SS全般

油外放浪記第165回 SSレンタカーは脱炭素時代の切り札

世の中が正常に戻りつつある

当社SSの5月実績は、燃料油、車検、車販、レンタカーすべて前年実績を上回りました(表1)。

行動制限が全国的に緩和され、世の中の人々もコロナに馴れてきたように感じます。レンタカーは8店で約500台を運用していますが、ゴールデンウイークを筆頭によく稼働しました。

燃料油販売量は微増です。ガソリン価格高騰下にあって減販しないのは、LINE会員の獲得と会員に対する来店促進が効いているからでしょう。
下降気味だった車検も、5月は復調しました。
そして車販です。月販200台(8店合計)のレベルを維持するようになりました。

半数が中古車検索サイトから入店する

自動車販売に至る道はいくつかあります。
店頭の展示車を見る顧客に声をかけたり、車検販売や整備見積もりを提示する際にお客様が「乗り換え」の希望を打ち明けてくれたり、あるいは、クチコミや紹介で来店される方もいらっしゃいます。

しかし圧倒的に多いのは、「グーネット」や「カーセンサー」を見たお客様からの問い合わせを受け、来店アポイントをとり、現車を見せ、販売するパターンです。

お客様との会話の中からニーズを発見し、顕在化させ、成約に結びつける方法は美しいですが、残念ながら当社のSSではあまり見られません。
やはりSSスタッフは、能動的に販売行動するよりも、受け身で対応する方が大好きです。

…というわけで、車販台数を増やすには、まずは問い合わせ件数を増やす必要があります。
問い合わせ件数を増やすには、お客様が検索したときに、当社SSの在庫車両がヒットしなければなりません。

そのためには、中古車検索サイトに大量の車両を掲載する必要があります。
5月は710台を掲載しました。このうち見積もり依頼が338件あり、96件を成約しました(表2)。

掲載料は約300万円かかります。したがって、CPO(成約1件当たり広告宣伝費)は約3万円となります。

当社は、広告宣伝費は粗利の2割以下とすることを目標としています。車販1台当たり粗利が15万円として、3万円はちょうど2割。許容範囲ギリギリです。

かつて紙媒体の中古車情報誌が主流だった時代は、とりあえずご来店していただくこと、すなわち店を選んでもらうことが広告の主目的でした。

「目玉商品」を掲載すればよかったそうです。しかし、デジタル情報になった今、顧客はお目当ての車を検索し選んでから来店されます。
つまり、検索にひっかかるのに十分な掲載情報量がなければ、戦えなくなってきました。

当社は、常時約500台の在庫を回転させながら複数媒体に掲載し、売っては削除し、また新たな車を仕入れては掲載しています。こうして月間300件の問い合わせが得られるようになりました。

問い合わせの増加と反比例するように、成約率が下がっています。かつて4割以上ありましたが、3割以下に落ちています。
人手が足りないのか、接客がぞんざいになっているのか。いずれにせよ、成約率を上げなければ、CPOは改善しません。

ところでSSの中古車販売というと、注文を受けてから車を探して落札する方式(オークションダイレクト)が主流で、当社も長く取り組んできました。
在庫リスクがない、広告宣伝費もかからないメリットがあります。しかし、やはり手元にない品を売るのは難しく、何より「車を探して欲しい」と言ってくれるお客様が見当たりません。
ほとんどのお客様は、「この車が欲しい」と決めて来店してくれます。

レンタカーの知見がコペルニクス的転回

5月のレンタカー売上は3,950万円(8店合計)でした。
5月としては過去最高で、前年比123%の伸び率です。

レンタカーの経費(ほとんど車両償却費)が2,250万円なので、レンタカー事業の営業利益は1,700万円、利益率は43%と上々です。
販売促進も営業活動もなく、1店当たり200万円以上の利益が楽々と上がっていますし、将来にわたり一点の陰りも見当たりません。

実は、ニコニコレンタカー全店の売上合計が、昨年9月以降、月間ギネスを更新し続けています。コロナ禍にあってなお、SSレンタカー市場そのものが拡大していると感じます。
当社のレンタカーにイノベーションが起きたのは2016年です。
それまでは、「調達費用が安い中古車だから低価格でレンタルできる」と頑なに信じてきました。しかし、当社「仲町台店」の実証実験により、考え方が180度変わりました。

新車はリセールバリュー(残価)が高いので、人気車種の実質償却費は中古車とほとんど変わらなかったのです。しかもリースで調達すれば、リスクも最小限に抑えられる。

これは、同時期に「新車リース」を商品開発したことが幸いしました。リースや新車の仕入れに精通したことで「目からウロコ」の発見ができました。

レンタカーを新車にすると、いいことづくめです。
まず、メンテナンス費用がかかりません。トラブルやクレームもなくなり、現場の面倒やストレスが消滅しました。人気の高い新車でラインナップすると、顧客満足度が高まります。利用頻度が増え、1台当たり売り上げが向上し、利益率が大きく改善しました。
この方法論を「Nメソッド」と名づけました。

翌2017年、当社の全SSに波及させました。約2年をかけて、ほぼ全車両が新車に置き換わった結果、レンタカー売り上げは3倍増となりました(グラフ1)

その後、コロナショックで瞬間的にダメージを受けましたが、3カ月ほどで復活します。

旅行やビジネス需要をメインターゲットとする大手レンタカーの惨状を尻目に、生活圏需要をメインターゲットとするSSレンタカーの本領が発揮されました。

コロナを契機に、新車の納車期間が伸びましたが、レンタカーは需要期である8月、3月に向けて計画的に増車しますので、発注時期を調整すれば、問題ありません。

2017年頃から、私は「Nメソッド」の有効性をニコニコレンタカー全店に説いてきました。そして、有志店舗に対しては、2019年よりNメソッドの導入プログラムを提供してきました。果たして、導入した店はすべて、目の覚めるような改善を示しています。

改善途中から経営者自ら陣頭指揮を執り始め、2店、3店と同時並行で改善を図るSS事業者も目立って増えてきました。

こうした経営者はおそらく、私と同じ思いを感じておられると推測します。「SSレンタカーは、脱炭素時代を乗り切る主要商材となり得る」と。

不幸の連鎖がSSレンタカーを縮小均衡させる

その一方で、Nメソッドを発表して5年経ち、当社のSSだけでなく50店以上のNメソッド導入店の改善経過を公表してきた今もなお、一向に変化のないSS事業者が大多数です。
おそらく経営者と現場責任者の意識のすれ違いが原因ではないでしょうか。
以下は私の想像です。

➊そもそも経営者が、SSレンタカービジネスの特徴をよく理解せず、意思決定してしまいました。

➋店長は経営者から「やれ」と言われて始めてみたものの、1年も経つとうんざりしてきます。なぜか?
たとえば、家族旅行など「ここ一番」のシーンで借りたレンタカーが故障したとします。
顧客の怒りは半端ではありません。大切な1日を潰してしまったという、解消不能なクレーム対応にやり場のないストレスが溜まります。

仮に、レンタカーが大繁盛したとして、それはお客様が勝手にネット予約してくれただけで、店長の努力ではありません。ですから、評価されません。しかし現場は忙しくなり、クレームも増えます。
お客様が帰ってくるのを夜中まで待つなど、無為なサービス残業も増えます。

➌車が事故ったり故障すると、店長はこれ幸いと予約を止めます。クレームの種が潜む車両を貸したくありませんから、修理もせずそのまま放置するようになります。会社からは「修理せよ、入れ替えよ、増車せよ」と言われますが、のらりくらりスルーします。

—実は、➊➋➌は、私自身が思い当たることなのです。
2015年、ある新店長を赴任させたところ、50台あったレンタカーを、いつの間にか10台に減らしていました。
問いただすと「いや社長、実はレンタカーをやめたいと思っているんです」。
びっくりして理由を聞くと、➋を吐露してくれました。

さらには「それに社長、増車せよと簡単に言いますが、中古車を調達してレンタカーにするのに、どれだけ手間がかかるかご存知ですか」と問われたのです(表3)。

現場の事情を知らない極楽トンボの私は当時、唖然とするしかありません。

仲町台店の店長が「レンタカーを全部新車にしたい」と提言したとき、「問題がすべて解決するかもしれない、やってみよ」と言わしめたのは、こうした痛切な経験があったからです。
さて、私の想像はさらに続きます。

➍ある日、ニコレンのフランチャイズ・チェーン(FC)本部から経営者に「Nメソッド」なる方法論の成功事例が伝わります。経営者は半信半疑ながら、興味を持ち、店長に確認します。
「店長、これ見て、すごいよ。レンタカーを新車にしたら50台で売り上げ500万円、営業利益250万円になったって。ウチもやってみようか」

➎店長は、底知れぬ恐怖を感じます。
-月間売り上げ50万円の現状でさえ手一杯なのに、10倍忙しくなるってこと?苦情も10倍増えるってこと?滅相もない!?
そして、ありったけのネガティブ情報を経営者に伝え、全力で反対します。

「社長、騙されちゃあ、いけません。新車を導入して、全損事故したら、ウチはマル損ですよ。乗り逃げされたらどうします?それに・・・それに…」「そ、そうだね。やっぱりうまい話はそうそう転がっていないよね。くわばら、くわばら」
概ね、このような経緯で、今も多くのSSレンタカー事業者は「中古車」の呪縛、負の連鎖から逃れられないでいるのではないかと想像します。新車にするだけで、すべての問題が良い方向に循環するのですが、経営者も店長も、判断の拠り所を過去の経験に求めてしまいがちです。

レンタカーだけで存続できる

店の周りに人が住んでいれば、「生活レンタカー」ビジネスは成立します。駅前や観光地が立地条件ではありません。

ニコニコレンタカーは約1,500店あります。このうち、例えば生活圏内のレンタカー需要が月間1,000万円以上ある店は、500店以上存在します。

もしも月間1,000万円のレンタカー売り上げを獲得できれば、1年間に獲得できる営業利益は5,000万円以上となります。

年間5,000万円あれば、将来、たとえガソリン需要が消失したとしても、店を維持することができるでしょう。新時代に適った新規投資も、人材採用も可能です。

どうすればいいか。
今後5年間くらいかけ、新車の人気車を100台用意するだけです。そして、世の中から内燃機関の自動車がなくなってきたら、どんどんBEV(バッテリー式電気自動車)などに置き換えればいいだけです。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。