SS全般

油外放浪記第133回 SSの経営体質を変えるレンタカー」

顧客が増えれば、油外も売れる

当社直営SSの9月の実績を表1に示します。

9月の営業利益は、前年は5店合計で600万円でしたが、今年は1,970万円と3倍増。
さらに、新設した堀之内店が加わり、全6店舗で2,000万円を突破しました。

これまで9月のギネス記録は997万円でしたから、これを大きく更新したことになります。
既存5店の変化を見ると、燃料油は販売量が200kl増えましたが、粗利は横ばい。経費も横這いですが、人件費は減少しました。これは労働投入時間が1,000時間減ったからです。

にもかかわらず、油外粗利は1,400万円増加しました。当社も少しは「働き方改革」が推進されているでしょうか。生産性の高い商材(車検、車販、レンタカー)に注力してきた結果です。
ガソリン増販に努めてきたことも大きいでしょう。

かつてモータリゼーション華やかなりし頃は、ガソリン増販施策によって1店当たり100kl単位で増販したものです。しかし昨今は、車離れや低燃費車の普及など、SS業界に逆風が吹いています。それにあらがって、1年でわずか200kl(1店当たり40kl)の増販は、「無駄な努力」と見えるかもしれません。

しかし当社の増販目的は、油外販売対象客である来店客の増加です。1台当たり給油頻度が激減していることを考えると、それなりに客数は増加していると見ていいと思います。
それが油外粗利の増加に直結しました。

新設店の赤字出血が止まったか?

堀之内店が黒字を計上したのも朗報です。
昨年11月にオープンして以来、黒字になったのは、車検需要月の3月、レンタカー需要月の8月、そしてこの9月が3度目です。

油外販売を前提として設備投資したため、損益分岐点は2,000万円と高い店ですが、その半分をレンタカーで稼ぎました。

当社直営店の中で、レンタカーは8月、9月と2カ月連続トップの業績です。人時生産性も7,000円と、先輩店をかわしました。
この調子が続き、年間通じて黒字基調で転換してくれることを期待しています。

ちなみに堀之内店は、オープン当初からリスト取り・会員化を徹底したため、早くも500klスタンドヘ成長しました。
つまり車検も車販も、堀之内店が当社のトップに躍り出るポテンシャルが備わってきたのです。あとは既存5店に匹敵する販売力を養うだけです。

自動車保険が迷走中

以前本稿で、当社が自動車保険への取り組みを本格化しようとしていると述べました。10年後に保険契約者数を1万件にしようというものです。

「10年間で1万件」に到達するには、中途解約を加味すると、毎月100件の保険契約を獲得し続けることになります。
当社のSSには、毎月1,000件近い車検、または車販のお客様がいます。このうち1割の方に保険を契約していただくのは無理がないように思えます。

そのためには、まず保険のプロ人材を育てよう、次に彼の指導のもと、各店に3名程度の保険販売員を育成しようと考えました。
さっそく当社で実績と経験ナンバーワンの店長(O君)を抜擢し、保険会社に出向してもらいました。出向先でたちまち頭角を現したO君は、1年後、圧倒的な実績をひっさげて戻ってきました。

O君を中心に本社内に保険業務支援チームを結成。保険会社からも若い社員が出向していただいたので、男女4名の精鋭チームができました。O君たちは、使命感に燃え、各SSの保険担当者育成に粉骨砕身、繰り返し知識を伝授し、組織づくりをしてきました。
しかし1年半が経って、保険契約件数は月50件程度。まだ目標レベルの半分です。

アメとムチだけでは効果は出ない

これには当社の評価基準が関係しているかもしれません。
2014年、当社は評価基準を刷新し、店の営業利益を主な評価対象としました。その結果、SSスタッフの意識のベクトルは統一され、生産性の高い行動に向かい、全店ともに業績がめざましく改善しました。

しかるに、自動車保険の販売収益は、1件の成約につき年間約1万4000円、月払いだと今月は1,170円くらいにしかなりません。これではスタッフも本気になれないのです。

保険販売は、10年先を見据えた公共事業のようなものだと理解をしてくれても、どうしても目先の利益が優先行動になってしまうのです。

そこでO君の助言を受け、評価基準に保険契約数を加えました。契約数によって昇格(昇給)も降格(減給)もありますよと。
たちまち現場の行動は変わりました。商談件数が増えたのです。しかし、実績が伴いません。やればやるほど「破談」の山。
ああ、またしても、やってしまいました。

SSスタッフたちは、突進したはいいものの、戦い方が分からず玉砕しているのです。
考えてみれば、車検販売にしても新車リースにしても、お客様の関心を引き、共感を得るに至る手順、タイミング、それにともなうツールなどを、随分と研究開発し、標準化したからこそ、今日の結果が出ているのです。
それをあろうことか、SSに保険販売を丸投げしてしまいました。

勝ち目のない戦いを強いられ、現場のモチベーションも低下気味。功を焦った私の責任。まだしばらくは、七転八倒が続きます。

レンタカーと畳は新しい方がいい

つくづく自動車保険は厄介です。対照的にレンタカーは、シンプルこの上ありません。
車を用意し、所定の作業を淡々とこなすだけで回ります。
生産性が極めて高いので、店長はじめ、現場スタッフも前向きに取り組みます。

ニコニコレンタカーというフランチャイズチェーンを10年間運営してきて、その方法論は、ほぼ完成形に近づいたかと感じていました。
ところがある時、当社仲町台店の店長が気づきます。「社長、よく稼ぐ車と、あまり稼がない車があります」と。

これが「Nメソッド」誕生の発端です。
2017年、仲町台店で実験が始まりました。稼がない車を処分し、稼ぐ車を増やしてみようと。

これにセンター南店(旧茅ヶ崎店)も追随しました。案の定、「稼ぐ車」の比率を高めるだけで売り上げは増えました。経費はほとんど変わりません。つまり、営業利益が増えたのです。
翌年、他の直営店もこれに倣い、検証を繰り返しました。

堀之内店はオープン当初から、「稼ぐ車」だけを投入しました。すると、たちまちナンバーワン実績ヘロケットスタートしました。

そのポイントを「表2」にまとめました。
経営者の意思決定一つで、容易に実行できる行動ばかりです。技術も能力もSSの規模も関係ありません。

「稼ぐ車」の特徴の一つは、高年式であることです。前回も述べましたが、高年式車ほど、現場の手間も経費もかかりません。それでいて、顧客満足度は高く、その車を気に入って、反復利用してくださる一定のファンがつきます。

ところで、平日の稼働率を気にする管理者がいらっしゃいます。駐車場にずらりと眠っている車を見て、「無駄だなぁ」と感じてしまうのでしょう。
しかし平日に稼働する店は、週末の車が足りていない、つまり大きく機会損失していることを意味します。

「レンタカーは週末に稼ぐ」と割り切った方がいいでしょう。週末需要に合わせて、台数を用意し商圏内需要をしつかり確保します。そして「稼ぐ車」を保有することで利益は拡大します。

Nメソッドの効果

「Nメソッド」の効果をお伝えします。
当社のセンター南店(旧茅ヶ崎店)の、「Nメソッド」投入前と投入後の8月実績を比較しました(表3)。

この店は、横浜市の住宅地に立地し、敷地210坪の小規模のセルフ給油店です。
レンタカーは、売上目標に合わせて増車しています。この夏も新車を15台増やしました。

1台当たりの収支を見てください(グラフ1)。

売り上げが増えました。
でも、経費は変わりません。営業利益率は60%に改善しました。
改善したのは8月という需要期だけではありません。

グラフ2は、当社直営店の9月実績の推移です。レンタカーだけで1,000万円の営業利益(5店合計)を出せるようになりました。

堀之内店も加わりました。
堀之内店ではすでに300万円以上の営業利益を稼ぎ出していますから、このペースが続けば、当社SSはレンタカーだけで年間1.5億円の営業利益を見込めます。

当社以外でも効果を実証

当社の直営店だけではありません。
今年の春、ニコニコレンタカーFCの会合で、「Nメソッドをやってみませんか」とお誘いしたところ、17店の経営者の手が挙がりました。

17店の所在地は、東北、関東、中部、関西、中国、九州に点在しますが、さっそく4月に各店の市場調査を行い、翌5月に改善計画を立案しました。
これを「トップランナープログラム」と称しています。

活動の第1段階は、8月の売上目標を達成することでした。店ごとに「いくらの予算で、どの車種(年式)を、何台増車する」と意思決定していただきました。そして、9月の会合で、その結果を検証しました(グラフ3)。

多くの店が目標をクリアし、全体として前年同月比141%伸びました。当社直営店は133%でしたから、これを凌ぐ伸び率です。

経営者の皆様も晴々とした顔で、明るく感想を語ってくれました。
「思い切って増車してよかった。まだまだ需要があると感じる」
「増車しても台当たり売り上げが変わらない。腹の底から確信できた」
「高年式車両がびっくりするほど稼いだ。むしろ、こっちの方が回収が早いと実感している」
ーなどです。

トップランナープログラムの活動は今後、増車・減車しながら商品力を強化し、さらに経費にもこだわって利益改善を図る計画です。

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