SS全般

油外放浪記 第175回「油外絶好調の影に燃料油販売不振が気になる」

車検・車販・レンタカーの需要が重なる3月

当社SSの主力商品は、車検、車販、レンタカーですが、3月はその3品の需要期が集中します。毎年現場は忙しく熱い月となります。
8店の合計実績を(表1)に示します。

昨年同月と比べると、燃料油粗利は500万円減少し、経費が2,300万円増えました。しかし、油外が3,400万円伸びたおかげで、営業利益は600万円増の4,500万円となりました。

計画値は5,800万円でしたので、1,300万円足りません。
3月ということで期待が大きかっただけに、物足りません。

ガソリンはSSの基幹商材と再認識

燃料油販売量が減少していることに危機感を抱きます。
8SSで前年比200kl減少したということは、1店当たり25kl減販。前年比10%マイナスです。

燃料油減販の傾向は、「車離れ」と言われたり、低燃費車の普及、すなわち、社会の構造変化が要因だと思っていました。ところがこのほど、業界紙の見出しを見てびっくりしました。

2022年のガソリン販売量の伸びは、全国平均102.2%、神奈川県で100.2%だというのです。
つまり減販の原因は、ひとえに当社SSの問題だったのです。単に売り負けているだけにすぎない。

かつて当社は、ガソリン増販のコンサルティングで名を馳せた時代がありました。特石法が廃止(1996年)される前の時代です。

商圏や競合を調査し、SS本来の期待販売量を見定め、フリー客の来店促進、会員化、固定化を図ることによって、多くのSSを地域ナンバーワンへと育ててきました。
その過程で、ガソリン価格は販売量を左右する大きな要因であることを、論理的かつ実証的に経験してきました。

そして、1995年末、当社は第1号直営店(仲町台店)をつくります。
ガソリン価格の決定は、最重要課題ですから、アルバイトに周辺価格を調査させ、経営者自らが行うこととしました。その上で、これまで培ってきた販促策をふんだんに投入しました。

その結果、仲町台店は同時給油8台のフルサービス給油で、販売量800kl超。「行列の絶えない」量販SSとなりました。
以来、当社は、ガソリン価格は商圏内最安値店と同値に追従することを「金科玉条」とし、私は油外販売の方に注力するようになったわけです。

しかし、次第に「金科玉条」の威光が陰ってきたのでしょう。10年後の2006年の平均販売量は675kl、さらに10年後の2016年には396kl。減販の坂道を転がり続け、今や300klを割ろうとしています。
・・・にもかかわらず、私は、おめでたいことに「これも世の流れ」とあきらめ、あまり興味を示してきませんでした。

一方で、店長に対しては、営業利益至上を命じ、評価したものですから、SSとしてはガソリンマージンを確保したいと考えるのは当然の理(ことわり)。その結果、販売量がじわりじわりと減少し、利益を脅かすどころか、油外販売の対象客をも失ってしまいました。
ガソリン需要の減少がいったん止まっていると知った今、本気でテコ入れをしなければと考えています。

油外放浪20年 1店当たり2,700万円

とは言うものの、今のSS業界は、郊外型大規模セルフSSでない限り、ガソリン販売量で競争する時代ではなくなりました。
当社も油外販売に舵を切り、かれこれ20余年経ちました。3月実績を見ると、総粗利2.3億円に対し、油外粗利は2.2億円。油外が9割以上を占めます。

SS業を営む多くの読者の皆様には、もはや参考にしていただけにくい数字になったかもしれません。しかし、縮小均衡スパイラルを断ち切りさえすれば、必ず実現するSS事業のビジョンですので、お伝えする意味はあるかと思います。

当社のSSのここ数年の油外粗利の推移を(グラフ1)に示します。

2021年に2店増やしましたので、ここでは1店当たり平均実績を示します。
コロナショックの2020年にやや足踏みしましたが、この5年間で約1,000万円のびました。
油外1,000万円というと、SSを始めた頃、年末に洗車前売り券を乱売してやっと1,000万円に到達したことを思い出します。20年一昔。隔世の感があります。

Google評価4.0の壁

さて、3月の実績に戻りましょう(表1)。

車検が7,800万円と油外ナンバーワンの座を維持。前年より1,500万円伸びました。
当社は毎年1~3月に車検キャンペーンを実施します。キャンペーン目標に対し、昨年は7店未達、今年は7店達成しました(表2)。

その違いは、これまでも何度か述べてきました。昨年は販促活動を縮小し、今年はこれを復活・強化したことです。

そのうちの一つ、今回はGoogleビジネスプロフィール(GBP)についてお伝えします。
以前はGoogleマイビジネス(GMB)と呼ばれていた無料サービスです。お店が検索されやすくなり、お店の情報が表示されます。また、ユーザーが5点満点で評価し、口コミが掲載されます。

Googleによると、お店を探すとき、5人のうち4人がローカル検索を行うそうです。そのうち3割が1日以内に来店すると言うではありませんか。
それが事実なら大変、放置しておくわけにいきません。
昨年春の時点で、当店の評価は3.27点でした。よくありません。

これまでの悪い評価を消去することはできませんので、これからよい評価をたくさんもらって、過去の悪い評価を薄めていくしかありません。
これは時間がかかるぞと覚悟し、「今後2年間をかけて4.5点にする」と目標を定めました。

もちろん当店も、かねてから接客などを訓練し、車検完了後のお客様にサンキューコールを実施してきました。これに加え、「Googleでクチコミを書いてください」と一人ひとりにお願いするようにしました。

10カ月間やってきた結果は(グラフ2)のとおり。
「4.0点の壁」を感じます。引き続き、実施していこうと思います。

レンタカーは認知されてナンボ

レンタカーも絶好調です。
当社は8店で545台を運用していますが、3月は5,900万円を稼いでくれました。1台当たり109千円の稼ぎです。
昨年3月は491台で4,800万円、1台当たり98千円でしたので、利益率も大きく改善しました。

当社が主宰するニコニコレンタカーは、ブランド認知率が高いのが特徴です。この春、初めて50%を超えました。「タイムズカーレンタル」と同じです(表3)。

世の中にSSにレンタカービジネスが登場して15年経ちますが、ようやく既存レンタカーと肩を並べてもらえる存在になったと感じます。
レンタカーは、セールスして売るものではありません。お客様が自分で検索し、利用してくれます。ですから、検索したとき「知らない」レンタカーは選ばれません。お客様にとって、その店は「存在しない」に等しいわけです。

認知率50%ということはまた、まだ伸び代が半分あることを示します。現にこの3月も、ニコニコレンタカーは全店合計で126%成長しました(前年同月比)。
ニコニコレンタカーの年間売上は150億円を超えていますが、SSレンタカーの市場は、まだまだブルーオーシャンだと言えます。

レンタカー乗り逃げの損害リスクは0.5%

ところで、レンタカーに取り組んでみようかとお考えのSS事業者様から、よく尋ねられることの―つに「乗り逃げって、どれくらい発生しますか?」というのがあります。
気持ちは分かります。
車が盗まれたのも同然なのに、警察は「民事不介入」を理由に、なかなか事件化してくれず、泣き寝入りするしかないケースがあります。そこでニコニコレンタカーの「乗り逃げ」発生率を調べてみました(表4)。

0.0036%、すなわち2万7000回に1回の割合です。
・・・ということは、およそ2億円の売り上げに対し、車が1台盗まれ、平均残存価値100万円の損害(損害率0.5%)が発生すると考えていいでしょう。

このリスクを呑み込めない経営者は、どんな事業も向いていないと思います。

レンタカーの支払い方法をカード決済に限定してみた

とは言うものの、一度乗り逃げが発生すると、何度も電話したり、 自宅訪問をしたり、警察に届け出たりと、何かと手間がかかります。

先日早朝、私の自宅に警察から電話がありました。何事かと聞くと、1年前に当社の平塚店がレンタカーの盗難届を出していて、その犯人が別の事件で逮捕されたとのこと。「記者会見で、社長(私)の実名を発表していいですか」との確認でした。
事件性いかんでは、マスコミから取材され、何年間も煩わしいことが生じるかもしれません。そう考えると、できるだけ乗り逃げの発生は避けたいところです。

乗り逃げ事例を調べると、圧倒的に現金払いのお客様が多いことが判明しました(グラフ3)。

確かに現金決済は、お客様の信用を誰も担保してくれませんし、窓口の手間もかかります。ならば、現金決済をやめれば、乗り逃げが未然に防げるだけでなく、接客効率も上がるに違いありません。最近は現金を持たない人も多くなってきました。

当社で最もレンタカー利用の多い店は、新横浜駅店です。駅前の駐車場を借り、プレハブ小屋を建て、300台を運用するレンタカー専業店です。
試しに「支払い方法はクレジットカードのみ(事前決済含む)」としてみましたが、3月の売り上げを見る限り順調に伸びており、利用客が激減するといった影響はないようです(表5)。

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