SS全般

油外放浪記 第176回「車販は仕組みとスキル、だけでは足りなかった」

4月実績「サクラチル」

4月はもともと利益が上がりにくい月ではありますが、今年は散々な結果となりました(表1) 。

8店で約600万円の赤字を出しました。 前年同月と比較すると、油外粗利は1,260万円増えたものの、燃料油粗利が640万円減少、経費が2,000万円増加しました。
SS部門が赤字を喫したのは、自己投資で堀之内店を新設オープンして以来、実に51カ月ぶり。今この小さな穴を塞がなければ、やがて堤防が決壊するがごとく、SS事業全体の崩壊を招きかねません。

車販の伸びが止まった

昨年まで飛ぶ鳥を落とす勢いだった車販が、伸びなくなりました。
当社は1店当たり月間50台を目指しているのですが、30台に達する前に、下降に転じてしまっています(グラフ1)。

経緯を述べます。
2020年のコロナ禍で、九州や関東の空港前で実験展開していたレンタカー専業店が開店休業状態となりました。そこで、そのスタッフを横浜の本社に集めました。その名も「カメレオンチーム」。
レンタカーしか知らない素人集団ですが、状況に応じて何でもやるチームです。最初は余剰レンタカーをSS店頭に陳列ローテーションするという仕事から始めてもらいました。

次第に中古車検索サイトによる販売が主流となってきました。
レンタカー在庫を一掃した後は、中古車仕入れ(オークション落札)、架装作業(商品化)、Web掲載などを担当してもらうようになります。急遽、本社の駐車場を仮設写真スタジオに仕立てて、web掲載用の写真も丁寧に撮影するようにしました。
たちまち車販台数は、1店当たり20台を超えました。これまで中古車無在庫販売や新車リースなどを試してきて、どうしても超えられなかった壁です。毎日たくさんの問い合わせがあり、車が売れていく状況を目の当たりにし、私は小躍りしました。

中古車検索サイトには月間50万台が掲載されていると聞きます。仮に0.1%のシェアを奪ったとして、既存業者との間に波風は立たないだろう。ならば、もし当社で月間500台売れば、年間10億円以上の新たな収益が積み上がるではないか。
2030年以降、石油業界に「脱炭素」の荒波が押し寄せることは明らかです。脱炭素時代に適した未だ見ぬ新規事業開発の原資が、車販ビジネスで獲得できるではないか…。そう胸算用をしました。

思い切った設備投資と組織編成が必要です。
目をつけたのが、成田空港前のレンタカー専業店で借りている1,500坪の駐車場。5,000万円を投じて作業場や撮影スタジオを設置しました。

仕入れた車両はいったんここに集め、架装、Web掲載して各SSに搬送します。積載車や専任ドライバーも確保しました。
一方で、本社にはコントロール本部を設置しました。各SSの在庫を管理しながら、売れ筋かつ収益性の高い中古車を日々探し、毎月200台前後を落札し、値付けします。

もはや、素人雑用集団「カメレオンチーム」とは呼べません。プロフェッショナルな車両統括センターヘと変貌しました。
SSの経費負担がどんどん増えました。
2019年の経費は1店当たり月間1,500万円でしたが、今期は2,100万円にまで拡大しています(グラフ2) 。
ーーにもかかわらず、販売台数が横ばいに転じてしまった事態に、気が気ではありません。

車検とレンタカーは堅調

車販の凋落を尻目に、好調が続くのが車検とレンタカーです。
車検キャンペーンは3月で終了しましたが、4月も大きく伸ばしました(表1) 。

集客方法を一つひとつ強化してきたからですが、今回はミラーリング活動の効果を述べます。
ミラーリングとは、SSの商圏内にある車両の車検ステッカーを見て、ダイレクトに告知物を配布するという、エリアマーケティング活動です。外部委託スタッフの報酬や配布エリア、告知物などを見直してきましたが、このほどヒット率が初めて3%に達しました(グラフ3) 。

8店の商圏内車検対象車両約2万3000台に配布し、そこから691台が入庫したわけです。ヒット率の改善は、CPO(成約1件当たり販促費) の改善に直結します。

次にレンタカー。
4月は一般的にレンタカー需要が凹む時期ですが、当店はよく稼働しました。
生活圏需要を主ターゲットとするSSレンタカーは、リピーターがシーズン変動を緩和してくれるのが特徴です。つまり3月や8月といったレンタカー需要期に、満足度の高い車両を大量に供給するほど、リピーターが積み上がり、業績が安定します。
当社のSSも3月までに約50台増車しました。大量のリピーターが積み上がったと思われます。これを繰り返す限り、レンタカー収益が突然大きく落ち込むことはまずありません。

レンタカーは「ほっとけ油外」の筆頭

車検やレンタカーと、車販の根源的な違いに思い至ります。
自慢じゃありませんが、私は生来、根性論を避けて生きてきた「ヘタレ」です。
ですから、仕事に関してもスタッフに根性を求めません。売れない要因を探り、取り除き、自然体で売れる状態を作ることに腐心してきました。コンビニの商品のように、店に陳列するだけでお客様の方から求めてくれる商品が理想です。そういう概念を、私は「ほっとけ商品」と名付けました。

SS運営に携わって27年、私は「ほっとけ商品」の探索に終始してきたと言っていいでしょう。
まずガソリンが、「ほっとけ商品」です。セルフ給油になってから、ますます「ほっとけ化」しました。
油外商材はいろいろ試しました。しかし、恥ずかしいほど死屍累々の「アイデア倒れ」を築きました。2008年になって、ようやく待望の「ほっとけ油外」が見つかりました。レンタカーです。
SSとの兼業であることにより低価格が実現し、これが商品力を高めました。そして2018年頃からは、低価格かつ高品質にすることで、圧倒的な商品力を発揮し続けています。

車検も9割は仕組みで売れる

車検も、実は「ほっとけ商品」であることに気づきました。
すべてのSS利用客は、2年ごとに必ず車検をしなければなりません。およそ燃料油販売量(kl) ×0.5台の需要があります。
SSスタッフがこの車検見込み客を発見し、「声かけ」をすれば、4~5割がその場で注文してくれます。
したがって、その手順を教育し発揮させ続けるための訓練管理活動が肝要となります。そしてこれは、ともすれば、「根性論」に陥ります。

ところが、そうではありませんでした。多くのお客様は「ほっとけ」で買ってくれるのです。
SSの商圏内に存在する車両の約10分の1は、向こう3カ月以内に車検を実施しなければなりません。彼らに自店の車検の商品力を訴求することで、ミラーリングなら3%前後、ポスティングや折り込み広告なら0.02%程度の注文が入ります。 図1に、当社SSの車検販売の構成比を示します。

当社のSSは、車番認識システムを活用したり、「車検名人」など独自の育成評価制度を運用しており、人的販売にも多くの労力を注いでいると思います。
しかし現実は、9割以上のお客様が「ほっとけ販売」なのです。

ただし、車検の「ほっとけ販売」が成立するには、前提条件があります。
➊商圏内で最強の商品力であること➋人が説明しなくても、ホームページによる補完情報が充実していること➌コールセンターなど専任組織(外注可)が電話やメールに対応することです。

車販投資をするも実績がついてこない

さて、今度は車販です。
集客は中古車検索サイトによる「ほっとけ」です。
在庫車を指定してお問い合わせをしてくれますので、アポイントをとってご来店いただきます。現車を見てもらえると、ほぼ「買う」「買わない」を即決していただけます。したがって、クロージングだけは、必要十分な車販担当者を育成し、SSに配備すればよいでしょう。さながら、車検の拡販に応じてリフト設備や整備士を増強するのと同じです。
50台程度だった月間車販台数(8店合計)が、2020年にいきなり100台となり、翌21年には150台、22年には200台を超えるようになりました。

この延長線上で事業規模を拡大すれば、月間500台売れるに違いない。そう考え、「ほっとけ販売」の仕組みづくりに勤しみました。 シンジケートローンで10億円の融資を受け、在庫台数を700台に倍増。品揃え、価格、アフターサービス、特典など商品力を重装備。架装スタッフや積載車も増強し、各SSにも在庫保管用の駐車場を約300台分借り増ししました。 車販担当者を20名以上増員するため、人材募集の専門コンサルタントとも契約しました。

ところがです。
月間200台を超えたところで、伸びがストップ。計画どおりに増やしてきた投資が、SSの足を引っ張る形となってしまいました。

「人」を軽視し「人」にやられる

問題の一つは、車販担当者が育たないことです。
適性のある人が、なかなか見当たりません。適性があっても、毎月10台以上を販売するレベルになるには、1~3年かかります。しかし育った矢先から次々と辞めてしまうのです。
途方に暮れていたところ、先頃とてもショッキングな出来事に遭遇しました。あるお客様から、本社にクレームの電話が寄せられたのです。

ーー中古車検索サイトを見て、当店の在庫車両に興味を持ち、現車を見たいと店に行ったところ、「事前にアポイントをいただいてないので、お話しできません」と言われたとのこと。

つまり「門前払い」されたというのです。
強い衝撃を受けました。と同時に、なぜ車販台数が伸びないのか、そのヒントが見つかった思いがします。
車販は当社にとって基幹商品です。私も、部長も、店長も、車販担当者も、日々の実績に一喜一憂しています。当然すべてのスタッフが同じ気持ちだと思いきや、「アポイントのあるお客様を車販担当者につなぐのが私の仕事」と思っているスタッフがいた事実に直面したのです。

見込み客がわざわざ来店してくださったことを嬉しいとも思わない、車販台数の伸びがストップしていることも知らないし、問題意識もモチベーションもない。そんなスタッフが1人いたということは、大同小異、何人もいるに違いありません。
こんなお店が、自動車販売店として信頼されるはずがありません。どれだけお金をかけて仕組みを作っても、どれだけ車販担当者が頑張っても、限界があります。

ここに来て、SS全体の「人づくり」の視点が欠けていたことを、深く反省しています。
私の苦手分野、賽の河原の石積みのごとき苦行となりますが、背に腹は代えられません。全スタッフ一丸態勢の意識改革に取り組みます。

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