SS全般

油外放浪記第139回 自粛ムードにあってSSビジネスは堅調

まさかのガソリンバブル

新型コロナ禍が日に日に悪化しています。
3月中旬にWHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言。国内でも感染者、死亡者数が急増し始めました。人々の行動は制限され、コロナ倒産やコロナ解雇といったニュースも目にします。

感染した方には1日も早い回復をお祈りするとともに、もし読者の身近な方が亡くなられたとすれば、心からお悔やみ申し上げます。

さる4月7日、7都府県に緊急事態宣言が発令されました。今号が発行された頃、世の中がどうなっているのか、まったく予想がつきません。
—そんな状況ですが、当社SSはこの3月、過去最高益を記録しました。
なんとなく、うしろめたさを感じてしまいます。

油外は堅調

当社SSの3月の営業利益は6店で3,990万円。
粗利は燃料油だけで2,260万円を得ました(表1)。

油外粗利は、前年同月比マイナス500万円です。
車検が1,000万円以上減収しました。理由は2つ。
当社の車検キャンペーン期間は例年1~3月としていましたが、今年は4月まで延長しました。入庫キャパの限界を緩和するため、4月に満了する車検を無理に3月に入庫させないようにしたためです。

そして、国が3月車検の有効期限を延長するとの特例措置を講じました。したがって3月満了車検も一部「おあずけ」となってしまいました。
果たして、4月以降、その分が他店に流出しなければいいのですが・・・。

次に、レンタカーの伸びがストップしました。
ここ2、3年大きく伸び続けていたのですが、突然、前年並みの実績まで急減速。「不要不急の外出自粛」の影響です。

特に、家族や仲間同士でワイワイしながら遠出するような、ワンボックスカーのキャンセルが相次ぎました。軽自動車やコンパクトカーは、地元近郊の移動に使われますので、打撃はそれほどでもありません。

もっとも、当社SSは足元商圏規模から推計されるレンタカー需要(標準売り上げ)を遥かに超える実績を作ってきただけに、コロナの影響を受けやすいのだと思います。

たとえば、仲町台店は標準売り上げが300万円/月の店ですが、車両を90台保有し、月間平均800万円を売り上げていました(直近1年間の平均実績)。
しかし、この3月は前年同月比で約180万円減少しました。

ところが、たとえば標準売り上げが1,500万円/月の店で、車両台数がまだ70台くらいの都内のお店に尋ねてみると、「確かにキャンセルは増えていますが、結局は予約が埋まり、ほぼフル稼働しています」とおっしゃいます。

そういうわけで、当社SSも、今は背伸びをせず、適正台数に近づけるべく、一部の車両を処分し始めています。
とは言え、今はオークション相場も振るわず、泣き面にハチです。

緊急事態宣言下ですが、幸いガソリンもレンタカーも生活インフラとして営業を認められています。
車検は法定需要なので、今後も有効期限の延長はあるかもしれませんが、需要そのものに大きな変化は見られません。

一般整備や洗車、鈑金については、当社SSは今のところ激減しているわけでもありません。
こうしてみると、SSの取扱商品は、緊急事態とか流行などに左右されない底堅い需要に支えられており、ありがたい限りです。

新設店は2年目以降、連続黒字

年間営業利益1億円を目指して2018年11月に新設した堀之内店ですが、1年経った昨年11月から、ようやく黒字に転換できました。

オープン後の粗利と営業利益の推移を「グラフ1」に示します。

1年目は累積4,700万円の赤字でしたが、新規客に対するリスト取り・会員化を徹底しさらにLINEで販売促進したので、ガソリン販売量は550klに成長しました。

グラフ1が示すように、まずレンタカーが収益の柱となってくれました。スタッフが売り込まなくとも、お客様の方から求めてくれるので、非常に助かりました。保有台数100台の規模で1年もやると、リピーターが累積します。そして、安定的に1,000万円レベルの月間売り上げが上がるようになりました。

そうこうしているうちに、ガソリン販売量も増加し、客数が増え、他の油外も伸び始めたという図式です。
車検は2年経過しなければ、リピーターの恩恵に与れません。まだしばらくの辛抱です。

ガソリンマージンのインパクト

それにしても当社SSとしては、破格の11.7円/Lという口銭が得られたガソリンのおかげで、営業利益のギネス記録があっさりと塗り替えられたことに驚きです。
お店の努力と関係なく、突然天から札束が降ってきたような感覚です。
でも、聞くところによると20~30円の口銭を得ているSSがたくさんあるそうで、喜ばしい限りです。

販売量そのものは、外出自粛要請の影響が顕著です。国内需要が縮小しているので、多くのSSは減販傾向にあったと思いますが、これに拍車がかかったのではないでしょうか。

当社は昨年実施した「LINE友達獲得作戦」もそれなりに効果が上がり、今年は前年比130%くらい増販していたのですが、3月は110%と伸びが鈍化しました(表2)。
つまり、コロナウイルスがガソリン需要の20%を奪ったと考えていいでしょう。

販売量が20%減少しても、マージンが20%増加すれば、収益は変わりません。まして、今回はマージンが300%以上も伸びたのですから、もしも販売量が50%に激減したとしても増収するのだなぁ、と「マージンのインパクト」を改めて思い知らされます。
そして今回は、業界全体がこのマージンを仲良く固守しました。たったそれだけで、神様が恵みの雨を降らせてくださいました。

1年半前に堀之内店をオープンした時、周辺価格に対応しました。その結果、ガソリンマージンは、ほとんど得ることができませんでした。
しかし今は、価格競争が落ち着き、堀之内店は11.4円のマージンを確保できています。
価格競争によって得るものは何もありません。
つくづく平和が一番です。

給油ストレスの高い店は販促効果が低い

さて、ガソリン販売量についてちょっと気づいたことがあります。
昨年、全店ともkl当たり20件以上のLINE友達を獲得し、所期の目標を達成しましたが、「表2」を見ると、SSによって効果(伸び率)に大きく差があります。この差は一体何かと疑問に思いました。

一般にSSのガソリン販売量は、「立地条件」「設備力」「運営力」「販売促進」の4つの要因が競合店に対して、どの程度優位性があるかで決まるとされています。

LINEは、販売促進の強化に当たります。友達登録をしていただいたお客様にメッセージやクーポン券を発信しています。これによって、各店ともに販売促進面での優位性が高まったわけです。他の条件は変わっていません。

しかるに、伸び率の低い店(仲町台店、センター南店)の特徴を考えてみました。両店とも、よく給油待ち行列ができるSSです。また、レンタカーの貸出件数が多く、その洗車や待機車両で、店内がいつもごちゃごちゃしているイメージです。
きっと来店客に少なからずストレスを与えているに違いありません。
…というわけで、給油ストレス度を数値化してみました(表3&グラフ2) 。

まずは、ガソリン販売量の伸び率は、敷地面積当たり販売量と相関関係が高いことが分かります。坪当たり0.8kl以上を販売する店は、販促を強化してもあまり伸びません。
逆に、坪当たり0.5kl未満の販売量だと、ガソリン販促は有効に働きます。

また、ガソリン販売量の伸び率は、敷地面積当たりレンタカー保有台数とも相関関係があるようです。坪当たり0.2台以上のレンタカーを保有するSSは、ガソリンのお客様からは敬遠されるようです。

所詮、ドラム缶一杯の水をバケツに移そうとしても、バケツにはバケツの容量までしか入らないということでしょう。

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