入庫し、3,350万円を稼いでくれました(表1)。

おかげで燃料油粗利の減少をカバーして余りあり、2,000万円近い営業利益を出せました。2月としては、車検実績、営業利益ともに過去最高値です。
車検マーケットが昨秋から回復基調にあり、1~3月に実施中の販促キャンペーンがうまく乗っかったと思います。

車検は法定需要ですから、経営者としても「時機」を読みやすい商品です。今年の車検需要は、秋ごろから前年並みに戻ると見られますので、今が頑張り時です。

3月は1,520台が目標です。SSスタッフたちには、ご褒美の温泉旅行が賭かっています。1月、2月と順調に目標をクリアしてきたので、ムードも良いようです。

新設オープン4カ月で油外1,000万円に到達

一方で、昨年11月に新設オープンし、以来、出血赤字が続いているのがニコニコステーション堀之内店(都内八王子市)です。2月も760万円の赤字でした(表2)。

赤字ではありますが、1月は820万円の赤字でしたから「60万円利益が改善した」とプラスに考えることもできます。「どんな時でも良いことを無理やり探して、楽しい気持ちを保ちなさい」と諭してくれた恩師の言葉を思い出します。

何と言っても朗報は、油外収益が1,000万円を超えたことです。オープン4カ月目にしての快挙です。ちなみに、既存店の油外収益が1,000万円を超えるまでにかかった期間を、表3に示します。堀之内店の破天荒ぶりが分かります。

前月と比べると油外が伸び、経費は横ばいでしたので、燃料指数も3.8改善し19となりました。
堀之内店の商圏需要は潤沢ですので、油外はまだまだ伸びるでしょう。燃料指数がゼロを下回るのも時間の問題です。
そもそも、年間営業利益1億円という目標を掲げてスタートした店です。千里の道も一歩から。少なくとも目標達成に向け、一歩一歩前進しているのは喜ばしいことです。

ちょっと想定外なのが燃料油粗利です。口銭が1月はゼロ、2月も3.7円でした。
他の既存5店と同様、販売価格は近隣の主要SSと同じにしているだけなのですが、対抗意識がやや強いエリアとも感じます。
もっとも、当社の所沢店ではマイナス3~5円の口銭が10年間続きましたので、燃料口銭の少なさをいまさら気にやむことはありません。

店長に対しても、当社は燃料油粗利を評価対象にしていません。市況を気にして悩むくらいなら、油外販売に心血を注いでもらった方が、お店の利益になります。ですから、堀之内店の店長も、オープン以来、ただただ機械的に近隣店価格に追随しているだけです。

レンタカーは天井知らず?

堀之内店で伸長著しいのは、レンタカーです。
保有台数は昨年12月は25台、1月は60台、2月は80台と急速に増車してきました。それが売上増に直結しました。夏に向けてレンタカー需要はふくらみ、どんどん活性化しますので、どこまで伸びるか楽しみです。

それはさておき、当社のSSでレンタカーを取り扱うようになってから丸10年が経ちました。
スタッフの質・量にかかわらず、安定的に収益を確保できるので、どの店も大きな恩恵を受けてきたわけです。

ただし、放っておいても売れるからとほったらかしにおくと、商品もサービスも陳腐化、劣化します。そこで当社は、各店のレンタカー責任者で委員会を組織し、定期ミーティングを開催しながら計画、行動、実績のチェックを繰り返してきました。
しかし数年もやっていると、売り上げの伸びは鈍化し、それなりに天井が見えてきたと感じていました。

ところがここに来て、レンタカーが再び伸び始めています。油外粗利に占める割合が大きくなり、存在感を増しているのです(グラフ1)。

SS商圏には少なくとも
年間5,000万円のレンタカー需要がある

この辺りの事情を少し解説します。
当社が主宰する「ニコニコレンタカー」は、「生活レンタカー」を標榜しています。つまり出張や観光などで遠方からいらっしやった方が借りるレンタカーではなくて、地元の住人が日常の「足」として利用する地域密着型レンタカーです。
したがって、徒歩や自転車でご来店いただける半径2km圏が主要商圏です。商圏内に人が住んでいるほど、売り上げは高くなります。

全国規模の市場調査を毎年実施しており、ブランド認知度や利用意向を確認していますが、最新の調査結果によると、ニコニコレンタカー全1500店の平均的なお店は、半径2km圏に月間405万円(年間5,000万円)の需要がすでに顕在化しています。
これをお店の収益に変えるには、平均64台の車両を用意するだけです。
事実、自店の商圏規模から導き出される適正台数の車両を用意して商圏内需要を満たし、大きな利益を出しているお店は、たくさんあります。

例えば、当社の仲町台店。ニコニコレンタカーの第1号店ですが、計算上、商圏内需要は月間529万円、適正車両台数は90台です。
そこで2016年12月時点で車両台数を81台にしたところ、月間売上は550万円となり、商圏内需要の理論値をクリアしました(表4のA)。

車両を増やせば、当然ですが経費も増えます。しかし、車の償却費、維持費、駐車場代や業務人件費を差し引いても、月間180万円の利益を得られるようになりました。利益率は32%。なかなかの高利商材に育ったわけです。

通常はこれで満足します。
あとは全店で同じことをやれば、それぞれのお店の商圏内需要を吸引できるというわけです。

レンタカーはさらなる高みを目指す

ところが仲町台店の店長が意外な発見をしたのです。
自店のレンタカーを1台1台つぶさに見ると、よく稼ぐ車と、あまり稼がない車があることに気づきました。
3カ月前から予約が入る車もあれば、直前にならないと入らない車もあります。 
稼働率が高い車は、貸し出しの頻度が高いので、接客や清掃などの手間もかかるわけですが、その手間の割りに稼ぎの悪い車があります。
反対に、土・日曜日しか稼働しないくせに、たくさん稼ぐ高生産性車両もあります。

そこで、次のような疑問が浮かびました。
「もしも稼ぎの悪い車を捨て、稼ぐ車ばかりを揃えればどうだろうか」と。やってみました。
仲町台店で実験開始というわけです。そして、この2年間、お客様の求める車のカテゴリー、車種、装備、年式にこだわって、処分と仕入れを大胆に繰り返し、ほとんどの車を入れ替えました。

その結果、トータル台数は18台増えただけですが、レンタカー売り上げは月間300万円増えました(表4のB)。

新車、高年式車、高付加価値車を増やしたので、車両償却費は車1台当たり1万円増えました。しかし、メンテナンス費は逆に7,000円低下しました。その他の経費は、ほぼ変わりません。

その結果、営業利益は2倍以上の366万円。つまり年間4,400万円の利益を生み出すドル箱ビジネスとなりました。
利益率は43%。悪徳高利貸しも真っ青の利回りです。

このやり方を「Nメソッド」と名付けました。レンタカー業界は、一般に「稼働率至上主義」ですが、「Nメソッド」は違います。お客様志向に基づく「売上効率至上主義」です。

昨年夏から他の直営店でも「Nメソッド」を展開しました。まだ実行途上ですが、着実に結果を出しつつあります(表4のC)。

昨年秋に新規オープンした堀之内店は、最初から稼ぐ車だけを投入し快進撃です。
そして、今年の春からは、ニコニコレンタカー全1500店に対して「Nメソッド」を順次普及させることになりました。まずはモデル店づくりから始まります。

2、3年後には、全国で笑いが止まらないお店がたくさん出てくると期待しています。

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