SS全般

油外放浪記第104回「お客様に必要とされ、社員も会社もハッピーになれるSSを目指して」

「ニコニコステーション」当確か?

当社が目指すサバイバル型SSの経営モデルを「ニコニコステーション」と呼んでいます。
その年間営業利益の目標は5千万円。しっかり稼げば、社員も会社も「ニコニコ」になれるというわけです。
と言うは易し。その道はなかなか険しく、本稿で恥を晒す日々を重ねております。
当社SSの3月までの実績がまとまりました(表1)

当社は6月が決算なので今期9カ月を経過した数字ですが、 目が釘付けになりました。当社5店のうち、仲町台SSの営業利益が月間平均430万円。つまり、年間5,200万円となる見通しです。もう私は、飛び上がらんばかりに喜びました。
というわけで、読者の皆様にはぜひ私の浮かれ話を聞いていただきたいと思います。

最初は何をやっても大赤字

初めてSS運営に携わらせていただくことになったのは1995年11月、それが仲町台SSです。横浜市の港北ニュータウンの一角にオープンしました。オープンイベントでは6日間で350klを販売し、「日本記録を塗り替えたぞ」と悦に入ったものです。それもそのはず、3,000万円の経費を投入し、 採算度外視のイベントを実施したからです。

もとより「マーケティング実験店」としてスタートした店ですが、その後も「世界のオイル大集合」「風船専門ショップ」「靴の修理」など、今思えば、的外れな試みを、高額な投資をしては失敗し続けました。
私自身はガムシャラでしたが、はたから見れば「社長の趣味道楽の店」だったと思います。 あっという間に累積赤字は1億円を超えました。

車検とレンタカーで活路が開けた

笑い話には事欠きませんが、そんな中、100個試したうち1つや2つは「当たり」があるものですね。

道路運送車両法が改正され「車検」が解禁になったと聞くや、いち早く飛びつきました。しかし当時、ど素人SSに車検を教えてくれるような学校はありません。そこでユーザー車検代行業者に社員を潜入させたり、陸運事務所の前に捨て看板を立てて、整備士を募集するなど、泥縄(どろなわ)式に体制を整え、いざチラシを折り込んでみました。

訴求ポイントは「車検9,800円」。当時としては、画期的な価格訴求でした。1カ月間に何と416台が入庫しました。その記録は今なお破られていません。正に「雪崩を打ってお客様が殺到 した」と言っていいでしょう。

当時の整備業界は「不透明な車検」「勝手整備」がまだ横行していましたから、時代の変化に当店が見事にハマったというわけです。
車検はその後もあきらめず、試行錯誤を続けました。ようやく単月でSSが黒字化し始めたのは2001年になってからです。

次にヒットしたのは低価格レンタカーです。SSでやれば、従来の半額でも十分に成立すると仮説を立てて、2008年にやってみたところ、いわゆる「生活レンタカー」 という新しいマーケットが誕生しました。

今や「ニコニコレンタカー」だけで100億円の市場規模で、依然成長しています。これも「車離れ」「エコロジー」といった時代のキーワードにマッチしたのだと思います。
とは言え、折から燃料市況の下落と販売量の減少が深刻で、仲町台SSの累積赤字は一向に解消されません。2014年には、再び年間赤字に転落してしまいました(表2)

セルフ化とカーリースが収益レベルを押し上げた

まったく、燃料販売は大波小波の繰り返しで、どんどんSSの首を締めていきます。
行き詰まりを感じていた時、思わぬ転期が訪れます。定期借地権が20年延長できることになったのです。これを機にセルフ給油に改造しました。おかげで損益分岐点が少し下がり、スタッフは給油業務から解放され、油外販売に邁進するしかなくなりました。そこで、車検の拡販やレンタカーのCS向上などに取り組みましたが、2015年に実験投入した「個人向けカーリース」が大ブレイクに至っています。

まさに「カーリース」も市場の変化にぴったりハマったということでしょう。リース会社は何年も前からサービスを提供していたものの、どの販売事業者も販売手順が分からず放置していました。ですから顧客は、その存在すら知りませんでした。

たまたま当社が試行錯誤し、「こうすれば、SSの顧客が理解し納得する」という方法を見い出すことができました。月を追うごとにその練度が増しているので、契約台数は月を追うごとに増加しています。
ともあれ、車検、レンタカー、カーリースの相乗効果で、とうとう年間営業利益が5,000万円を超えるSSになったわけです。

この事実は、特殊能力を持ったスタッフもいない、絶好の立地条件にあるわけでもない、ごく普通のSSが、安定的に毎年5,000万円以上の利益を確保できる、そのプロトタイプが完成したことを意味します。そして「今頑張って生き残りさえすれば、いつかは必ず道は開ける」と信じ、日々厳しい戦いを続けている多くのSS事業者の皆様にとって、強力な助太刀になると感じている次第です。

当社は特別なのか?

当社は、本当に試行錯誤を繰り返してきました。今にして思えば、無駄なお金と時間をずいぶんかけてきたものだと思います。しかし、成功のポイントが検証された今、多くのSSは短期間かつ最小限の投資で、当社SSと同様に経営改善できるはずだと確信します。

—と、同業者の方々に息せき切って話すのですが、必ず言われることがあります。「MICさんは特別だから…」と。「大量の車検を受け入れられるだけの指定工場設備がある、整備士もいる、何十台もの駐車場もある。どの店にも車番認識システムを設置しているし、レンタカーもたくさん保有している。しょせん、我々のSSとは次元が違う。ウチには無理無理…」

それを聞くたび、私はがっかりしてしまいます。単に「やるかやらないかだけなのに」と思うのです。
当社のSSと一般のSSを比較してみました(表3) 。


確かに、当社のSSはいろいろな設備・装備が備わっています。スタッフも多く配備されています。したがって、経費も一ケタ多くなっています。表面的に見るとそうでしょう。

しかし仲町台店は当初、簡易リフト1基でスタートしました。他の直営4カ所の店舗はいずれも普通のSSを運営継承したものです。つまり、今ある設備· 装備は、後から追加したにすぎません。その気になれば、どのSSでも追加できる「武器」ばかりです。

設備投資をせず、何とかして稼ごうとするから無理が生じるし、苦境から抜け出せません。「ニワトリが先か、タマゴが先か」を論じるより「さっさとタマゴを産むニワトリを買ってくればいいのに」と思います。

前記・表3に見るとおり、一般SSは経費の0.6倍しか油外収益が上がりません。これでは設備投資に二の足を踏むのも当然でしょう。しかし、ここを突き抜ければ、総経費を油外収益で賄える日が必ずやってくることを、ぜひ知っていただきたいと思います。

ローコストを徹底した所沢SS

前記・表3をよく見ると、1カ所だけ異質なSSがあることに気づきます。所沢SSです。
他と比べて経費が大幅に少ないにもかかわらず、月間250万円の営業利益が出ています。

このSSは埼玉県所沢市の郊外、畑と林と廃棄物処理場に囲まれた寂しい場所にあり、運営継承したのは2005年のことです。設備は今もほぼ当時のまま。他所に駐車場は借りていません。レンタカーはSS敷地内で10台だけ運用しています。

ちょうど、セルフ給油が解禁された頃に作られたセルフSSなので、給油設備だけは立派です。同時給油8台で月間700klを売っていたそうです。運営交代した時点では月販500klになっていました。

その後、新しい道路ができたり、周辺に元売会社の直営店が次々と新設されたため、今や月販160klです(グラフ1) 。

燃料油口銭もここ数年は1円内外ですから、給油所としては大凋落です。一時は「閉鎖やむなし」と真剣に考えたこともあります。

他のSSはすべて神奈川県内にありますが、この所沢SSだけは埼玉県。なかなか本社がコントロールできなかったことも否めません。したがって、赴任した店長は孤軍奮闘し、コストの削減を徹底しました。かろうじてスズメの涙ほどの黒字を維持しました(グラフ2)。 およそ当社らしくない「縮小均衡」SSの典型です。

店長は、この地に骨を埋める覚悟で市内に家を建て、家族と従業員を守るため必死です。正社員は3名に固定。長時間労働を強いられ、給与は上がらず、「夢も希望もない毎日」(店長談)を過ごしていました。精神・肉体ともに疲労困憊に達していたに違いありません。

屈指の採算SSに変身

転機は2013年に訪れました。全店を挙げて「車検台数を年間8,000台に倍増させよう」というプロジェクトが始まりました。所沢SSの店長もこの取り組みに起死回生を狙います。同店の販促費は月額30万円増加しました。苦渋の選択だったと思いますが、結果は「吉」と出ました。

車検台数が月30台増え、収益は150万円増加しました。油外収益は2015年に月間600万円を超え、100万円以上の営業利益が出せるようになりました。

そして2016年、店長は個人向けカーリースにも取り組みます。すでに他店で検証済みでしたから、無駄な実験コストは省略できます。月50万円だけ販促費を追加しましたが、車販収益は250万円増加しました。

もう一度、前記・表3の「人件費効率」を見てください。当社のSSは、いずれも生産性の高い商品に集中するという方針でやっていますので高いですが、中でも所沢SSは280%とトップです。
いかに個人個人が日々ベストを尽くしているかが計り知れます。

決して店長たちの献身的な働きぶりを「美談」にしたいわけではありません。ローコストを追求した店でも「ツボ」を外さなければ十分に戦えることが実証されていると思うのですが、いかがでしょうか。

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