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油外放浪記第163回 車検、車販、レンタカーのトリプル需要期 3月を振り返る

3月も収益増を経費増が上回ってしまった

3月下旬から4月にかけ、連日報道されるトップニュースは、ウクライナ戦争、次いで国内ニュースでは、ガソリンを筆頭に、生活用品・食品の相次ぐ値上げです。

当社のSSは、LINE会員70,000件を背景に、燃料油販売量が前年比107%のペースで伸びてきました。しかし、3月の燃料油販売量は、8店で66kl増えたにとどまりました。
戦争の成り行き次第では、今後、オイルショックやインフレ到来の可能性もあります。

さて3月は、油外の書き入れ時です。車検、車販、レンタカーともに需要期で、当社は8店で1.8億円の油外粗利を稼いでくれました。前年比2,300万円増です(表1)。
残念ながら、経費が2,500万円増えたため、営業利益は前年実績を40万円下回ってしまいました。

車検の方針転換に時間がかかる

利益が伸びなかったのは、車検の不振です。入庫台数が前年より161台も下回ってしまいました。車検の需要自体が減少期にある(前年比90%前後)ことだけが原因ではありません。

車検販売方法を「プッシュマーケティング」から「プルマーケティング」へ転換したため、現場対応が追いつかなかったのだと思います。脱炭素社会の到来を睨み、当社は顧客づくりを車検から始めることにしました。

これまで販売促進偏重による新規客の大量獲得という方法をとってきました。しかし、「車検再生」と銘打ち、SS利用客に対する店頭販売に注力し、車検実施・アフターフォローを通じて信頼関係を構築、リピート率を上げていく方向ヘシフトしています。

これに伴い、商品内容や販売手順も見直しました。1~3月の車検キャンペーン中ながら、これを現場にじっくり時間をかけて落とし込んでいます。目標管理の頻度も緩和しました。

その結果、キャンペーン目標を達成したのは、8店中1店(寒川店)のみ。 うーん、さすがにちょっと心配になってきました。2年後にはリピート率が上がり、入庫台数が一回り大きく成長することを、ハラハラしながら期待しています。

レンタカーもリピーター層の蓄積が成長を支える

レンタカー収益が当社のSSは前年比1,100万円伸び、4,800万円となりました。130%の成長です。
これは全国的な傾向で、当社が主宰するニコニコレンタカーも同様に好調です。3月は過去最高の利用件数を記録しました。
レンタカー需要のピークは8月です。次いで3月となりますが、やはり8月がダントツに需要が高まります。

ニコニコレンタカーは、幸いにも年々成長していますが、それでも3月の実績が8月を上回ったのは快挙です。

SS兼業レンタカーは、運営経費を圧倒的に下げ、利益率が大きいのが特徴です。「中古車レンタカー」と称していたのは、過去の話。今や最もコスパの高い新車のラインナップヘと、多くの店がシフトしています。

たとえば、当社のSSはレンタカーを473台(8店合計)運用していますが、平均車齢は1.5年と若返りました。

また、昨年春ごろから、専用開発したスマホアプリをダウンロードしていただくよう、全FC店を挙げてプロモーションしています。
これらの活動が各店のリピーター層の蓄積と利用促進に拍車をかけ、最需要シーズンを上回る業績を出せたのだと考えます。

車販の勢いに人が追いつかない

車販も絶好調です。3月は8店で211台販売しました。
が、ここに来て、新たな問題が浮上しました。目標の伸びに、人の能力の伸びが追いつかなくなっています。

当社は、組織的に車販に取り組んでいます。在庫を拡充する部門、広告宣伝を増大させる部門があり、その結果、SSへの問い合わせ件数・来店数は順調に増加しています。

ところがSSでの成約率は下降気味。その理由を仔細に調べると、商談件数の増大に反比例して、車販スタッフの行動に「手抜き」が増えていることが分かりました。なるほど、またもや「人」の問題です。

今、当社は車販スタッフの候補生を20人増員しているところです。しかし、このままでは、新人が既存スタッフの劣化した行動に染まってしまいかねません。
あらためて、標準手順の統一化、個人別行動チェックを徹底したいと思います。

旗艦店に女性店長を登用/仲町台店

表1に、今回トピックスとして挙げる店の実績を併記しました。まずは仲町台店です。
当社の第1号店で、旗艦店でもある仲町台店ですが、3月に店長が交代しました。寒川店のN店長に来てもらいました。

彼女は、子育て中のシングルマザーです。寒川店を運営継承した時にアルバイトとして採用し、2年後に社員登用、車販でメキメキ頭角を現し、同店の店長に抜擢しました。当社初の女性店長です。
慢性赤字だった寒川店を、4年間で見事、年間5,000万円の営業利益を稼ぐ店に育て上げてくれました。

そして今回、神奈川の郡部の店から横浜市内の住宅地の店へ異動しました。栄転ですが、重責を背負います。

仲町台店は、SS単独店ではありません。
向かいの指定整備工場と中古車買取店を構える巨大組織です。店長のマネジメント能力が問われます。

もっとも、役割分担して組織が動いているため、直ちに業績が変化するものではありません。就任した3月の仲町台店の営業利益は1,100万円で、当社トップの実績ですが、店長交代の影響は少ないでしょう。
彼女本来のポテンシャルは3カ月後くらいから現れるに違いありません。活躍ぶりを注視しています。

時間をかけ地道に改善中 小田原東IC店

今、最も悩みの種は小田原東IC店です。
昨年1月に運営継承しましたが、想定以上に商圏、立地、設備条件が悪く苦戦しています。 当社としては珍しく、縮小均衡の作戦をとっています。人員削減、販促縮小、レンタカーも最低限、すなわちコストを抑制し、1年かけてようやく収支トントンとなりました。

赤字が消えた今、持久戦に突入しています。
筋トレよろしく、ストイックに販売力をじわりじわりと高める作戦です。
限られた人件費を生産性の高い「車販」にシフトしたため、3月の車販粗利は前年比50万円増えました。しかし車検、その他(オイル交換や洗車など)の粗利が80万円ダウン。
あちらを立てればこちらが立たず。

燃料なくても油外が売れる 新百合ヶ丘店

小田原東IC店の翌月、立て続けにオープンしたのが新百合ヶ丘店です。
前運営者が閉鎖後、1年以上経って運営継承しました。
川崎市の住宅地の生活幹線道路に立地し、間口は広く、同時給油8台のゲート式レイアウト、敷地面積600坪に広いセールスルーム、整備リフト3基、塗装ブースも備える設備条件は、まさに理想的なカーケアステーション。長期間放置されていたのは、家賃がやや高めだったからでしょう。居抜きで運営継承しました。

この店はいい意味で、業界常識を覆してくれています(表2)。

店長のH君は、当社最小規模 (210坪)のセンター南店の店長として、やはり年間5,000万円の営業利益を稼ぐ店に育て上げてくれた28歳の若者です。

最小規模のSSから最大規模のSSに移り、存分に羽を広げ、大活躍の1年間でした。
燃料油販売量は、なぜか月販130kl前後で頭打ち。
給油客数が少ないにもかかわらず、毎月の油外収益は2,000万円を超え、3月は2,800万円を叩き出しました。
総粗利に占める燃料油粗利の構成は、わずか4%。

私たちはこれまで、ガソリン販売による高頻度来店・顧客接点こそが、油外販売の生命線だと信じてきました。しかし、給油設備がなくても油外が売れる、その可能性を力強く示唆してくれていると思います。

翻って、燃料油が月販130klしか売れないのは、いまだ謎。こうなりゃ、ガソリンを原価で売ってみましょうか(笑)。

ようやく自動車保険契約数「月100件」に到達

古来、SSの販売スタイルは、掲げた販売目標に向かい、スタッフが店内を走り回るというやり方です。

「ご苦労さま、明日も頑張って」と繰り返しているうち、あっと言う間に1カ月が過ぎる。
「目標達成おめでとう」「惜しかったね、来月は頑張って!」
そして、月が変われば、またゼロからのスタート。
これを30年間繰り返してきましたが、だんだんイヤになってきました。

今日頑張った結果が、将来に着実に積み上がっていく、そんなビジネススタイルにしていきたい。そういう思いから、私は「自動車保険」の販売にこだわってきました。

2016年、私は「10年以内に保険契約数を1万件にする」と社内発表しました。毎月100件ずつ契約すれば、達成できます。
まず優秀なSS店長に損保会社に出向してもらいました。1年後、彼はナンバーワン実績を引っ提げて帰ってきました。

次に、彼をリーダーに、5名の保険専任チームをつくり、各SSには、保険販売員資格を3名以上取得させ、個別研修を繰り返しました。

そして、車を買っていただいたお客様に勧めました。お勧めをすれば、半数は契約してくれます。しかし、忙しい時は勧めることができません。保険契約数は、月間35件程度(1店あたり6件/月)でした。

これでは足りません。車検客にも勧めてみました。ある魔法のフレーズを使うと、ほとんどのお客様は点検のときに保険証券を持ってきていただけます。しかし、整備士は点検して整備を売ることに夢中で、どうしても保険の話にまで至りません。

そうこうして6年が経ちました。現在の累計保険契約数は2,500件。本来なら6,000件に届いているべきところ、目標の4割です。

どうしてもSS現場は保険販売を軽視してしまいがちです。頑張って契約を獲得しても、月々の手数料収入はわずか1,300円ほど。販売の煩雑さを考えると、車検や車販に注力した方がはるかに効率がよいのです。

では、保険をSSでの対面販売ではなく、電話で販売してみたらどうだろうと考え、やってみたのが昨年7~9月。本社事務パート2名に台本を与え、新車リースの契約客に電話したところ、何と7割が保険契約してくれました(本稿2021年11月号既報)。そこで今年から体制を整え、スタッフも増員しました。自動車を購入またはリース契約していただいたお客様を対象に、電話セールスをしています(表3)。

SSの車販担当者は、成約客の情報を本社に送るだけ。ところが1、2月とやってみて、7割しか送客されていません。
「100%送客せよ」と指示すると、3月は248件の送客がありました。

うち保険の商談ができたのは147件。保険契約を取り付けたのは、何と7割の103件。
苦節6年、ようやく念願の「月間100件」に到達することができました。

今後20年、30年で、当社の保険契約客数はどこまで伸びるか楽しみになってきました。私は、たぶん生きていないでしょう。しかし、保険は「脱炭素」とは無縁です。今の若い社員たちが中高年になったとき、今日の頑張りが大きな安定収益源となっているに違いありません。

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