燃料油が活況に戻るもSSによって温度差
新年あけましておめでとうございます。
本年も油外放浪記をご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。
今年はトラ年。当社も果敢に「虎穴」に入ってみる所存ですので、乞うご期待。
さて、いつものように、当社SSの実績を振り返ります(表1)。
2021年11月は振るいませんでした。既存6店の営業利益は、前年の3,200万円から3割減少し、2,300万円。販売用中古車の品揃えのためにつくった「中古車架装センター」の経費を、昨年の春からSS負担としました。それ以来、経費の伸びが油外粗利の伸びを上回ってしまっています。
11月も経費は1,500万円増え、油外は650万円しか伸びませんでした。
燃料油収益がかろうじて伸びたのが救いです。緊急事態宣言が解除され、お客様の行動が活発化したからでしょう。
ただ、燃料油の伸びは、店によって差がつきました(表2)。
当社は、燃料油価格を「市況に追随」することを原則としています。これを愚直に実施している所沢店は、販売量が前年比123%と、際立って伸びました。
一方で、堀之内店は販売量が1割以上も減少しました。調べると、実勢価格が競合店より5円以上高いことが判明。加えて、新規客に対しては会員化、LINE登録をお願いするルールになっていますが、そのオペレーションがうまく機能していません。
顧客の確保こそ、SSビジネスの要諦です。…にもかかわらず、目先の販売活動に走り、直接利益を生まない行動はおろそかになってしまったのでしょう。
店の営業利益を店長の評価に直結させてきましたが、その弊害が現れた形です。そろそろ評価基準を見直す時期に来ています。
油外は「人」
既存6店に投入している正社員数は現在65人です。
昨年11月の油外粗利は合計1億1,900万円でしたから、社員一人当たり180万円稼いだことになります。
一方、油外粗利の到達目標は合計1億3,100万円です(表3)。
まだ1,150万円足りません。つまり7人分が足りません。
なんだかんだ言っても、SSの油外販売従事者はエッセンシャルワーカーです。医療や福祉、物流業と同様、リモートワークをできません。したがって、どんな目標も、人が足りなければ絵に描いた餅。
もちろん1人当たり生産性を高める工夫は必要です。たとえばレンタカーは、インターネットが売り、車が稼ぎます。ですから、生産性は飛躍的に高まります。
しかし、多くの油外商品は「人に接してなんぼ」。人が売り、人が稼ぎます。その要員を確保し、配置・戦力化することは、SSビジネスの必須条件と言っていいでしょう。
増員すれば付加価値は上がりますが、経費も増えます。ということはつまり、当社はあと10~15人くらい増員する必要があるのでしょう。
SS人材の採用は手数勝負
残念ながら、SSで働きたい人はそう多くはいません。採用しても半分は辞めていく。縁がなかったと思うしかありませんが、それでも必要数に達するまで採用活動を繰り返すしかありません。
当社は昨期、SS事業で年間20回以上の採用活動を実施し、募集媒体に480万円を投じました。新たに2店を出店したので、やや増えたかもしれません。
200人の応募があり、24人を採用しました(表4)。
1人当たり採用コストは20万円です。しかし、1年以上定着したのは17人ですので、実質採用コストは28万円/人と考えています。
彼らが1人当たり月間180万円、年間2,000万円の付加価値収益を稼いでくれるようになるわけですから、まさに金の卵を産む大切な戦力です。
ご参考までに、当社が昨期に利用した募集媒体をご紹介します(表5)。
媒体により応募単価、採用単価に大きな差がありますが、あまりこだわりません。採用担当者には「募集費用を惜しむな」と指示しています。応募者が増えるほど、面接で絞り込むことが可能になるからです。
ちなみに最も応募数の多い「自社採用サイト」には、Indeedを活用して誘引しました。
ついに車販が車検をかわした
さて、当社SSの11月実績に戻ります。
最大のトピックスは、車販収益が車検収益を追い抜いたことです。
「車検需要は10月以降落ち込む」と、昨年12月号の本稿で述べました。その影響もあるでしょうか、当社のSSも入庫台数はやや減少しました。しかし、台当たり粗利でカバーし、車検粗利は前年比260万円伸びました(既存6店合計)。
それ以上に、車販粗利が伸びたわけです。
当社がSS事業に参入して以来、実に26年間、油外収益の王座に君臨し続けた車検が、とうとう、その座を車販に明け渡すに至りました。
「おやっ?」と思いの読者がいらっしゃるかもしれません。昨年10月号の本稿で「当社は今後、車検に販売活動の軸足を置く」と宣言したにもかかわらず、どうしたわけか車販の勢いが止まらないわけですから。
実は車検は、まだ水面下で準備中。商品力や販売オペレーション、作業オペレーションを抜本的に見直しており、まだSSに落とし込んでいません。
それを知ってか知らずか、SSの車販担当者たちは鼻息荒く販売活動に励んでいます。
中古車現車の販売またはリースが伸びている
車販ビジネスと一口に言いますが、その間口は広く、それぞれに対応した手順があります。
まず販売商品は新車か中古車か、中古車は現車を見せて売るか在庫を持たずに売るか、決済手段は現金かローンかリースか、これらの組み合わせをお客様のご希望や条件に合わせて提案し、契約します。付随してカー用品、保証、自動車保険なども売れます。
さらに車を販売すると「下取り車」が発生します。その処分がまた収益をもたらすわけですが、その延長線上に「買取」ビジネスがあります。車を販売しなかったお客様も「車を手放したい」と来てくれ、査定して値付けします。
というわけで、当社の車販収益の過去5年間の変遷を「グラフ1」で振り返ります。
オークション出品車両を売る「中古車無在庫販売」は、当社ではほとんど取り扱いがなくなってしまいました。
新車リースは競争が激しくなるにつれ、取扱高は縮小気味です。コロナ禍で各メーカーが減産し、納期が長期化したのも響いています。
代わって台頭したのが、中古車現車の販売やリースです。冒頭で述べた「中古車架装センター」がどんどん在庫を補充し、SSは在庫回転率65%を目標に販売しています。
これまでは多少なりとも、環境変化に対応できたでしょうか。
とは言え、中古車オークション市場に「売れる車」の出品が少なくなってきたのも事実です。新車が売れなければ、中古車流通台数も減少します。仕入れがままならなくなれば、売ろうにも売れません。この勢いもいずれ止まるかもしれません。
ところで、意外に「廃車買取」が伸びていることに気づきます。これについては稿を改めてお伝えします。
レンタ&セールス実験の中間報告
大手中古車チェーン店やカーディーラーが、中古車買取を強化しています。買い取った車は市場に流さず、自社商品として在庫し販売するためです。
このあおりを受け、中古車オークション市場は、かなり冷え込んでしまいました。
そこで当社では、レンタカーを中古車生産ベースにできないかと試しています。すなわち新車を仕入れ、レンタカーとして数ヵ月間運用し、その後中古車として販売します。「レンタ&セールス」と称しています。
とりあえず7台の結果がまとまったので、お伝えします(表6)。
平均すると、207万円で購入した新車が、レンタカーとして9カ月間で67万円を売り上げ、中古車として205万円で売れました。1台当たり粗利は65万円です。悪くありません。
当社のSSは現在、420台のレンタカーを運用しています。仮に、全車両を9カ月サイクルで「レンタ&セールス」するなら、計算上、月間46台のレンタカーが入れ替わり、月間3,000万円の収益が発生します。
相当の仕入れ資金を9カ月間寝かせることになりますので、車種や売却のタイミングを含め、損得勘定を追加検証する必要はありますが、事業化の可能性を探っていきたいと思います。