SS全般

油外放浪記第132回「レンタカーは高年式車両へ転換しよう」

8月は、営業利益が3倍増

当社の直営SSの8月実績を示します。既存5店の営業利益は、前年は1,000万円でしたが、今期は2,900万円となりました。3倍増です。
さらに、昨秋に新設した堀之内店(東京都八王子市)も330万円の黒字を出しました(表1)。

当社が目指すSS業態(ニコニコステーション構想)の営業利益目標は年間5,000万円、月間平均420万円です。
既存5店の平均実績が580万円でしたから、8月はクリアです。これをひと月ひと月、積み重ねていければいいと思います。

既存5店の収支の内訳をみると、まず燃料油販売量は185kl増えました。
油外商品は、特にレンタカーが900万円近く増え、油外粗利の4割を占めます。
8月は平月に比べ、車検も車販も洗車も需要が落ち込みます。レンタカー需要だけが突出する書き入れ時ですが、全店ともにギネス記録を更新しました。

人件費が減少しました。
昨年8月は、堀之内店の新規オープンを控え、その要員を既存店で新規採用し、訓練していたため、やや過剰気味でした。

ガソリン販売量が増えると油外も増える

当社の燃料油販売量は2006年12月以来、実に13年振りに2,000klを超えました。13年前は4店で2,000kl、今回は6店合計で2,177klです。ギネス更新に心が躍ります。

「油外放浪記」という連載タイトルを掲げているため、「MIC社長は、ガソリン販売に興味がない」と思われがちですが、そうではありません。
昭和生まれの私には、古き良き時代の「ガソリンスタンド」店主のDNAが、しっかり染みついています。ガソリン増販は素直に嬉しく感じます。

でも、時代は変わりました。
「郷愁」や「気分」でお腹は満たせません。当社のような中小の石油販売事業者がいきていくための、切実かつ現実的な選択肢が油外販売です。これは好き嫌いの話ではありません。
燃料油の増販が油外販売に結びつかないと、今の時代、意味がないのです。
当社の燃料油販売量が伸びたのは、ひたむきに「新規客に対するリスト取り」に取り組んできたからです。

「ハフモデル」というマーケティングの公式があります。
「お客様は、大きい店ほど距離の近い店ほど来てくれやすい」「顧客の吸引力は、距離の二乗に反比例する」という考え方です。
つまり小売店は、足元商圏のお客様、向こう三軒両隣から攻略するのが鉄則です。遠くのお客様に来ていただくには、広告宣伝など多大なエネルギー(コスト負担)を要します。

燃料油需要そのものが減少している環境下にあって、「リスト取り」というエネルギーをかけてまで、当社がお客様の継続利用を促すのは、油外販売を楽にするためです。
給油目的での来店は、その瞬間、店とお客様との距離がゼロになります。こんなに売りやすいお客様はいません。

表2は、8月のL当たり油外粗利の変化を示したものです。ほとんど変わっていません。

つまり「来店客数が増加しても客単価は変わらない」「燃料油が増えれば油外も増える」と言えます。

私が燃料油増販にこだわる最大の理由は、ここにあります。
ちなみに13年前と今回の当社SSの収益構造を比較してみました。表3に示します。

レンタカー台数を増やせばちゃんと儲かるのに・・・

さて、油外商品の中で、レンタカーだけは給油来店客数と関係ありません。
レンタカーは来店客におすすめするものではなく、ガソリンと同様、それを「買いたい」お客様が目的来店してくれます。

オープンして1年に満たない若葉マークの堀之内店は、3月の車検需要期に黒字を計上したのですが、今度は8月のレンタカー需要期に黒字達成しました。
レンタカー売り上げは1,300万円、油外粗利の6割を占めます。販売力の弱い堀之内店にぴったりハマりました。販売活動が不要ですから、人件費も抑えられます。したがってレンタカーは人件費効率を高めます。

グラフ1は、当社直営店の8月の「レンタカー収益貢献度(ヨコ軸)」と「人件費効率(タテ軸)」を、プロット(描画)したものです。相関関係が大きいことが分かります。

レンタカーも前述の「ハフモデル」が当てはまります。事業規模(保有台数)が大きく、商圏内世帯数が多い店ほど、お客様が集まります。
たとえば足元商圏に3万世帯ある店を想定します。平均的な商圏立地のお店です。そこにはすでに、月間300万円以上のレンタカー需要が顕在化しています。この需要を自店の売り上げにするには、30~50台の車両を用意するだけです。極めてシンプルな理屈です。

当社が主宰するニコニコレンタカーのFC店に対しては、数々の検証事例を交え、何度も何度も繰り返し説明してきました。そしてその通りに実践し、毎月数百万円を売り上げ、商圏内需要を獲り切るお店は100店舗くらいあります。

しかし、ニコニコレンタカー1500店のうち約1,000店は、車両台数が10台以下です。これでは、ほとんど利益を出せません。下手すると赤字が累積するボランティア事業です。
なぜ、需要に見合う適正台数としないのでしょう。この10年来、私は疑問に思ってきました。

店長にとって耐えがたいクレーム

それが最近、突如として「あぁ、そうか」と気づきました。おそらく多くの店長に共感していただけると思います。以下、整理してみます。

SSに限らず、どんな商売にもクレームはつきものです。クレームを恐れたら商売はできません。
悪質クレーマーもいますが、多くは、店側の落ち度や不手際が原因でクレームは発生します。
原則として、店長がクレームに対応します。誠意ある謝罪、心からの反省と今後の対策を提示することにより、許してもらいます。最悪の場合は、返金や弁償が伴うこともあります。
こうした日常的なクレームを経験して、店長はその処理能力を磨いたり、精神的な耐性が鍛えられます。

ところが、レンタカーには、異質なクレームが発生します。
少し前に「はれのひ」という貸衣装屋さんが突如倒産し、「成人式の日」当日に予約をしていた多くの新成人が被害を被りました。成人式が台無しになり、ワイドショーを賑わした事件を覚えているでしょうか。

実は、レンタカーもその要素をはらんでいます。店員の落ち度や不手際に対するクレームではない場合があるのです。
「山中でエンジンがストップした」「炎天下でエアコンが効かなくなった」「知らない街でカーナビが壊れた」「雨が降ってきたのに、窓が閉まらない」などと言われますが、その本質は怒りです。「せっかくの旅行だったのに…」「家族や友人との楽しみをぶち壊された」「大切なデートが台無しにされた」など、取り返しがつかないことに憤っているのです。

「私の晴れ舞台を台無しにされた、どうしてくれるんだ!」どうすることもできませんね。
いくら謝っても、返金しても、お客様の気持ちは晴れません。改善対策も打てません。どんなに日常整備を徹底しても、古い車は、確率的に壊れやすい。これは不可抗力ですから、誰の責任でもありません。

といって、店長は、お客様には口が裂けても「自分の責任ではありません」とは言えません。
「私はクレーム処理ができません」「クレームをつけられるのが嫌だから、レンタカー業務をやりたくありません」とも言えません。

店長の気持ちは鬱屈します。
会社が「レンタカー台数をもっと増やそう」とでも言おうものなら、「とんでもない。クレームが増えるだけ」と心の中で激しく抵抗します。

店長は、社長に対し必死で進言します。「まだ稼働率80%ですよ。もったいないですよ。もうしばらく様子をみましょう」。

車を新しくすれば万事解決

そう言えば、数年前に、当社のレンタカー専業「新横浜駅店」のレンタカー100台のうち7割を新車に入れ替えたことがありました。
その店長が話していたことを思い出しました。

「以前は、貸出中のお客様から電話があるたび、ドキドキしていた。お客様が無事に戻って来るたび、ホッとしていた。今はそんなストレスもなくて、すごく楽しいです」と。

能天気な私は当時、その真意を推し測ることができませんでした。
私自身、15年落ち、20万キロを走行した愛車を使っていて、何の不自由もありません。
日本車は、高品質です。走行距離10万キロを超え、商品価値をなくしても、処分するのはもったいない。整備して再利用すれば、お金を生みます。

「中古車レンタカーで何が悪い。1000人のうち999人は喜んでいるじゃないか、それがSSレンタカーだ」と本気で考えていました。

しかしどんなに点検整備しても、電装部品などは、ある日突然故障します。航空機は、劣化具合に関係なく定期的に全パーツを交換するそうですが、レンタカーでそんなことをすれば、コストが見合わない。

マイカーならば、壊れても整備工場に入れ、代車を借りれば何の問題もありません。極めて日常的な対処方法です。しかし、レンタカーは「ハレ」(非日常)に使うお客様が多々いて、それが厄介なクレームを発生させます。

唯一の解決策は、レンタカーを新しくすることです。経験上、5年落ち以下の車なら、まず壊れません。当社は数年前より「Nメソッド」と称して、人気の高い車(稼ぎのいい車)に入れ替えてきました。
その結果、新車や高年式車の構成比は8割を占めるようになりました。すると車の故障によるクレームがなくなりました。なお、バッテリーだけは劣化度に関係なく、2年ごとに交換しています。

車を新しくするメリットは他にもあります。
何と経費が下がりました。整備コストが劇的に下がっただけではありません。新しい車は、仕入れ価格がかさみますが、償却後の売却益(残価)も多いため、実質的な車両経費はあまり変わらないのです。

クレーム対応やスタッフのストレスには目に見えないコストがかかります。生産性の悪化を招いていたことでしょう。しかし、それもなくなりました。

売り上げが増えました。新しい車はお客様の満足度も高く、リピート利用、長時間利用が増え、稼働率が上がりました。そういうわけで、レンタカーの利益率は大きく改善しています。

こうした状況を踏まえ、ニコニコレンタカーは今年、方針転換すると発表しました。10年前の「中古車レンタカー」というコンセプトを捨てましょうと。
商品力を高めれば、売り上げが増え、経費は下がり、利益が増えます。お客様は喜び、スタッフも積極的になる。いいことづくめです。

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